NASAのパーカー・ソーラー・プローブが29回目の太陽接近を完了

NASAは2026年9月10日付で、太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブが9月4日に29回目の太陽最接近を終え、機体が正常に動いていることを確認したと発表しました。
太陽表面から約610万kmまで近づき、最高速度は時速約69万2000kmで、いずれも自身が持つ記録と同じ値です。
あわせて、このミッションの運用が2029年まで延長されたことも示されました。

3行で分かるポイント

  • 9月4日の29回目の接近で、太陽表面から約610万km、時速約69万2000kmという自身の記録に並びました。
  • 接近前後の9日間は地上と交信せず自律で動き、9月7日に正常を知らせる信号が届きました。
  • 2026年のシニアレビュー(NASAが2年ごとに行う運用継続の審査)の結果、運用は2029年まで延長されました。
目次

まず押さえたい背景

パーカー・ソーラー・プローブは、太陽のすぐ近くまで入り込んで観測するNASAの探査機です。
2018年8月12日にデルタIVヘビーロケットで打ち上げられ、打ち上げ時の質量は685kgでした(出典: NASA「Parker Solar Probe」)。

機体を設計・製造し、現在も運用しているのはジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(Johns Hopkins Applied Physics Laboratory、APL)です。
アメリカ・メリーランド州ローレルにある非営利の研究機関で、国の課題に取り組む大学附置の研究センター(UARC)として、宇宙科学ミッションから国防・サイバーまで13の領域を手がけ、8,800人以上の職員を抱えています(出典: APL「About」)。
NASAはゴダード宇宙飛行センターとともに、このミッションを管理しています。

この探査機の目的は、太陽の表面(光球)より外側に広がる大気「コロナ」の中に実際に入り、そこで何が起きているかを直接測ることです。
NASAは、コロナが光球よりはるかに高温である理由、太陽から吹き出すガスの流れ(太陽風)が加速する仕組み、高エネルギー粒子の発生源という3つの問いを掲げています。
コロナの中を通るために、機体はカーボン複合材の遮熱板で守られ、約1,377℃の高温に耐える設計です。
探査機は細長い楕円軌道を回っていて、太陽にいちばん近づく点を通ることを近日点通過と呼びます。

何が発表されたか

NASAは、9月4日の29回目の近日点通過が計画どおり終わったことを明らかにしました(出典: NASA「After Latest Swing Past Sun, NASA’s Parker Solar Probe Checks in」)。
太陽表面から約610万kmまで近づき、最高速度は時速約69万2000kmでした。
この距離と速度は2024年12月24日の通過で記録した値で、それ以降の7回の通過でも同じ値になっており、9月4日がその最新の1回です。

接近の前後9日間、探査機は計画どおり地上と交信せず、自律で動き続けました。
9月7日には機体の状態を知らせるビーコン信号(短い合図の電波)が届き、システムが正常に動いていることが確認されました。

今回の接近では4つの観測装置がコロナの内部でデータを取得し、カメラは太陽の北極付近の構造と活動をとらえています。
探査機は1日のあいだに、太陽の全周の約40%にあたる範囲を駆け抜けながら観測しました。

機体の状態を示す詳しいデータ(テレメトリ)の送信は9月11日から、観測データの送信は9月13日から27日までの予定です。
運用の延長は、2026年のシニアレビューの結果として示されました。

宇宙業界にとっての意味

シニアレビューは、NASAが運用中の探査機を対象に2年ごとに行う審査です。
2005年のNASA授権法で定められた仕組みで、当初の設計寿命を超えた探査機について、観測を続ける費用と得られる成果を比べ、限られた予算の中でどれを続けるかを判断します(出典: NASA「Senior Review」)。
今回の延長により、太陽の最も近くから測る観測が2029年まで続く見通しになりました。

このデータは太陽の研究だけに閉じた話ではありません。
NASAは、パーカー・ソーラー・プローブのデータが宇宙天気を理解し、予報につなげるための鍵になるとしています。
宇宙天気は、衛星の軌道を変えたり、衛星の寿命を縮めたり、搭載された電子機器に干渉したりすることがあります。

太陽の活動には約11年の周期があります。
パーカー・ソーラー・プローブが打ち上げられた時期は活動が低い極小期に近く、2024年にはNASAと関係機関が極大期に入ったと発表しています。
2029年までの運用が決まったことで、周期の異なる時期の太陽を、ひとつの探査機で測り続けることになります。

今後の注目点

直近では、9月13日から27日にかけて地球に届く観測データが焦点です。
今回カメラが向けられた太陽の北極付近から、どのような構造や活動が見えてくるかが注目点になります。

運用面では、今回示された延長の対象が2029年までである点が基準になります。
シニアレビューは2年ごとの審査なので、そこから先の運用は今後の審査の結果に左右されます。

ほしまる

9月7日に届いたのは「無事だよ」という短い合図だけなんだ。太陽のそばで撮ったデータが地球に届くのは、そのあとなんだよ。

出典

ほしまる
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