株式会社QPS研究所は2026年9月14日、三菱重工業と、小型SAR衛星「QPS-SAR」3機分の打上げについて、H3ロケットによるライドシェア打上げ輸送サービス契約を締結したと発表しました。
ライドシェアは、1機のロケットに複数の会社の衛星をまとめて載せる打上げ方法です。
打上げ時期などの詳細は、決まり次第公表される段階です。
3行で分かるポイント
- QPS研究所が、電波で地表を撮影する小型衛星3機を、日本の主力ロケットH3の相乗り便で打ち上げる契約を三菱重工業と結びました
- 相乗りは1機のロケットに複数社の衛星を載せる方式で、打上げ時期は今後決まります
- この契約は、JAXAが運営する宇宙戦略基金の補助を受けています
まず押さえたい背景
QPS研究所は、福岡市中央区に本社を置く衛星メーカーです。
人工衛星や搭載機器、地上設備、ソフトウェアの研究開発から設計・製造・販売・運用までを手がけています(出典: QPS研究所「会社概要」)。
主力製品のQPS-SARは、SAR(合成開口レーダー)を積んだ小型衛星です。
SARは、衛星から地表へ電波を当て、跳ね返ってきた電波を画像に組み立てる装置です。カメラのように太陽の光に頼らないため、夜でも雲の下でも地表を撮影できます。
QPS研究所は、QPS-SARが民間のSAR衛星で世界トップレベルとなる46cm分解能(見分けられる最小の大きさ)を持ち、従来のSAR衛星の20分の1の質量、100分の1のコストで実現したとしています(出典: QPS研究所「小型SAR衛星3機分の打上げに関して三菱重工とH3ロケットによるライドシェア打上げ契約を締結」。以下、QPS-SARと契約に関する数値は同発表によります)。
三菱重工業は、東京都千代田区丸の内に本社を置く重工業メーカーで、エナジー、プラント・インフラ、インダストリアル・ソリューション、航空・防衛・宇宙の4分野で事業を展開しています(出典: 三菱重工業「会社概要」)。
宇宙分野では、H3ロケットとH-IIAロケットによる打上げ輸送サービスを提供しています。
H3はJAXAと三菱重工業が共同開発した日本の主力ロケットで、柔軟性・高信頼性・低価格をコンセプトに掲げ、高度500kmの太陽同期軌道へ4トンを打ち上げる能力があります(出典: 三菱重工業「打上げ製品ラインアップ」)。
太陽同期軌道は、いつも同じ地方時刻に同じ場所の上空を通る軌道で、地球観測衛星がよく使います。
何が発表されたか
契約の対象はQPS-SAR 3機分の打上げで、形態はH3ロケットのライドシェアです。QPS研究所はライドシェアを「1機のロケットで複数社の衛星を打上げる形態」と説明しています。
ロケット1機を借り切る専用打上げとは異なり、他社の衛星と同じ便に相乗りする形になります。打上げ時期などの詳細は、決定しだい順次公表される段階です。
あわせて、この契約が宇宙戦略基金の補助を受けて締結されたことも示されています。
宇宙戦略基金は、JAXAが資金配分機関となって設置した総額約1兆円規模の基金で、輸送、衛星等、探査等の3分野の技術開発を、民間企業や大学に対して最大10年にわたって支援する制度です(出典: JAXA宇宙戦略基金「宇宙戦略基金について」)。
宇宙業界にとっての意味
QPS研究所は、2028年5月末までに24機、2030年には大規模な衛星コンステレーションを構築する計画を示しています。
コンステレーションは、多数の衛星を連携させて同じ場所を短い間隔で撮影できるようにする仕組みで、同社は平均10分間隔という準リアルタイムの観測データ提供を目標に掲げています。
この計画の進み方は、衛星を作るペースだけでなく、それを軌道まで運ぶ手段をどれだけ確保できるかに左右されます。
今回の契約は、運ぶ側の枠を国内のH3ロケットで3機分押さえたものです。
三菱重工業の側から見ると、H3のライドシェアが国内の衛星企業向けの商業サービスとして使われる案件がひとつ加わったことになります。
相乗りでは、同じ便に載る衛星どうしで目的の軌道や打上げ時期をそろえる必要があるため、こうした契約が成立するには、複数の顧客の予定を組み合わせる調整が伴います。
今後の注目点
まず、打上げ時期と、同じ便に載るほかの衛星の構成が公表されるかどうかが次の節目です。
また、2028年5月末までの24機という目標に対して、今回の3機がいつごろ加わるのかは、今後の打上げ計画の公表で分かってきます。
QPS-SARの投入先となる軌道や、1便あたりに何機を載せる構成になるのかも、コンステレーションの完成時期を見るうえでの手がかりになります。
ほしまる衛星を組み立てる話だけじゃなくて、どのロケットのどの便に乗せてもらうかを決めるのも、衛星をつくる会社の仕事なんだね。