スペースXがSESの通信衛星3機を運び全13機の打ち上げ完了

SpaceX(スペースX)は日本時間2026年9月14日、アメリカのケープカナベラル宇宙軍基地から「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットを打ち上げ、ルクセンブルクに本社を置く衛星通信会社SESの通信衛星「O3b mPOWER(オースリービー・エムパワー)」3機を中軌道へ送り込みました。
これで、SESが最初に構築すると決めていた13機分の打ち上げがすべて終わりました。
今回の3機は軌道を上げて機器の確認を済ませたあと、2027年半ばに運用へ入る予定です。

3行で分かるポイント

  • SpaceXがFalcon 9ロケットで、SESの通信衛星3機を一度に打ち上げた(日本時間9月14日)
  • これで13機すべての打ち上げが完了した。うち10機はすでに運用中で、今回の3機は2027年半ばに加わる
  • 船舶・航空機・企業・政府機関に向けた、通信の待ち時間が短いサービスが売りの衛星群
目次

まず押さえたい背景

SESは、人工衛星を使った通信サービスと映像の配信を手がける会社です。
静止軌道と中軌道の衛星を組み合わせて回線を提供しており、パリとルクセンブルクの証券取引所に上場しています(出典: SES「SES’s Final Three O3b mPOWER Satellites Successfully Launched」)。

衛星を製造したのはボーイングです。
ワシントンD.C.近郊に本社を置き、737 MAXや787といった旅客機のほか、防衛装備品と宇宙機を150か国以上の顧客向けに開発・製造しています(出典: Boeing「Company」)。

O3b mPOWERのような、複数の衛星を連携させてひとつのサービスを成り立たせる仕組みをコンステレーションと呼びます。
1機では地球のごく一部しかカバーできないため、機数をそろえて広い範囲を途切れずにつなぎます。

この衛星群が使う中軌道は、静止軌道より地球に近い高さの軌道です。
静止軌道は赤道上空の高度約36,000kmにある円軌道で、地上から見て衛星が止まって見えるという利点があります(出典: 天文学辞典「静止軌道」)。

ただし距離が遠いぶん、電波が往復するのに時間がかかります。
この往復にかかる待ち時間は遅延と呼ばれ、テレビ会議やオンラインゲームのように反応の速さが要る用途では使い勝手を左右します。
SESは、O3b mPOWERが広い地域にわたって150ミリ秒という予測しやすい遅延を実現すると説明しています(出典: SES「O3b mPOWER」)。

何が発表されたか

打ち上げは現地時間9月13日午後2時49分(日本時間9月14日午前3時49分)、ケープカナベラル宇宙軍基地の第40発射施設から行われました。
今回運ばれたのはO3b mPOWERの11号機から13号機にあたる3機で、3機を1本のFalcon 9にまとめて搭載する形が採られました。
SESによれば、すでに10機が軌道上で運用されており、今回の3機が加わることで13機がそろいます。
アデル・アルサレ最高経営責任者は、この打ち上げがSESにとって節目になると述べています。

衛星はボーイングの「702X」という機体を基にしています。
ボーイングによると、この衛星の通信機能はソフトウェアで制御でき、どの地域にどれだけの帯域を割り当てるか、電波のビームをどこに集中させるかを、運用しながら変更できます。
需要が急に増えた海域や空域へ、後から通信容量を回せるという考え方です。
提供できる通信容量は、用途に応じて毎秒数十メガビットから毎秒数ギガビットまでの幅があるとSESは説明しています。

打ち上げに使われた第1段機体「B1080」は今回が29回目の飛行で、大西洋上のドローン船「A Shortfall of Gravitas」への着陸に成功しました。
Spaceflight Nowの報道では、この打ち上げはSpaceXのFalconロケットとして通算700回目にあたります。

宇宙業界にとっての意味

衛星通信の使われ方は、テレビ放送の中継から、船や航空機、離れた場所にある事業所をインターネットにつなぐ用途へと広がってきました。
ボーイングは、O3b mPOWERの顧客としてクルーズ船会社、政府機関、航空会社、携帯通信事業者を挙げています。
こうした利用者にとっては、回線の速さだけでなく、遅延が小さく安定していることが使い勝手に直結します。

SESは自社の説明で、低軌道の衛星網が中継を重ねる方式と比べ、中軌道では1回の中継で地上へ戻せる点を利点として挙げています。
これは事業者自身による自社サービスの位置づけであり、実際の性能は利用する地域や機器によって変わります。

ボーイングは、O3b mPOWERで使ったソフトウェア制御の通信機器の技術を、アメリカ軍向けの通信衛星にも応用すると説明しています。
商用衛星で実績を積んだ設計を政府・軍の調達へ持ち込む流れが、この案件でも示された形です。

今後の注目点

当面の焦点は、今回の3機が予定どおり2027年半ばに運用へ入るかどうかです。
中軌道へ投入された衛星は、そこからさらに軌道を上げ、通信機器や姿勢制御の動作確認を経て初めてサービスに使われます。

13機体制でどれだけの地域を、どの程度の容量でカバーできるようになるのかは、運用開始後に実際のサービス提供状況として見えてきます。
ボーイングが進める軍向けへの応用がどのような形になるかも、あわせて確認したい点です。

ほしまる

ぼくが太陽系の外側にいたころ、地球へ送った電波の返事は、ずいぶん経ってから届いたんだ。遠くの軌道を使うほど、通信にも待ち時間が生まれるんだよ。

出典

ほしまる
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