地球観測衛星を手がけるSatellogicは2026年9月14日、アメリカ海軍の研究機関である海軍研究局(ONR)が進める「Slingshot III」計画について、Innovative Defense Technologies(IDT)との協力を拡大すると発表しました。
同社の地球観測衛星「NewSat Mark VI」6機を、今後18か月かけて計画の構成に組み込みます。
軌道上での試験は2027年と2028年に予定されています。
3行で分かるポイント
- Satellogicが、アメリカ海軍の研究機関が進める実証計画に、自社の地球観測衛星6機を追加します。
- 追加する衛星は、衛星同士を直接つなぐ通信装置と、撮影した画像を宇宙にいるうちに解析する計算機を積みます。
- 軌道上の試験は2027年から2028年にかけて行われ、同社は10月にも次の打ち上げを控えています。
まず押さえたい背景
Satellogicは2010年にEmiliano Kargieman氏とGerardo Richarte氏が設立した企業で、本社はニューヨークにあり、NASDAQに上場しています(銘柄コードSATL)。
衛星の設計・製造から打ち上げ後の運用、画像の販売までを自社で手がける垂直統合型の地球観測企業です。
地球観測(EO)とは、宇宙から地上を撮影して、船の動きや工場の稼働、農地の状態などを読み取る事業を指します。
ONRは1946年に設立された海軍省の組織で、産業界・大学・政府機関と組んで、海軍と海兵隊が使う技術の研究開発を進める役割を担っています。
IDTは2006年設立、本社はバージニア州アーリントンにあり、国防総省向けにソフトウェアの試験を自動化する「ATRT」などを提供している企業です。
Slingshotは、海の上で何が起きているかを素早く把握するための研究計画です。
ここで課題になるのが遅延です。
従来の観測衛星は撮影した画像を地上局へ送り、地上の計算機で解析してから利用者に届けるため、撮影から判断までに時間がかかります。
この時間を縮めるための手段が2つ組み合わされています。
- ひとつは衛星間通信リンク(ISL)で、衛星同士が地上を経由せずに直接データをやりとりする仕組みです。
- もうひとつは搭載処理で、画像の解析を地上ではなく衛星の上で行い、必要な部分だけを送る考え方です。
何が発表されたか
今回の合意で、SatellogicはNewSat Mark VI衛星6機をSlingshot IIIの構成に加えます。
組み込みは今後18か月かけて進められます。
Slingshot IIの段階では、ISLを搭載したNewSat Mark V衛星2機の運用が延長されており、今回の6機を合わせると、この計画に充てられるISL対応の機体は8機になります。
2027年と2028年には、この機体を使った軌道上での活動と試験が行われます。
試験の対象は、衛星上でのデータ処理、システムとして成立するかどうかの確認、そしてデータの自動選別です。
自動選別とは、撮影した画像のうち関心のある対象が写っている部分を衛星自身が見分け、送るデータを絞り込む処理を指します。
SatellogicのKargieman最高経営責任者は、高分解能の地球観測と搭載処理、衛星間通信を組み合わせることで、同社が掲げる「Persistent Global Intelligence(継続的な地球規模の情報把握)」の基盤となる要素を築くと述べています。
IDTのBernie Gauf会長兼最高経営責任者は、この取り組みを安全保障の速度を定義し直すものだと表現しています。
宇宙業界にとっての意味
地球観測の分野では長く、分解能と頻度のどちらを取るかという制約がありました。
広い範囲を毎日見ようとすれば解像度が落ち、細かく見ようとすれば撮影できる場所が限られます。
軌道上での処理と衛星間通信は、この制約そのものを解くわけではありませんが、撮影してから利用者が判断するまでの時間を短くする方向の技術です。
今回の合意は、その技術を実験室ではなく実際の軌道上で、2年間にわたって防衛用途の条件下で確かめる段階に進むことを意味します。
事業面では、Satellogicが防衛・安全保障分野の顧客との取引を積み重ねている点が読み取れます。
同社の2026年第1四半期の売上高は前年同期比80%増の610万ドルで、四半期として初めて営業キャッシュフローが20万ドルの黒字になりました。
2026年4月には、軌道上で運用中のNewSat衛星をある国の防衛機関に引き渡す1,200万ドルの契約を結んでおり、これは2四半期で2件目の同種の取引にあたります。
ポルトガルのCEiiA向けにNewSat Mark V衛星2機を供給する1,800万ドルの契約も進行中です。
今後の注目点
Satellogicは10月に次の衛星打ち上げを予定しており、ISLを備えたNewSat Mark VI衛星2機とNewSat Mark V衛星1機が含まれます。
同社が2026年3月に公表した新型衛星「Merlin」の初号機も、10月の打ち上げが予定されています。
Merlinは分解能1m、10の観測波長帯を備え、地球全体を毎日撮り直すことを狙った衛星で、フル運用の開始時期は2027年前半とされています。
開発費は顧客との契約でまかなわれており、追加の資金調達を必要としないと同社は説明しています。
確認したいのは、10月の打ち上げが予定どおり行われるか、そして2027年から始まる軌道上試験で、搭載処理と自動選別が実際にどこまで機能するかです。
ほしまるぼくが旅していたころは、撮ったものを全部地球へ送って、返事が届くのをただ待つしかなかったんだ。宇宙にいるうちに選り分けてから送れるなら、待つ時間の意味が変わってくるね。
出典
- Payload「Satellogic Expands DoD Work As it Preps for Next Launch」
- GlobeNewswire / Satellogic「Satellogic Expands Slingshot III Work with IDT and U.S. Office of Naval Research」
- Satellogic「Satellogic Expands Partnership with IDT and U.S. Office of Naval Research for “Slingshot” Program Phases II and III」
- Satellogic「Satellogic Introduces Merlin Constellation for Daily Global Monitoring at One-Meter Resolution」
- U.S. Securities and Exchange Commission「Satellogic Reports First Quarter 2026 Financial Results」
- Satellogic「Company」
- Innovative Defense Technologies「Home」
- Office of Naval Research「Office of Naval Research」