2026年9月14日、欧州の衛星メーカーであるタレス・アレニア・スペースは、ナイジェリアの政府所有企業NIGCOMSATから、通信衛星「NigComSat-2A」の製造を受注したと発表しました。
この衛星は打ち上げ時の質量が約4トンで、西アフリカ・中部アフリカ・南部アフリカをカバーします。
テレビ放送や、通信網が行き届いていない地域へのブロードバンド接続を担う計画で、軌道上での運用寿命は15年を超える見込みです。
3行で分かるポイント
- ナイジェリアの政府所有の衛星通信会社NIGCOMSATが、新しい通信衛星の製造先に欧州のタレス・アレニア・スペースを選んだ
- 衛星は赤道上空の「静止軌道」に入り、アフリカの広い範囲へテレビ放送とインターネット接続を届ける
- 機体には同社の既存製品「Spacebus B2」を使い、打ち上げ時の質量は約4トン、運用寿命は15年超を見込む
まず押さえたい背景
NIGCOMSATは、ナイジェリア連邦政府が所有する有限責任会社です。
2006年4月4日に設立され、連邦通信・デジタル経済省の下に置かれています。
本社は首都アブジャにあり、ラゴス、カドゥナ、ゴンベにも拠点を持ちます。
現在は2011年12月に打ち上げた通信衛星「NigComSat-1R」を運用し、放送事業者やインターネット接続業者、政府機関に向けて、放送・ブロードバンド接続・中継器の貸し出しといったサービスを提供しています。
今回の衛星が入る静止軌道は、赤道の上空を地球の自転と同じ周期で回る軌道です。
地上から見ると衛星が空の一点に止まって見えるため、受信アンテナを一方向に向けたままにでき、1機で大陸規模の広い範囲へ同時に電波を届けられます。
地上の光ファイバーや携帯電話の基地局を引きにくい地域をまとめてカバーできる点が、この軌道の利点です。
衛星を作る側のタレス・アレニア・スペースは、通信・測位・地球観測・宇宙探査などの衛星を手がけるメーカーで、7か国の14拠点に8,000人を超える従業員を抱えます。
フランスを主要な拠点とする防衛・航空宇宙・デジタル分野の企業グループであるタレスが67%、イタリアのローマに本社を置く航空宇宙・防衛・セキュリティの産業グループであるレオナルドが33%を出資する合弁会社です。
何が発表されたか
発表はフランスのカンヌから、2026年9月14日に出されました。
NIGCOMSATが新しい静止通信衛星NigComSat-2Aの製造先としてタレス・アレニア・スペースを選定した、という内容です。
機体には同社の「Spacebus B2」を使います。
これは衛星の土台となる共通の機体(プラットフォーム)で、電源・姿勢制御・推進といった衛星が共通して必要とする機能をあらかじめ備えたものです。
通信機器を載せ替えれば別の衛星に仕立てられるため、一から設計するより開発期間を短くできます。
同社は静止衛星向けに3種類の製品系列を持っており、Spacebus B2は地域の通信事業者に適した機体、Spacebus NEOは超高速インターネット向けの電気推進衛星、Space INSPIREは軌道上で構成を変えられる完全デジタル衛星と位置づけています。
NigComSat-2Aは打ち上げ時の質量が約4トンで、西アフリカ・中部アフリカ・南部アフリカを対象範囲とし、軌道上での運用寿命は15年を超えると見込まれています。
提供するのはテレビ放送、遠隔地へのブロードバンド接続、通信サービスです。
NIGCOMSATのNkechi Jane Egerton-Idehen最高経営責任者は、この衛星が国の衛星通信能力を強化し、接続が行き届いていない地域へのブロードバンドを広げると述べています。
タレス・アレニア・スペースのHervé Derrey最高経営責任者は、今回の受注がSpacebus B2という製品系列の成果を示すものであり、NigComSat-2AはNIGCOMSATの競争力を高めると述べています。
宇宙業界にとっての意味
アフリカでは、地上の通信設備が届きにくい地域が広く残っています。
静止衛星は1機で大陸規模をカバーでき、しかも15年を超える期間にわたって使えるため、こうした地域の通信手段として位置づけられています。
NIGCOMSATにとって今回の契約は、2011年から運用してきたNigComSat-1Rに続く静止通信衛星を確保する動きにあたります。
自国の名義で衛星を持ち続けることは、放送や行政サービス、防災といった用途で使う通信回線を、他国の事業者に依存せずに確保することにつながります。
衛星を作る側から見ると、この受注は欧州のメーカーがアフリカ市場で製造案件を獲得した事例です。
タレス・アレニア・スペースは大型・高性能の製品系列だけでなく、Spacebus B2のように地域の通信事業者を想定した機体も並行して揃えており、今回の選定はその製品系列に対する需要が続いていることを示しています。
今後の注目点
タレス・アレニア・スペースは、契約金額と打ち上げ時期を公表していません。
NigComSat-2Aが使う周波数帯や、どの軌道位置に配置されるかも示されていません。
NigComSat-1Rは、C・Ku・Ka・Lの4つの周波数帯に対応する衛星としてアフリカを中心にサービスを提供してきました。
新しい衛星がどの周波数帯を搭載し、既存のNigComSat-1Rとどう役割を分担するのかは、今後の発表で確認したい点です。
併せて、打ち上げに使うロケットと打ち上げ時期がいつ示されるかも、計画の進み具合を見るうえでの手がかりになります。
ほしまる今回決まったのは、衛星を「作る」ところまでの契約なんだ。いつ打ち上がるかは、まだ公表されていないんだよ。
出典
- Thales Alenia Space「Thales Alenia Space wins NIGCOMSAT contract to build NigComSat-2A geostationary telecommunications satellite」
- Thales Alenia Space「Who we are」
- Thales Alenia Space「Telecommunications Satellites」
- NIGCOMSAT「About Us」
- Thales Group「About Thales」
- Thales Group「France」
- Leonardo「Profile」
- Leonardo「Contact us」