ElevationSpaceが三菱重工とH3の打上げ契約を締結

宇宙で実験や製造を行い、その成果物を地球へ持ち帰る小型宇宙機を開発する日本のスタートアップ、ElevationSpaceが、三菱重工業とライドシェア(相乗り)打上げ輸送サービス契約を結んだと2026年9月14日に発表しました。

運ぶのは、同社の宇宙環境利用・回収プラットフォーム「ELS-R」の2号機です。
打上げは2027年で、日本の基幹ロケットであるH3ロケットが使われます。

3行で分かるポイント

  • ElevationSpaceが三菱重工業と、1機のロケットに複数社の衛星を相乗りさせる形式の打上げ契約を結んだと発表しました。
  • 運ぶのは、宇宙で実験や製造を行って成果物を地球に回収する小型宇宙機「ELS-R」の2号機で、打上げ時期は2027年です。
  • 初号機はドイツの企業のロケットで打ち上げる計画のため、今回の契約で打上げ手段が複数になります。
目次

まず押さえたい背景

ElevationSpaceは、宮城県仙台市青葉区に本社を置く2021年2月設立の企業です。
宇宙環境利用・回収プラットフォーム事業、有人拠点からの高頻度物資輸送事業、Co-Creation事業を手がけています(出典: ElevationSpace「ElevationSpace、三菱重工とライドシェア打上げ契約を締結」。以下、今回の契約に関する内容は同リリースによります)。

同社の主力が「ELS-R」です。
これは、人が乗らない小型の宇宙機の中で実験や製造を行い、その成果物を地球へ安全に持ち帰るためのサービスです。
地球を回る軌道の上では、機体も中身も同じように落ち続けているため、物が浮いたままになる微小重力の状態が長く続きます。

この状態では、重さの違う材料が沈んだり浮いたりせずに混ざるなど、地上の実験室では再現しにくい条件をつくれます。
ただし、宇宙でつくったものは持ち帰らなければ手元で調べられません。
「回収」を掲げているのは、この持ち帰りまでを1つのサービスにするためです。

一方の三菱重工業は、東京都千代田区に本社を置く1884年創立の総合重工業メーカーです。
火力・原子力発電システム、商船、民間航空機、防衛航空機、ロケットなど幅広い製品を手がけ、エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙の4分野で事業を展開しています(出典: 三菱重工業「三菱重工グループの概要」)。
このうち宇宙分野で、契約から打上げまでを請け負う打上げ輸送サービスを提供しています。

今回使われるH3ロケットは、JAXAが日本企業と共同で開発した日本の新しい基幹ロケットで、H-IIAロケットの後継にあたります。
柔軟性・高信頼性・低価格を掲げており、三菱重工業が打上げ輸送サービスを担当しています(出典: JAXA「H3ロケット」)。

何が発表されたか

締結したのは、ライドシェア打上げ輸送サービス契約です。
ライドシェアとは、1機のロケットで複数の会社の衛星をまとめて打ち上げる形式を指します。
自前でロケット1機を丸ごと確保するのではなく、他の衛星と同じ便に相乗りする形です。

ElevationSpaceは、H3ロケットのライドシェアミッションの打上げタイミングと投入軌道の条件が、ELS-Rの開発・実証スケジュールと合致したことで契約に至ったと説明しています。
相乗りでは、打上げの時期も、衛星を放出する軌道も、その便の主たる計画に合わせることになります。
つまり、自社の開発の進み具合と便の条件がそろって初めて成立する契約です。

同社の小林稜平代表取締役CEOは、H3ロケットでの打上げ機会の確保を、より多様なニーズに応えるプラットフォームへと進化させる重要なステップだと述べ、日本の自律的な宇宙開発・利用能力の確立に貢献したいとしています。

ELS-Rの初号機「あおば」は、ドイツの企業Isar Aerospaceのロケット「Spectrum」で打ち上げる計画です。
Isar Aerospaceは、小型・中型の衛星や衛星群に向けた打上げサービスを手がける企業です(出典: Isar Aerospace「About」)。
今回の契約により、2号機は日本のH3ロケットで打ち上げられます。

宇宙業界にとっての意味

ElevationSpaceは、国際宇宙ステーション(ISS)が構造寿命などの関係から2030年末に運用を終了することが決まっていると説明しています。
微小重力を使った実験や製造の場は、これまで人が滞在する施設に頼る部分がありました。
人が乗らない小型の機体で同じことができれば、その受け皿のひとつになります。

ほしまる

相乗りの便は、行き先も出発の時期も、便のほうに合わせることになるんだ。条件の合う便を見つけられるかどうかが、まず問われるんだよ。

もうひとつは、打上げ手段の選択肢が増えたことです。
新しいロケットの開発は遅れることがあり、1社の1機種だけに頼ると、機体の都合がそのまま事業計画の遅れになります。

初号機をドイツのロケット、2号機を日本のH3ロケットという形にしたことで、片方の事情に計画全体が左右されにくくなります。
日本の基幹ロケットの相乗り枠を、設立から数年のスタートアップが確保した事例でもあります。

今後の注目点

当面の節目は、初号機「あおば」の打上げと、2027年に予定される2号機の打上げです。
2号機がどのような実験・製造を載せ、どの軌道でどれくらいの期間運用されるのかは、これから明らかになる段階です。

H3ロケット側では、2027年の相乗りミッションがどの主衛星と組み合わされ、どの時期に設定されるかが、ELS-Rの計画にそのまま効いてきます。
ElevationSpaceは、今回の「ELS-R」に加えて高頻度回収カプセル「ELS-RS」の提供も目指しており、2機種をどう組み合わせていくかも今後の論点です。

出典

ほしまる
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