ハンファシステムズが衛星画像のリアルタイムAI解析技術を海外で初公開

韓国の防衛電子・ICT企業であるハンファシステムズが、現地時間2026年9月9日、ポーランドのキェルツェで開かれた防衛産業見本市「MSPO 2026」で、衛星が撮影した画像をAIが解析するソリューション「Space AI Analytics Solution」を海外で初めて公開しました。

会場では、軌道上で運用中の衛星が東欧の上空を撮影した画像を、その場でAIが解析してみせる実演が行われました。

3行で分かるポイント

  • ハンファシステムズが、衛星画像をAIで読み解くソリューションを、ポーランドの防衛産業見本市で海外初公開しました。
  • カメラで撮る画像と、電波を使って夜や悪天候でも撮れるレーダー画像の両方に対応し、レーダー画像の中から航空機・船舶・車両を数秒で見分けます。
  • 軍の動きを追う用途だけでなく、災害の前後で建物や地形がどう変わったかを調べる使い方も想定しています。
目次

まず押さえたい背景

ハンファシステムズは、韓国・ソウルに本社を置く企業です。
事業は防衛部門とICT部門の2つに分かれていて、防衛部門は1978年の暗視ゴーグルの生産に始まり、現在は電子光学、指揮統制通信、レーダー、航空電子といった分野を手がけています。
ICT部門は企業向けの情報システムの構築やデータセンターの運営を担い、AI・ビッグデータ・クラウドなどの技術を扱っています(出典: Hanwha Systems「Company Overview」)。

今回のニュースを読むには、地球観測衛星に大きく2つの種類があることを知っておくと分かりやすくなります。
ひとつは電子光学(EO)衛星で、カメラで光をとらえる、写真に近い画像を撮ります。

もうひとつがSAR(合成開口レーダー)衛星で、地表に電波を当て、跳ね返ってきた信号から画像を作ります。
自分で電波を出すため、太陽の光が届かない夜でも、雲や雨が広がっていても地表をとらえられるのが強みです。
ただし、できあがるのは白黒のレーダー画像で、写真のように目で見て中身を判断するのは簡単ではありません。

ハンファシステムズは宇宙分野で、小型SAR衛星を多数連携させて運用するコンステレーションの開発、軍事衛星に載せる電子光学モジュールとSARモジュールの供給、軍用衛星通信のネットワーク制御装置や端末の提供を挙げています。
同社は、韓国国内で電子光学・赤外線とSARの両方のペイロード(衛星に搭載する観測機器)を供給できる唯一の企業だと説明しています。

公開の舞台となったMSPOは、ポーランドのキェルツェで見本市会場のTargi Kielceが開く、中欧・東欧最大の防衛産業見本市です。
2026年は9月8日から11日までの開催で、43カ国から1,200社を超える出展者、60カ国から4万5,000人の来場者を集めました(出典: Targi Kielce「MSPO」)。

何が発表されたか

Space AI Analytics Solutionは、衛星から地上局へ送られてきた画像データをAIが解釈・解析し、要点をまとめて届けるソリューションです。
物体の検出、状況のパターン分析、異常の検知を自動で行い、指揮官や運用者がより速く判断できるようにすることをねらっています(出典: Hanwha「Hanwha unveils cutting-edge ‘Space AI Solution’ for the first time overseas」。以下、この発表の内容は同リリースによります)。

特徴として同社が挙げているのが、電子光学衛星とSAR衛星という2種類の画像の両方を扱い、状況に応じて両者のデータを融合させる点です。
2種類の衛星データを統合して解析できるAIソリューションは、世界市場でも最先端の部類に入るというのが同社の位置づけです。

背景にあるのが、先ほど触れたSAR画像の読みにくさです。
このソリューションは、SAR画像の中から航空機・船舶・車両を数秒で識別し、解像度を大きく高めたうえで、高解像度の電子光学画像を重ね合わせてSARの弱点を補います。
使い方としては、軍事面では敵の動きや部隊の経路を追跡すること、災害時には関心のある地域の建物や地形の変化を分析し、被災前後の被害状況を素早くつかむことが示されました。

あわせて、ハンファグループの打撃システムであるK9自走砲やチョンム(Chunmoo)多連装ロケット、射撃指揮統制システムと接続する専用インターフェースを備えていることも公表されています。

そして冒頭のとおり、発表会では実際に運用中の衛星が東欧上空で撮影した画像を、AIがリアルタイムで解析する様子が実演されました。

宇宙業界にとっての意味

衛星の画像は、撮れただけでは価値になりません。
とくにSAR画像は、白黒のレーダー画像を読み解ける人が必要で、そこが利用の入り口を狭くしてきました。
その読み解きを自動化して数秒の処理に落とし込めるなら、画像を扱える人や組織の幅が広がります。
今回の発表が示しているのは、衛星データビジネスの重心が、衛星を作って撮ることから、届いたデータをどれだけ速く意味のある情報に変えられるかへ移っている、という構図です。

もうひとつの注目点は、ハンファシステムズが衛星に載せる観測機器そのものを作る側でもあることです。
センサーを供給する企業が、その出力を読み解くAIまで自社で持てば、衛星から地上での解析までをひとつながりで提供できます。
同社は、ハンファグループとして宇宙と地上を統合した自社インフラの構築を続けていくとしています。

今後の注目点

まず見たいのは、この実演がどこまで契約につながるかです。
今回は見本市での公開であり、どの国のどの組織が採用するのかは、これからの発表で明らかになっていきます。

次に、実演で示された速さが、どのような条件の運用で再現されるのかという点です。
対象とする衛星の種類や画像の量、通信の条件によって、現場で出せる性能は変わります。

そして、同社が開発を進める小型SAR衛星コンステレーションと、この解析ソリューションがどう組み合わされるのかも、追いかける価値のあるところです。
自社の衛星で撮り、自社のAIで読む体制が実際に動き出すのかどうかが、次のマイルストーンになります。

ほしまる

ぼくが送った画像も、地球に届くまでより、届いてから人が読み解くまでのほうが長かったんだ。その時間が数秒まで縮むって、けっこう大きなことだよ。

出典

ほしまる
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