ESAがICEYEとLeonardoに政府向け地球観測の設計を委託

欧州宇宙機関(ESA)は2026年9月18日、EUの政府機関向け地球観測サービス(EOGS)をどのような仕組みで実現するか、その設計案をまとめる契約を2件公表しました。
発注先は、フィンランドのICEYEとイタリアのLeonardoが、それぞれ率いる欧州企業の連合です。
2社は同じテーマを別々に並行して検討し、結果は2027年に出る見込みです。

3行で分かるポイント

  • ESAが、EUの安全保障や危機対応で使う地球観測サービスの設計案づくりを、ICEYEとLeonardoの2社に並行して発注した
  • 検討する範囲は衛星だけでなく、地上設備・データ処理・利用者への配信・運営の仕組みまで、サービス全体に及ぶ
  • サービスそのものは、2028年から始まるEUの次期予算の枠組みのもとで開始が計画されている
目次

まず押さえたい背景

ICEYEは、フィンランドのエスポーに本社を置く地球観測の企業です。
合成開口レーダー(SAR)を積んだ衛星を自社でつくり、多数の衛星をまとめて運用しています。

SARは、衛星から地表に電波を当てて、跳ね返ってきた電波から画像をつくる仕組みです。
太陽の光を使わないので、夜でも、雲に覆われていても地表を撮影できます。
同社は防衛・情報分野向けのサービスに加え、洪水などの自然災害の被害を把握するサービスも提供しています。

Leonardoは、イタリアのローマに本社を置く航空・防衛・セキュリティの大手企業です。
宇宙分野では、衛星や軌道上のインフラの製造から、センサーや機器、推進系、衛星を使ったサービスまでを手がけています。
衛星システムを担うタレス・アレーニア・スペースと、衛星サービスを担うテレスパツィオという2つの合弁会社にも出資しています。

今回の契約は、ESAが2025年11月の閣僚級理事会で決めた新しい計画「ERS-EO」の一部で、資金は欧州委員会が拠出します。
ERS-EOは、陸・海・大気で起きていることについて、欧州が他国に頼らずに、安全かつ時機を逃さず宇宙からの情報を得られるようにすることを目的としています。
そのために、非常に高い分解能の光学観測とレーダー観測、そして多数の衛星を並べて同じ場所を短い間隔で撮り直せる体制を整える、という方向が示されています。

何が発表されたか

ESAが2社と結んだのは、EOGSの「アーキテクチャ研究」、つまりサービス全体をどう組み立てるかの設計案をつくる契約です。
検討の対象は、利用者が何を必要としているかの整理から、衛星などの宇宙側の構成、地上設備、データの処理と配信、さらに誰がどう運営するかという governance(ガバナンス=運営の枠組み)まで、価値の連鎖全体に及びます。

画像を撮る衛星を何機そろえるかだけでなく、撮ったデータを誰にどの速さで届けるかまでを含めて一括で設計する、という点が今回の契約の特徴です。

EOGSは、EUと加盟国が安全保障や防衛の場面で状況を把握し、判断するために、安全で、時機を逃さず、途切れない地球観測データを届けることを狙ったサービスです。

ESAの地球観測プログラム部長を務めるSimonetta Cheli氏は、ERS-EOを、宇宙からの情報収集と監視の能力によって欧州の戦略的自律性とレジリエンス(強靱性)を高めるための野心的な新計画だと位置づけ、2027年に出る研究の成果に期待を示しています。
EOGS自体は、2028年から始まるEUの次期多年度財政枠組みのもとで開始することが計画されています。

宇宙業界にとっての意味

注目したいのは、ESAが1社に絞らず、2つの企業連合へ同じテーマを並行して発注した点です。
性格の異なる2社が別々の案を出すため、衛星の機数やセンサーの種類、データを届ける経路の組み方について、複数の選択肢が並んで比較できる形になります。

ICEYEは、レーダー衛星を数多く並べて同じ場所を繰り返し撮る運用を事業にしてきた新興企業です。
一方のLeonardoは、衛星や軌道上インフラの製造と、合弁会社を通じた衛星サービスの両方を持つ大手です。
どちらも欧州の企業連合を率いる立場で、今回の研究を通じて、EOGSの供給側の有力な候補として名前が挙がることになります。

欧州が抱える課題は、必要なときに他国の資産に頼らずに済む観測能力を、自前でどこまで持てるかという点にあります。
今回の契約は、その答えを設計図の形で描き出すための最初の段階にあたります。

今後の注目点

まずは2027年に出る2つの研究の成果です。
衛星を何機そろえるのか、光学とレーダーをどう組み合わせるのか、データをどれだけ速く利用者へ届けるのかといった具体的な数字は、この研究を経て詰められる段階にあります。

その先には、2028年から始まる次期予算の枠組みのもとで、EOGSをどう調達し、どの企業が実際の製造と運用を担うのかという段階が控えています。
ERS-EOはEOGSを準備するための計画なので、今回の設計研究に続いて、技術実証など他の活動がどう動き出すかも合わせて見ておきたいところです。

ほしまる

今回決まったのは「どんな仕組みにするか」を描く仕事で、衛星そのものをつくる話はまだこれからなんだ。

出典

ほしまる
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