ViasatがViaSat-3 F2の運用を始め3機体制が完成

アメリカの衛星通信会社Viasatは、大型通信衛星「ViaSat-3 F2」が南北アメリカ地域で運用を開始したと2026年9月17日に発表しました。
2025年11月に打ち上げられたこの衛星が、軌道上での試験を終えて商用サービスに入りました。
これで同社が計画していた3機のViaSat-3衛星がすべて稼働し、全衛星で使える通信容量は3倍になったとしています(出典:Viasat「ViaSat-3 F2 Enters Service, Expanding Capacity and Enabling Growth Across the Americas」)。

3行で分かるポイント

  • Viasatの通信衛星ViaSat-3 F2が南北アメリカ地域で運用に入り、同じ型の衛星3機がそろいました。
  • F2は1機で毎秒1テラビット(1秒あたり1兆ビット)を超える通信容量を持ちます。
  • 1号機は2023年の打ち上げ後にアンテナの展開で不具合が起き、容量が大きく減った状態で使われています。
目次

まず押さえたい背景

Viasatは、旅客機の機内Wi-Fiや船舶、政府機関、企業、家庭向けインターネットなどに衛星回線を提供する企業です。
本社はアメリカのカリフォルニア州カールスバッドにあり、国際本社をイギリスのロンドンに置いています。
拠点は世界24か国にあり、従業員は約7,000人です。

ViaSat-3は静止軌道に置かれる衛星です。
静止軌道は赤道の上空を地球の自転と同じ周期で回る軌道で、地上から見ると衛星が空の一点に止まっているように見えます。
地上のアンテナを一方向に向けたままにできるので、常時つなぎっぱなしにする通信に向いています。

3機はまとめて「コンステレーション」と呼ばれます。
これは複数の衛星を組み合わせ、ひとつのネットワークとして運用する仕組みのことです。
ViaSat-3はKa帯という高い周波数の電波を使う世代にあたり、Viasatはこれを次世代のKa帯コンステレーションと位置づけています。

もうひとつの鍵がビームフォーミングです。
アンテナから出す電波を細い「ビーム」の束にまとめ、その向きや容量の配分を運用中に変えられる技術で、Viasatは需要の多い航空路や航路、地域に容量を振り分けると説明しています。

何が発表されたか

Viasatの発表では、F2は南北アメリカ地域に毎秒1テラビットを超える通信容量を提供します。
会長兼最高経営責任者のMark Dankberg氏は、3機が稼働したことで需要の伸びが速い場所へ高品質な回線を届ける能力が大きく広がり、政府と商用の顧客に新しい形の冗長性をもたらすと述べています。

F2は2025年11月13日の午後10時4分(アメリカ東部標準時)、フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地からUnited Launch Alliance(ULA)のアトラスV551で打ち上げられました。
ULAはアメリカのコロラド州デンバーに本拠を置く打ち上げサービス会社で、アトラスVなどのロケットを運用し、新型のバルカン・セントールを開発しています。
衛星はリフトオフの約3時間半後にロケットから分離し、その後に軌道を上げる噴射と太陽電池パドルの展開、軌道上での試験を経て、およそ10か月後の運用開始にたどり着きました。

残る2機のうち、F1は2023年4月に打ち上げられています。
F3は2026年8月31日にアジア太平洋地域で運用を始めました。
F2は2番目に打ち上げられた衛星ですが、運用開始の順番は3番目になりました。

宇宙業界にとっての意味

Viasatにとって、この3機は順調に積み上がってきたものではありません。
1号機のF1は2023年4月の打ち上げ後にアンテナの展開で不具合が起き、衛星全体の容量が大きく減りました。
Viasatは、それ以外の系統は想定どおりかそれ以上に動いたと説明しており、F1は2024年8月に北米上空の航空会社向けに商用サービスを開始し、同年10月には政府顧客への提供も始めています。
南北アメリカ地域の容量は、今回のF2の投入で大きく積み増されたことになります。

容量の使い方も論点です。
同社の説明では、F2は需要の高い航空路や航路、地域に容量を動的に割り当てます。
機内Wi-Fiや船舶の通信は利用が特定の経路に集中するため、あらかじめ決めた配分に縛られず容量を寄せられる設計は、同じ衛星から引き出せる価値に直結します。
Dankberg氏は、干渉への耐性もVS3衛星の特徴として挙げています。

今後の注目点

F1は容量が減ったまま運用が続いており、3機をどう組み合わせ、地域ごとにどれだけの容量を割り当てるかは、これからの運用で見えてくる部分です。

もうひとつは、Dankberg氏が技術面で示した見通しです。
同氏は、VS3衛星が太陽光での発電量と排熱の処理で商用衛星の新しい水準を示すとしたうえで、この2つは宇宙空間で採算の取れるデータセンターを作るために重要な技術課題だと述べています。
この位置づけが今後の機体計画にどう反映されるかが、次に確かめたい点です。

ほしまる

高い軌道へ上がるのは、スイッチを入れたらすぐ着く、という話じゃないんだ。ぼくも軌道を変えるたびに、何か月もかけてゆっくり進んだよ。

出典

ほしまる
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