オーストラリア国防軍の衛星通信計画「LAND 4140 BLOS SATCOM」で、ボーイングの現地子会社Boeing Defence Australiaが、米国の端末メーカーLite Comsを供給元に選びました。
Lite Comsが2026年9月22日に発表しました。
Lite Comsは、持ち運んで短時間で設置できる衛星通信端末「LITE SAT 1.3A」を納めます。
3行で分かるポイント
- ボーイングのオーストラリア子会社が、国防軍向けの衛星通信計画で使う端末を米国の中小メーカーから調達します
- 選ばれた端末は炭素繊維製のアンテナ面を持つ軽量なもので、工具なしで組み立てられ、衛星の方向を自動で探します
- 山や地平線の向こうにいる部隊どうしを、衛星経由でつなぐための装備です
まず押さえたい背景
Boeing Defence Australia(BDA)は、米ボーイングのオーストラリア子会社で、本社はクイーンズランド州ブリスベンにあります。
航空機の整備・改修や訓練に加えて、防衛用の通信ネットワークの開発と統合を手がけています(出典:Boeing Australia「Boeing Defence Australia」)。
同社によると、オーストラリア国防軍(ADF)が使う航空機の種類の半数以上について、整備などの支援を担っています。
Lite Comsは、米ニューヨーク州ヴィクターに本社を置く非上場の会社です。
軍や政府機関向けの戦術衛星通信端末を設計・製造していて、人が背負って運べる型や航空機で運んで現地で組み立てる型など、18種類の製品をそろえています(出典:Lite Coms「Lite Coms Selected by Boeing Defence Australia to Support LAND 4140 Beyond Line-of-Sight Satellite Communications Program」)。
同社はこれまでに、1万台を超える端末を世界で納入したとしています。
今回のキーワードは「見通し外(BLOS:Beyond Line-of-Sight)通信」です。
地上の無線で使う電波は基本的にまっすぐ進むので、地平線や山の向こう側には届きにくくなります。
そこで、上空の衛星に電波をいったん中継してもらい、直接は見通せない遠くの相手と通信します。
これが見通し外通信で、そのための地上側の装置が衛星通信端末です。
何が発表されたか
Lite Comsの発表によると、同社はADFの陸上指揮通信近代化計画「LAND 4140」の一部として、LITE SAT 1.3Aを供給します。
豪州軍は、この計画の目的を「陸上部隊の指揮統制・情報・センサー・兵器システムを支える通信・情報システムを近代化し、意思決定で優位に立つこと」としています(出典:Breaking Defense「Boeing picks Lite Coms for Aussie BLOS SATCOM terminals」)。
LITE SAT 1.3Aは、軍や政府機関の運用を想定した、軽量で頑丈な衛星通信端末です。
電波を集める反射鏡(パラボラアンテナの皿の部分)は炭素繊維製で、工具を使わずに短時間で組み立てられます。
「自動捕捉」機能を持ち、アンテナを通信相手の衛星の方向へ自動で合わせます。
衛星は空のごく一部にしか見えないため、手作業で向きを合わせるには時間と技能が要ります。
この作業を機械に任せることで、到着してすぐに通信を始めやすくなります。
親計画の側では、ボーイングが2026年8月3日、BDAがLAND 4140のBLOS SATCOMを受注したと発表していました(出典:Boeing Australia「Boeing to deliver Beyond Line-of-Sight advancements to Australian Defence Force」)。
BDAはボーイングが「Class Two」と呼ぶ次世代の地上端末を提供し、高速で広帯域の衛星回線を使って、既存の戦場通信網(Integrated Battlefield Telecommunications Network)と接続します。
BDAにとって、LAND 4140での受注はこれが2件目です。
先に、部隊の位置や状況を共有する戦場管理システムで、システムインテグレーター(複数の機器やソフトをまとめて1つのシステムに仕上げる役)に選ばれていました。
端末の台数や契約金額は公表されていません。
Via Satelliteによると、計画の詳細や生産スケジュールは、決まりしだい明らかにされる予定です。
宇宙業界にとっての意味
衛星通信は、衛星そのものと、地上で電波をやり取りする端末がそろって初めて使えます。
今回の案件は、宇宙に打ち上げる側ではなく、地上端末の側のビジネスです。
大手防衛企業が計画全体を取りまとめ、端末は専門メーカーから調達するという分業の形が見えます。
Lite Comsは、低軌道(LEO)・中軌道(MEO)・静止軌道(GEO)・長楕円軌道(HEO)と、高度や軌道の形が違う衛星網に対応できるよう製品を設計していると説明しています。
BDAのMatt Buckle氏(Joint Systems部門ディレクター)は、この能力が複数の領域にまたがるオーストラリアの統合部隊をつなぐと述べています。
今回の発表では、LITE SAT 1.3Aがどの衛星網と組み合わされるかは明らかにされていません。
今後の注目点
まず、端末の台数や納入スケジュールがいつ公表されるかが焦点です。
次に、BDAが提供するClass Twoの地上端末と、Lite Comsの端末が計画の中でどう役割分担するのかも、今後の発表で確認したい点です。
あわせて、どの衛星網に接続するのかも見ておきたいところです。
端末が対応する軌道の種類と、国防軍が実際に使う衛星網との組み合わせで、この端末の使われ方が決まるためです。
出典
- Via Satellite「Boeing Taps Lite Coms for Terminals for Australian BLOS Program」
- Lite Coms(PR Newswire配信)「Lite Coms Selected by Boeing Defence Australia to Support LAND 4140 Beyond Line-of-Sight Satellite Communications Program」
- Boeing Australia「Boeing to deliver Beyond Line-of-Sight advancements to Australian Defence Force」
- Boeing Australia「Boeing Defence Australia」
- Lite Coms「Lite Coms, LLC」(公式サイト)
- Breaking Defense「Boeing picks Lite Coms for Aussie BLOS SATCOM terminals」