Starfish SpaceのOtter初号機がNASAの衛星点検へ

米国のStarfish Spaceは、自社の衛星サービス機「Otter(オッター)」の実運用初号機を、2026年10月にSpaceXの相乗り打ち上げ「Transporter-18」で宇宙へ送る予定です。
最初の仕事は、NASAの依頼で運用を終えた米国の衛星に近づき、状態を調べるミッションです。
米国の宇宙ビジネス媒体Payloadが2026年9月24日に報じました。

  • 米国の新興企業Starfish Spaceが、ほかの衛星に近づいて点検や処分をする宇宙機「Otter」の最初の実用機を10月に打ち上げる予定です
  • 最初の仕事はNASAの依頼で、動かなくなった米国の衛星などに数百mまで近づき、回転の様子や表面の状態を調べます
  • これまでの試験機による実証を終え、顧客のいる実際の任務に使う最初の機体になります
目次

まず押さえたい背景

Starfish Spaceは、米ワシントン州シアトルを拠点とする企業です(出典:Starfish Space公式サイト)。
軌道上の衛星に近づいてドッキング(宇宙機同士を機械的につなぐこと)し、衛星の寿命延長や運用終了後の処分を請け負う宇宙機「Otter」を開発しています。

同社はOtterを、電気推進を使う小型で比較的安価な機体と位置づけています。
電気推進は、電気の力で推進剤を加速して噴き出すエンジンです。
推力は小さいものの、少ない推進剤で時間をかけて軌道を変えるのに向いています。

報道によると、機体はキッチンのオーブンほどの大きさで、これに太陽電池パネルが加わります(出典:GeekWire「With NASA’s backing, Starfish Space is getting ready for the orbital debut of its flagship Otter spacecraft」)。

このような衛星サービスの土台になるのが、ランデブー・近接運用(RPO)と呼ばれる技術です。
高速で地球を回る相手と軌道をそろえ、ぶつからないように近くで動き回る技術を指します。

相手が壊れた衛星の場合、自分の位置を知らせてくれないため、カメラの画像などから相手の位置や向きを自力で見積もる必要があります。
今回のNASAのミッションでも、画像をもとに進む方向を割り出す航法ソフトウェアと、自律的に誘導・制御するソフトウェアが使われます(出典:NASA「NASA’s Small Spacecraft Propulsion and Inspection Capability (SSPICY)」)。

契約にはSBIR(中小企業技術革新研究プログラム)という仕組みが使われています。
米政府機関が中小企業の研究開発に資金を出す制度で、フェーズIIIはそれまでに開発した技術を実際の業務に使う段階にあたります。

何が発表されたか

Starfish Spaceは、実運用のOtter初号機を来月のTransporter-18で打ち上げると発表しました(出典:Payload「Starfish’s First Operational Otter Heading to Orbit Next Month」)。
Transporter-18は、1機のファルコン9ロケットで多くの衛星をまとめて運ぶSpaceXの相乗り便です。
カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から、10月1日以降に打ち上げられる予定です。

最初の任務は、NASAの「SSPICY」(小型宇宙機の推進・点検能力)ミッションです。
NASAは2024年9月、このミッションのためにStarfish Spaceと3年間で1,500万ドルのフェーズIII SBIR契約を結んでいます(出典:NASA「Getting SSPICY: NASA Funds Orbital Debris Inspection Mission」)。
点検の対象は、運用を終えた米国由来の物体(衛星やロケットの機体)で、最大4機です。
いずれも高度400km以上の円軌道を回っています。

Otterは対象から数百mの距離まで近づき、回転の速さや回転軸、表面の状態、形、軌道の情報を集めます。
対象の運用者は、Otterが近づくことに同意しています。
NASAの計画では点検は2027年に始まり、ミッション期間は約2年です。

共同創業者のAustin Link氏は、Otterが構想から現実のものになる瞬間だと述べています。
機体は完成しており、顧客とミッションが決まっていると説明しました。

宇宙業界にとっての意味

NASAは、運用を終えた衛星を点検し、修理や軌道離脱(大気圏に落として燃やし尽くす処分)の機会を見つける能力は、安全な軌道環境を保つうえで欠かせないとしています。
動かなくなった衛星は分解したり衝突したりしてデブリ(宇宙ごみ)を生み、ほかの衛星や有人飛行を脅かすおそれがあるためです。
今回のミッションは、将来デブリを取り除くための技術を確かめる役割も持っています。

事業の面では、Starfish SpaceはNASA以外にも顧客を抱えています。
2026年1月には、米国防総省の宇宙開発庁(SDA)が、運用を終えた衛星を軌道から外すサービスについて5,250万ドルの契約を同社と結びました。
このサービスは早ければ2027年に始まります。

米宇宙軍もOtterを使う任務を同社に発注しています。
同社は2026年4月に1億ドルを超える資金調達(シリーズB)を終えています。
政府機関が軌道上での点検や処分を「サービス」として外部から買う形が、この1社について実際の契約として積み上がってきています。

今後の注目点

まずは10月1日以降に予定されている打ち上げと、軌道上での初期確認が最初の節目になります。
そのあと、最大4機の対象に計画どおり安全に近づき、必要なデータを取れるかが試されます。

点検の段階では相手に接触しませんが、SDA向けの処分サービスのように相手に取り付いて動かす任務では、さらに近くまで寄る技術が求められます。

報道によると、同社は少なくとも6機のOtterを開発・計画しており、1機の製造には約18か月かかります。
複数の顧客の任務を予定どおりこなせるだけの製造ペースを保てるかも、今後の確認点です。

出典

ほしまる
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