ESAが12番目の地球観測探査ミッションの候補を3つに絞り込む

欧州宇宙機関(ESA)は2026年9月25日、地球を調べる研究用衛星シリーズ「アース・エクスプローラー」の12番目の計画について、4つあった候補を3つに絞ったと発表しました。
残ったのは、地球の熱の出入りを測る「ECO」、高層大気を調べる「Keystone」、南極・グリーンランドなど極域の氷床の内部を探る「CryoRad」です。

ESAは、この3つから次回の閣僚級理事会より前に1つを選び、2036年ごろに打ち上げる予定としています。

3行で分かるポイント

  • ヨーロッパの宇宙機関が、次に作る地球観測の研究衛星の候補を4つから3つに減らしました。
  • 残った3候補は、地球の熱の出入り、高度50〜250kmの大気、極地の厚い氷の内部をそれぞれ調べる計画です。
  • 最終的に1つが選ばれ、2036年ごろの打ち上げを予定しています。
目次

まず押さえたい背景

ESAは、フランスのパリに本部を置き、23の加盟国が協力して宇宙の研究や技術開発を進める機関です(出典:ESA「ESA facts」)。
基本方針を決めるのは加盟国の代表が集まる理事会で、閣僚級の会合も開かれます。

アース・エクスプローラーは、研究者から提案されたアイデアをもとにESAが開発する、地球科学のための研究衛星シリーズです(出典:ESA「Earth Explorers: ESA’s pioneering science missions for Earth」)。
2009年に最初の衛星が打ち上げられ、重力場を測ったGOCE、雲とエアロゾルを観測するEarthCARE、森林の量を測るBiomassなどが続いています。
ESAは、これらの衛星で実証された技術が、欧州連合の地球観測計画「コペルニクス」の実用衛星であるSentinelシリーズの開発を支えたと説明しています。

12番目の計画の公募は2023年2月に始まりました(出典:ESA「Call opens for ESA’s twelfth Earth Explorer」)。
2024年4月には、17件の提案から4件が詳しく調べる評価研究の段階に進んでいます(出典:ESA「ESA selects four new Earth Explorer mission ideas」)。

何が発表されたか

ESAで地球観測の計画を決める地球観測プログラム評議会が、ECO、Keystone、CryoRadの3候補を次の準備段階へ進めると決めました(出典:ESA「Three Earth Explorer candidates go forward」)。
2026年7月には研究者コミュニティが4候補を詳しく検討する会合が開かれ、その結果を受けて地球観測諮問委員会(ACEO)がECO、Keystone、CryoRad、Hydroterra+の順に科学的な価値を評価しました。
評議会は、科学的な意義とプログラム全体の事情の両方を考えて判断したとしています。

ECOが測るのは「地球エネルギー不均衡」です。
これは、地球に届く太陽の放射と、地球から宇宙へ出ていく放射の差のことで、差がプラスなら地球に熱がたまっていきます。
ESAはこれを最も基本的な気候の変数と位置づけ、気候変動の進み具合や、温暖化を抑える対策の効果を評価できるとしています。
2024年の選定時には、複数の衛星を連携させるコンステレーションで測る案と紹介されていました。

Keystoneは、高度50〜250kmの大気で、酸素分子が分かれてできた原子状の酸素を世界で初めて直接観測し、温度や風も同じ場所で測る計画です。
この高さは観測があまり進んでいない領域で、大気圏に突入した宇宙ごみ由来の金属も検出できるとしています。

CryoRadは、極域の氷床の内部の温度と、氷床の底の状態を直接測る計画です。
氷床の動きの理解が進めば、将来の海面上昇をより正確に見積もれるようになります。
2024年の紹介では、氷や海が自然に出しているマイクロ波の強さを広い周波数帯で測る放射計を使うとされていました。

静止軌道から合成開口レーダー(電波を当てて跳ね返りから地表の画像を作る装置)で観測するHydroterra+は、今回は選ばれませんでした。

宇宙業界にとっての意味

今回の決定で、12番目のアース・エクスプローラーの候補は3つにまで絞られました。
ここで残った計画は、最終的に1つが選ばれて開発・製造へ進みます。
そのため、エネルギー収支を測る衛星群、高層大気を測る装置、氷床の内部を探るマイクロ波放射計という3つの技術の方向性は、次の段階でも検討が続きます。

ESA自身が、アース・エクスプローラーで実証した技術がSentinelのような実用衛星の土台になったと説明しています。
研究衛星向けの観測装置の開発は、その技術がのちの実用ミッションにも使われるかどうかという点で、衛星メーカーや観測装置メーカーにとっても関係する可能性があります。
ただし、今回の発表は候補を絞る段階の決定で、どの企業が開発を担うかは示されていません。

今後の注目点

次の節目は、3候補から1つを選ぶ最終選定です。
ESAはその時期を、次回の閣僚級理事会の前としています。
選ばれた計画は、2036年ごろの打ち上げが予定されています。

ACEOの評価で1位だったECOがそのまま選ばれるのか、それとも評議会が技術やプログラムの事情を重く見て別の候補を選ぶのかが注目点です。
あわせて、選定後にどのような体制で開発が進むのかも、今後の発表で確かめたいところです。

出典

ほしまる
記事について、お気づきの点はありますか? 内容の誤りのご指摘、取材・掲載のご依頼をお待ちしています。
お問い合わせフォームへ →
SISTER SITE — ASTRONOTE 働く前に、恋をしよう。宇宙に。 ブラックホール、流れ星、フェルミのパラドックス。宇宙を好きになる読みものは、姉妹サイト ASTRONOTE に。
ASTRONOTE へ →