Starfish Spaceが衛星整備機Otterを初打ち上げへ

米国の宇宙企業Starfish Spaceは、人工衛星の寿命延長や廃棄処理を担う宇宙機「Otter(オッター)」の初号機を、SpaceXのロケットで打ち上げる予定です。
早ければ2026年10月1日に、米カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられます。
初号機はNASAの契約にもとづき、運用を終えた米国の衛星に近づいて、その状態を調べます。

3行で分かるポイント

  • 衛星に近づいて点検したりくっついて動かしたりする宇宙機「Otter」の初号機が、早ければ10月1日に打ち上げられます。
  • 最初の仕事は、NASAから1,500万ドルで請け負った、使われなくなった米国の衛星を近くで観察する任務です。
  • 米国防総省の機関からも、衛星を軌道から取り除く仕事を受注しています。
目次

まず押さえたい背景

Starfish Spaceは、米ワシントン州シアトルに拠点を置く宇宙企業です(出典:Starfish Space「Company」)。
Austin Link氏とTrevor Bennett氏が2019年に共同で設立し、宇宙で人工衛星の手入れをする「衛星サービス」を手ごろな費用で使えるようにすることを目指しています。
GeekWireによると、両氏はどちらもBlue Originの出身で、社員は120人を超えています。

同社の主力製品がOtterです。
燃料が尽きかけた衛星にドッキングし、Otter自身の燃料で衛星の位置を保つことで、衛星を長く使えるようにします(寿命延長)。
役目を終えた衛星を運んで処分する用途(廃棄処理)も想定しています(出典:Starfish Space「The Otter」)。

同社によると、Otterのドッキング装置「Nautilus」は、ほぼどんな平らな面にも取り付けられます。
このため、もともとドッキングする前提で設計されていない衛星にもつなげられるとしています。

衛星は燃料を使い切ると、機器がまだ動いていても軌道を保てなくなります。
動かなくなった衛星は軌道上に残り、ほかの衛星とぶつかる危険の元になります。
Otterは、この2つの課題を扱うための宇宙機です。

何が発表されたか

Otterの初号機は、SpaceXの「Transporter-18」ミッションでファルコン9ロケットに載せられ、早ければ10月1日に打ち上げられます(出典:GeekWire「With NASA’s backing, Starfish Space is getting ready for the orbital debut of its flagship Otter spacecraft」)。
Transporterは、1機のロケットに複数の会社の衛星をまとめて載せる「相乗り(ライドシェア)」打ち上げのシリーズです。

初号機が担うのは、NASAの「SSPICY(小型宇宙機の推進・点検能力)」ミッションです。
NASAは2024年9月、中小企業の技術を実用化するための制度(SBIRフェーズIII)でStarfish Spaceと契約し、3年間で1,500万ドルを支払うとしています(出典:NASA「Getting SSPICY: NASA Funds Orbital Debris Inspection Mission」)。

NASAの説明では、初号機の名前は「Otter 24C」、質量は335kgです(出典:NASA「NASA’s Small Spacecraft Propulsion and Inspection Capability (SSPICY)」)。
推力は小さいものの燃費のよい電気推進を使い、高度400km以上の円軌道を回る、動かなくなった米国の衛星やロケットの一部に最大4つまで近づきます。
対象から数百mの距離まで寄り、回転の速さ、回転軸の向き、表面の材料の傷み具合などを調べます。
ミッションは約2年間の予定で、点検は2027年に始まります。

共同創業者のLink氏は、Otterはもう将来に向けて設計しているものではなく、機体が完成し、顧客と任務が決まった状態で宇宙へ行くと話しています(出典:Via Satellite「Starfish Space’s Debut Otter Vehicle Hitches a Ride on SpaceX’s Transporter-18 Launch」)。

宇宙業界にとっての意味

動かなくなった衛星を取り除いたり修理したりするには、まず対象がどう回転しているか、表面がどんな状態かを知る必要があります。
NASAはSSPICYで集める情報を、修理や軌道からの除去を判断するための基礎データと位置づけています。
あわせて、将来のデブリ(宇宙ごみ)除去や、稼働中の衛星の整備・点検に必要な技術を実証するとしています。

Otterの受注は、NASAのほかにも広がっています。
米国防総省の宇宙開発庁(SDA)は2026年1月、衛星を軌道から取り除くサービスについて、5,250万ドルの契約をStarfish Spaceと結びました(出典:Payload「Starfish’s First Operational Otter Heading to Orbit Next Month」)。

GeekWireによると、同社は米宇宙軍の案件や、静止軌道(赤道の上空約3万6,000kmで、地上からは止まって見える軌道)で商用衛星を整備する2件の任務も抱えており、少なくとも6機のOtterを開発しています。
Bennett氏は、需要はすでにあり、今後はOtterをどれだけ早く多く作れるかが課題だと話しています。

これまでの試験機「Otter Pup」は小型の実証機でした。
これに対して今回は、顧客から代金を受け取って任務を行う初めての本格的な機体です。
衛星に近づいて点検する仕事が商用サービスとして成り立つかどうかを、実際の任務で確かめる段階に入ります。

今後の注目点

まずは、10月の打ち上げ後に、機体の機能を確かめる立ち上げ作業を終えられるかどうかです。
次に、2027年に始まる点検で、何も合図を送ってこない衛星へ安全に近づき、狙いどおりのデータを取れるかが問われます。

ドッキングの技術も見どころです。
GeekWireによると、2025年に打ち上げた試験機Otter Pup 2は、2026年6月から目標の衛星の近くで、ドッキングを目指しています。
SDAの廃棄処理ミッションは、Payloadによると早くても2027年に実施される予定です。

量産の速さも課題です。
GeekWireによると、現在は1機の製造におよそ18か月かかっており、同社はこれを短くして、複数の機体をまとめて運用する体制を目指しています。

出典

ほしまる
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