パスコと目黒区が衛星画像と区民の写真で街路樹点検の効率化を検証

パスコと東京都目黒区は2026年9月28日、衛星画像と区民から届く写真を組み合わせて、街路樹などの樹木管理を効率化するプロジェクト「目黒グリーン・レジリエンスDX」を実施すると発表しました。
宇宙から見た植物の元気さの変化と、地上で集めた情報を照らし合わせ、職員が先に現地を確かめるべき場所を絞り込めるかを試します。

期間は2027年3月までです。

3行で分かるポイント

  • 衛星画像から植物の元気さが落ちている場所を見つけ、区の樹木記録や区民の写真と合わせて、点検する場所の優先順位を決める方法を試します。
  • 衛星画像の解析はパスコ、区民が参加する調査とアプリはジオテクノロジーズが担当し、目黒区は実証の場とデータを提供します。
  • 2026年度は地域と樹木の種類を絞って効果と費用対効果を確かめ、2027年度以降はほかの地域やほかの自治体への展開を検討します。
目次

まず押さえたい背景

パスコは、東京都目黒区に本社を置く、地図や位置に関するデータ(空間情報)を扱う会社です。
セコムが75%、伊藤忠商事が25%を出資しています(出典:パスコ「会社概要」)。
人工衛星が撮影した画像の販売や、国内での航空写真の撮影・販売、デジタル地図の作成を手がけています(出典:パスコ「航空写真、衛星画像、地図データを販売」)。
同社は、人工衛星と通信するための地上の拠点(地球局)も国内に置いています。

今回の共同実施者であるジオテクノロジーズは、このプロジェクトで区民が参加する調査の方法づくりと、アプリの試験的な活用を担当する会社です。

この取り組みの背景には、樹木の安全管理の問題があります。
目黒区は、全国で倒木や枝の落下による事故が増えていること、区内でも公園などで倒木が起きていることを挙げています(出典:目黒区「目黒グリーン・レジリエンスDX」発表)。
管理する樹木の数がとても多いため、効率よく維持管理することが課題になっています。
soraeによると、区は2026年5月から樹木の緊急点検を始めていて、限られた人員と時間で効率よく点検できる仕組みが必要とされていました(出典:sorae「衛星画像で街路樹の変化を把握 パスコと目黒区、区民の写真も活用する管理手法を検証」)。

植物の状態を衛星で調べる仕組みを簡単に説明します。
健康な葉は、光合成に使う赤い光をよく吸収し、人の目には見えない近赤外線を強く反射します。
そのため、いくつかの波長で撮影した衛星画像を比べると、植物がどれだけ活発に育っているかを数値で表せます。
この数値が「植生活性度」です。

何が発表されたか

目黒区とパスコは、2026年9月18日にデータとデジタル技術の活用に関する連携協定を結びました。
プロジェクトはこの協定に基づくもので、期間は2026年9月から2027年3月までです。

手順は次のとおりです。

  • パスコが時期の異なる衛星画像を解析し、植生活性度が下がる傾向にあるエリアを見つける
  • その結果を区が持つ樹木の情報や点検記録と照らし合わせる
  • 2026年10月ごろに区民が参加する調査を行い、アプリを通じて届いた写真も判断材料にする
  • 区の職員が現地で樹木の状態を確認し、取り組みの有効性を検証・評価する
  • 区の発表によると、2027年1〜3月に検証と評価を行う予定

役割分担は、パスコが衛星画像の取得・解析と点検結果との照合、ジオテクノロジーズが区民参加型の調査手法とアプリ、目黒区が実証の場と保有データ・点検結果の提供、そして現地確認です。
この事業は東京都の「令和8年度東京データプラットフォームデータ駆動型サービス創出事業」に採択されていて、目黒区が費用を負担することはありません。

宇宙業界にとっての意味

この実証で衛星画像が担うのは、木を1本ずつ診断することではありません。
区内全体から、優先して見に行く場所を選ぶ最初のふるい分けです。

衛星は同じ地域を繰り返し撮影できるため、時期の違う画像を比べて変化を追う作業に向いています。

一方で、最終的な判断は職員の現地確認で行う設計です。
衛星、住民からの情報、人による確認を役割ごとに組み合わせている点が、この実証の特徴です。

衛星データを使った事業では、データを撮ることだけでなく、自治体の業務の流れにどう組み込むかが問われます。
今回の実証では、衛星解析の結果を区の点検記録と照らし合わせ、その効果を費用対効果も含めて確かめます。

倒木や枝の落下への備えは、樹木を管理するほかの自治体にも共通する業務です。
そのため、費用対効果が数字で示されれば、衛星データを使った自治体向けサービスを評価する材料のひとつになります。

今後の注目点

最初の節目は、2026年10月ごろに予定されている区民参加型の調査です。
アプリを通じてどれだけの写真が集まり、衛星解析の結果とどう組み合わせるのかが注目されます。

2026年度は対象のエリアと樹木の種類を絞って検証するため、結果がそのまま区全体に当てはまるとは限りません。
2027年1〜3月の検証・評価で、衛星が見つけた場所と現地確認の結果がどれだけ一致したのか、点検の手間がどれだけ減ったのかが示されるかがポイントです。
そのうえで、2027年度以降はほかの地域やほかの種類の樹木への適用を検討し、ほかの自治体への展開を目指すとしています。

出典

ほしまる
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