米国の新興企業Star Catcherが2026年9月28日、宇宙で別の衛星に光で電力を送る試作機「Protostar(プロトスター)」の打ち上げ準備が整ったと発表しました。
Protostarは、SpaceXが複数の衛星をまとめて運ぶ相乗り打ち上げ「Transporter-18」に搭載されます。
Payloadによると、打ち上げは早ければ10月1日です。
軌道上では、Protostarが小型衛星を放出して追いかけながら、その衛星の太陽電池パネルに光を当てて電力を届けることを目指します。
3行で分かるポイント
- 宇宙で「電気を光に乗せて別の衛星へ届ける」技術の試作機が、10月にSpaceXのロケットで打ち上げられる予定です。
- 試作機は自分で小さな衛星を放出し、ケーブルでつながっていないその衛星の太陽電池に光を当てて発電させます。
- 会社はこれまでに地上試験と宇宙での追尾試験を済ませており、今回は仕組み全体を初めて宇宙で試す段階です。
まず押さえたい背景
Star Catcherは、2024年に米フロリダ州ジャクソンビルで設立された会社です(出典:Star Catcher「Star Catcher Prepares Orbital Power Beaming Demonstration For Launch」)。
衛星に電気を届ける「宇宙の送電網」を軌道上に作ることを目指しています。
衛星はふつう、自分の太陽電池パネルで発電した電気で動きます。
Star Catcherの構想では、「パワーノード」と呼ぶ電力供給用の衛星を別に打ち上げます。
パワーノードは、虫眼鏡のように光を集める薄くて軽いフレネルレンズで太陽光を集めます。
集めた光を、衛星の太陽電池が効率よく電気に変えられる波長に整えたうえで、ほかの衛星へ向けて送ります(出典:Star Catcher「Technology」)。
このように、電線を使わず光やマイクロ波に乗せて離れた場所へエネルギーを送る技術を「パワービーミング(電力伝送)」と呼びます。
受け取る側の衛星は、すでに積んでいる太陽電池パネルでその光を受けるので、機体を改造する必要がないと同社は説明しています。
同社は、この仕組みで衛星が得られる電力を最大10倍に増やせるとしています。
何が発表されたか
今回打ち上げるProtostarは、同社の技術一式を載せた初めての試作パワーノードです。
軌道上では、まずキューブサット(一辺10cmほどの箱を単位とする小型衛星)を放出します。
次にそのキューブサットを捉えて追いかけ続け、市販の太陽電池パネルに光を当てて、測定できる量の電力を届けます。
太陽光の収集、相手の衛星の捕捉と追尾、電力の送信という一連の流れを、宇宙で初めてまとめて試すことになります。
Payloadの記事によると、2機はケーブルでつながれておらず、どちらも時速約2万7,000kmで地球を回っています。
高速で飛ぶ相手に、狙いを外さず光を当て続ける必要があります。
共同創業者で最高経営責任者(CEO)のAndrew Rush氏は、今回の試作機を宇宙へ送ること自体が1つの成功だと述べています。
Star Catcherは、この段階に至るまでに2つの試験を済ませています。
1つ目は2025年の地上試験で、NASAのケネディ宇宙センターで市販の太陽電池パネルに1.1kWを超える電力を光で送りました。
同社はこれを、米国防高等研究計画局(DARPA)が持っていた光による電力伝送の記録を上回る世界記録としています。
2つ目は2025年末の「Sextant Alpha」ミッションで、軌道上で相手を精密に捉えて追いかけるソフトウェアの実証に成功しました。
資金面では、ベンチャーキャピタルから8,800万ドルを調達しています。
このうち6,500万ドルは、2026年5月に実施した「シリーズA」と呼ばれる初期の本格的な資金調達です(出典:Payload「Star Catcher’s Orbital Power-Beaming Demo is Ready for Launch」)。
加えて、米宇宙軍(U.S. Space Force)から6,000万ドルの資金支援(STRATFI)を受けています。
また、将来の電力供給について、衛星事業者などと合わせて10件の電力購入契約(将来この電力を買うという取り決め)を結んだと発表しています。
宇宙業界にとっての意味
衛星が使える電力は、基本的に自分が積んでいる太陽電池パネルの大きさで決まります。
Rush氏は、宇宙ビジネスを動かす主要な用途はいずれも電力に制約されていると述べています。
外から電力を受け取れれば、パネルを大きくしなくても使える電力を増やせるというのが同社の考え方です。
一方で、地上で記録を出したことと、軌道上で動く衛星どうしで送電できることは別の話です。
地上では送る側と受ける側の位置が固定されていますが、宇宙ではどちらも高速で動いています。
今回の実証は、この「動く相手に当て続ける」部分を含めて、仕組み全体が宇宙で機能するかを初めて確かめるものです。
電力購入契約はあくまで将来の購入の取り決めで、実際に電力を売る事業はまだ始まっていません。
今後の注目点
まず、Transporter-18が予定どおり打ち上げられ、Protostarがキューブサットを放出できるかが最初の節目です。
そのあと、キューブサットのパネルで実際にどれだけの電力が測定されたかが、技術の成熟度を判断する材料になります。
同社は、2020年代の終わりまでに軌道上の送電網を実用化することを目標に掲げています。
今回の結果が、複数の衛星に同時に電力を送る本格的なパワーノードの開発へどうつながるかも注目されます。
出典
- Star Catcher(PR Newswire配信)「Star Catcher Prepares Orbital Power Beaming Demonstration For Launch」
- Payload「Star Catcher’s Orbital Power-Beaming Demo is Ready for Launch」
- Star Catcher「Technology」
- Star Catcher「About」
- Star Catcher 公式サイト トップページ
- www.prnewswire.com「star-catcher-raises-65-million-to-build-the-first-power-grid-in-space-302769128.html」