ロケットで貨物を数百km先へ運ぶ機体を開発している米国のスタートアップHop Aeroが、1,100万ドルの資金調達を発表しました。
米国の宇宙業界メディアPayloadが2026年9月30日に報じました。
調達した資金は、実物大の機体「Rook 2」の開発にあてます。
初飛行の目標は2027年半ばです。
3行で分かるポイント
- Hop Aeroが1,100万ドルを集め、起業支援プログラムY Combinatorの2026年夏の回を終えた
- ロケットで貨物を打ち上げ、数百km先の地上へ直接届ける機体を開発している
- 最大の技術課題である「狙った場所に荷物を壊さずに着陸させること」は、まだ解決していない
まず押さえたい背景
Hop Aeroは2024年に設立された米国企業で、オクラホマシティ近郊に本社と試験拠点を置いています(出典:Payload「Hop Aero Wants to Deliver Cargo via Rocket」)。
ロケットで貨物を運ぶ機体を開発していて、公式サイトでは「紛争下の物流のためのロケット貨物」を掲げています。
CEOのMatija Milenovic氏と、元海兵隊員でCTOのJacob Balaj氏が共同で創業しました。
同社の機体は準軌道(サブオービタル)飛行をします。
これは、地球を回り続ける速さには届かないまま、ボールを遠くへ投げたときのように放物線を描いて地上へ戻る飛行です。
地球を周回する人工衛星とは違い、打ち上げた場所から離れた地点に降りてくることになります。
Hop Aeroはこの性質を使い、2地点のあいだで荷物を運ぼうとしています(ポイント・ツー・ポイント輸送)。
計画中の最初の製品「Rook Two」は、高さ約6m、貨物250kgを約750km先まで運ぶ設計です。
標準的な長さ12mの輸送コンテナから打ち上げ、整備されていない地面にも着陸できることを目指しています。
今回の資金を出したのは次の2者です。
Y Combinatorは、選ばれたスタートアップに3か月間の支援プログラムを年4回開き、あわせて出資もする起業支援組織です(出典:Y Combinator「About」)。
Initialized Capitalは、ニューヨークとサンフランシスコを拠点とし、創業初期の企業に投資するベンチャーキャピタルです。
何が発表されたか
Hop Aeroは、Y Combinatorの2026年夏の回に参加したあと、あわせて1,100万ドルの資金調達を発表しました(出典:Payload「Exclusive: Hop Aero Raises $11M for Suborbital Point-to-Point Delivery」)。
プログラム参加前に集めた資金と参加中に集めた資金を合わせた額で、主導したのはInitialized Capitalです。
いずれもSAFEという形式で集めています。
SAFEは、投資家がお金を先に払い、会社の株式を受け取る条件は後の資金調達の時点で決まる契約です。
Milenovic氏は、当初の計画より多く集まったと述べています。
プログラム期間中の試験も進みました。
自社の設計ソフト「hopOS」で設計したエンジンを、金属3Dプリンターで製造しました。
このエンジンでオクラホマ州のInfinity One Oklahoma Spaceportで燃焼試験を4回行い、エンジンの故障はありませんでした。
続いて半分の大きさの試作機に組み込み、機体を地上に固定したまま燃料系や部品を動かす燃焼試験も実施しました。
荷物の放出も地上で実演しています。
貨物室からレールを使ってドローン4機を送り出す仕組みで、防衛用途を想定したものです。
Milenovic氏によると、需要がいちばん大きいのは、自律して動くドローンの群れをロケットに積み、数百マイル先の紛争地域へ送り込んで放つ使い方です。
宇宙業界にとっての意味
ロケットで貨物を地点間輸送する構想は以前からありますが、Payloadは、大気圏へ再び入ったあと荷物を壊さず正確な場所に降ろすことが、これまで実現を阻んできた課題だと伝えています。
音速を大きく上回る速さで大気に突入するため、減速と狙った地点への誘導を両方こなす必要があります。
Hop Aeroのチームも、この着陸の問題はまだ解決していないと認めています。
今回の試験で確かめたのはエンジンと荷物の放出で、着陸の精度ではありません。
一方で、資金の裏づけも増えています。
Hop Aeroは2025年9月、米空軍研究所(AFRL)から125万ドルの研究開発資金を受けています。
これは、米国の中小企業の技術開発を連邦政府機関が株式を取らずに支援するSBIR(中小企業技術革新研究)制度によるものです(出典:SBIR.gov「About」)。
政府の研究資金に続いて民間の投資家からも資金が集まったことで、防衛向けの物流という用途に投資が向かっている様子がうかがえます。
今後の注目点
次の節目は、実物大の機体Rook 2の初飛行で、目標は2027年半ばです。
Hop Aeroはオクラホマ州の宇宙港で施設を広げていて、大型の機体に対応するためのコンクリート打設を2026年末までに予定しています。
今後確認したいのは、着陸の精度をどう実証するかです。
地上試験でエンジンと荷物の放出は確かめられましたが、実際に飛ばして狙った地点へ降ろせるかは、飛行試験の結果を待つことになります。
Milenovic氏は、次の資金調達(シリーズA)に向けて有利な立場にあると述べています。