Satlytが800万ドルを調達し衛星上でAIを動かすソフトを拡大

衛星に載ったコンピューターでAIを動かすソフトウェアを開発するスタートアップのSatlyt(サトライト)が、2026年10月1日にシード(創業初期)段階の資金調達で800万ドルを集めたと発表しました。
資金は技術者の採用や研究開発にあてます。
また、他社が運用する衛星へ、同社のソフトの導入を広げることにも使う計画です。
同社は、複数の衛星の計算能力をつないで宇宙に「仮想的なデータセンター」をつくる構想を掲げています。

3行で分かるポイント

  • 衛星の上でAIを動かすソフトを作るSatlytが、800万ドルの資金を集めました
  • 衛星を自社で作るのではなく、他社の衛星に載ったコンピューターをソフトで活用する事業です
  • 資金は採用と研究開発、他社の衛星への導入拡大にあてられます
目次

まず押さえたい背景

Satlytは、米カリフォルニア州サニーベールとケニアのナイロビの2か所に本拠を置く、2024年創業のスタートアップです(出典:Payload「Satlyt Raises $8M Seed to Expand Its Virtual ODC Network」)。
創業者でCEO(最高経営責任者)のラマ・アフロ氏は、SpaceXとGoogleで働いた経歴を持ちます。
衛星を運用する事業者が、集めたデータを衛星の上で処理したり、AIを動かしたりできるようにするソフトウェアを開発しています(出典:Space in Africa「Satlyt Raises USD 8 Million Seed to Turn Satellites into Virtual AI Data Centers」)。

このようなソフトが求められる背景には、衛星が集めるデータが多すぎて、そのすべてを地上へ効率よく送れないという課題があります。
地上へデータを送ることを「ダウンリンク」といいます。
衛星の上でデータを処理し、必要な結果だけを送れば、通信で送る量を減らせます。
データが生まれる場所の近くで計算するこの考え方は「エッジコンピューティング」と呼ばれます。

宇宙では、軌道上にデータセンターを置く「軌道上データセンター(ODC)」の構想も動いています。
Payloadは、ODCの多くは新しい工学的な挑戦が必要なハードウェア中心の構想だと説明しています。
これに対してSatlytは、すでに飛んでいる衛星のコンピューターを束ねる「仮想ODC」を目指しています。

何が発表されたか

今回の調達額は800万ドルで、米国の投資会社non sibi venturesが主導しました。
TLCOM、Antler、Launch Africa Venturesなど複数の投資会社も参加しています。
アフロ氏はPayloadに対し、これで総調達額は1,000万ドルを大きく超えたと話しています。

Satlytの仕組みでは、パートナー企業の衛星にAIの推論機能を組み込みます。
推論とは、学習を終えたAIモデルに新しいデータを入力し、判定や処理の結果を出させることです。
ソフトは打ち上げ前に書き込むこともできますし、飛行中の衛星へ送って入れることもできます。

これまでの実績として、同社はNASAのSTTRという制度で400万ドルの契約を獲得しています。
STTRは、中小企業と研究機関が組んで新しい技術を開発・事業化するのを支援するNASAの制度です(出典:NASA「NASA SBIR/STTR Program」)。
契約の内容は、通信の遅延や途切れを前提にした、宇宙でのエッジ処理向け通信手順(プロトコル)を設計することです。

また、宇宙空間でGoogleのAIモデル「Gemma」を使った推論も実証しています。
この実証では画像を処理し、暗号化して地上へ送れる形の出力を作りました。
意図的に入れた複数のソフトウェアの不具合も診断しています。

さらにSatlytは、xOrbitaとSymphony Spaceの2社と覚書を結びました。
覚書は、正式な契約の前に協力の方向性を確認する取り決めです。
xOrbitaは、衛星の接近運用や衝突回避の軌道変更を最適化するソフトを開発しています。
Symphony Spaceは、複数の利用者の機器を一緒に載せられるモジュール型の宇宙プラットフォーム「Adagio」を開発しています。
3社は、ソフトウェアで機能を決める宇宙システムの設計を一緒に検討します。

宇宙業界にとっての意味

衛星の上でAIを動かす取り組みは、自社で衛星を作る会社も進めています。
TechCrunchによると、Satlytは宇宙機を自社で作らず、既存の宇宙機に載った計算機をソフトで使いやすくする道を選んでいます。
アフロ氏は自社のソフトを、裏側の機材を気にせずに複雑なソフトを動かせるVMwareやSnowflakeの製品になぞらえています。

衛星事業者にとっては、データを集めた場所の近くで処理できるという利点があります。
アプリを作る開発者にとっては、自分のソフトを軌道上で動かす手段になります。
ただし、異なる会社が運用する衛星の計算能力をまとめて使う仕組みが、事業として成り立つかは今後の展開次第です。
Satlytの構想が実現するかは、衛星事業者がどこまで同社のソフトを導入するかにかかっています。

今後の注目点

Space in Africaによると、Satlytは、SpaceXの相乗り打ち上げ「Transporter-18」で2つのアプリを宇宙へ送る計画です。
1つはNASAのSTTR契約向けの研究用ソフトで、もう1つは商用の画像処理ソフトです。

TechCrunchによると、同社は次の段階として、2機の衛星にまたがる共通の計算システムを2027年につくることを目指しています。
注目点は、ソフトの導入先の衛星がどれだけ増えるか、覚書を結んだ2社との検討が正式な協業に進むかの2つです。

ほしまる

2機の衛星にまたがる計算って、通信が途切れたらどうするんだろう? NASAの契約で設計している、遅延や途切れを前提にした通信手順がそこに関わってきそうだね。

出典

  • Payload「Satlyt Raises $8M Seed to Expand Its Virtual ODC Network」
  • Space in Africa「Satlyt Raises USD 8 Million Seed to Turn Satellites into Virtual AI Data Centers」 https://spaceinafrica.com/2026/10/01/satlyt-raises-usd-8-million-seed-to-turn-satellites-into-virtual-ai-data-centers/
  • TechCrunch「Satlyt, founded by a former Google and SpaceX product manager, raises $8M to run AI on satellites」 https://techcrunch.com/2026/10/01/satlyt-founded-by-a-former-google-and-spacex-product-manager-raises-8m-to-run-ai-on-satellites/
  • NASA「NASA SBIR/STTR Program」 https://www.nasa.gov/sbir_sttr/
  • xOrbita 公式サイト
  • Symphony Space 公式サイト
ほしまる
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