NASAは2026年10月2日、有人宇宙飛行の管制を率いる「フライトディレクター」の募集を始めたと発表しました。
勤務地はテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターです。
応募の締め切りは10月12日で、NASAは2026年末までに採用者を発表する予定です。
3行で分かるポイント
- NASAが、宇宙飛行士の乗る宇宙船の運用を地上から率いる責任者を新たに募集しています。
- 管制の仕事をした経験は必須ではありません。緊張の高い現場で、時間に追われながら判断してきた職業経験が求められます。
- 応募できるのはアメリカ市民だけで、締め切りは10月12日、採用者は年内に発表される予定です。
まず押さえたい背景
NASA(アメリカ航空宇宙局)はアメリカ政府の宇宙機関です。
その拠点のひとつがテキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターで、有人宇宙飛行の地上管制を担う「ミッション管制センター」が置かれています。
ミッション管制センターには24時間365日、フライトコントローラー(管制官)が常駐しています。
国際宇宙ステーション(ISS)と、そこに滞在する宇宙飛行士の状態を見守り続けています(出典:NASA「JSC Mission Control Center」)。
ISSは、地球の周りを回りながら宇宙飛行士が長期間滞在して実験などを行う施設です。
月へ向かうアルテミス計画のミッションでも、往復の飛行の監督はミッション管制センターが担います。
管制室では、管制官がそれぞれ専門分野を受け持ちます。
宇宙飛行士と直接交信する担当、船内の空気や温度を管理する環境・熱系統の担当、軌道や飛行経路を計算する担当などです。
その全体を指揮するのがフライトディレクターです。
飛行中に機器の故障などが起きたとき、どう対応するかを各分野の情報を集めて最終的に決める立場にあります。
何が発表されたか
NASAの発表によると、フライトディレクターは管制官、宇宙飛行士、民間企業や国際パートナーのチームを率いて、ミッションをリアルタイムで運用します。
打ち上げ前には技術部門や安全部門と協力し、運用の方針を宇宙船の設計やミッションの目的とすり合わせます(出典:NASA「NASA Opens Applications for Next Class of Flight Directors」)。
担当するのはISSへのミッション、アルテミス計画の月ミッション、そして将来の火星ミッションです。
応募条件は次のとおりです。
- アメリカ市民であること
- 認定された教育機関で、工学・生物科学・物理科学・コンピューターサイエンス・数学のいずれかの学士号を取得していること
- ストレスやリスクの高い環境で、時間に追われながら判断を下してきた相当の職業経験があること
これまでのフライトディレクターには管制官出身者が多いものの、管制官の経験は応募の必須条件ではありません。
連邦政府の求人サイトUSAJOBSの募集要項では、職位はGS-14〜GS-15(アメリカ連邦政府職員の給与等級)で、年収は14万5,052〜19万7,200ドルです。
採用人数は「若干名」とされ、職務には機密情報の取り扱い資格「Secret」が必要です(出典:USAJOBS「Flight Director, AST, Mission Operations Integration (Direct Hire)」)。
応募には2ページまでの履歴書、大学の成績証明書、質問票の提出が求められます。
採用後は、宇宙船の全システムに関する技術教育と大量のシミュレーション訓練、先輩の指導を受けながらの実務訓練を受けます。
最初の認定までの期間は最長16か月です(出典:NASA「Flight Director Application FAQ」)。
宇宙業界にとっての意味
NASAのチーフ・フライトディレクターを務めるエミリー・ネルソン氏は、ISSの運用を続けながらアルテミス計画で有人宇宙飛行の次の段階を築いている時期だと述べています。
そのうえで、これらの目標の達成には、全体をまとめる力に優れたフライトディレクターが必要だと強調しました。
今回の募集要項からは、この職に求められる能力の中身が読み取れます。
USAJOBSに載っている職務は、飛行運用チームの統括、乗員と宇宙船の安全を守るための運用ルール(フライトルール)づくり、技術検討会の議長、緊急事態への対応、飛行準備が整ったことの認定などです。
上位のGS-15では、民間企業や国際パートナーなどと協力体制を築き、連携した経験も条件に入っています。
宇宙船を操縦する宇宙飛行士とは別に、地上側で判断と調整を担う専門職があることを示す募集です。
今後の注目点
応募の受付は10月12日に締め切られ、NASAは2026年末までに採用者を発表する予定です。
採用された人は最長16か月の訓練を経て、初めての認定を受けます。
ISS、アルテミス計画、火星と担当が広がっていくなかで、管制官以外の経歴を持つ人がどれだけ選ばれるかが注目点です。
なお、応募資格はアメリカ市民に限られるため、日本国籍の人はこの募集に応募できません。