BULLの宇宙ごみ化防止装置に文科省が2億6,000万円を追加配分

宇都宮市の宇宙スタートアップBULLは2026年10月2日、文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」で、2億6,000万円の追加配分が決まったと発表しました。
対象は、役目を終えた衛星などを軌道から早く降ろし、宇宙ごみ(スペースデブリ)にしないための装置の開発・実証です。
同じ日、文部科学省は、このテーマの審査で対象の3件すべてを追加配分の対象にしたと公表しています。

3行で分かるポイント

  • 栃木県のスタートアップBULLが、国の支援事業で2億6,000万円の追加資金を得ることになりました。
  • 資金は、使い終えた衛星などに膜を広げさせ、空気の抵抗で軌道から早く降ろす装置「HORN」の開発に使われます。
  • BULLは今後、宇宙での追加の試験と、量産に向けた準備を進めるとしています。
目次

まず押さえたい背景

株式会社BULLは、栃木県宇都宮市に本社を置く2022年11月設立の会社で、宇宙デブリ対策事業と軌道利活用関連事業を手がけています。
スペースデブリとは、運用を終えた衛星やロケットの部品のように、役目を終えたあとも地球の周りを回り続ける物体のことです。

BULLが開発しているHORNは、PMD(Post Mission Disposal)と呼ばれる種類の装置です。
PMDは「任務を終えたあとの後始末」を指し、HORNは役割を終えたロケットや衛星などを速やかに軌道から離脱させる装置と説明されています。

仕組みは、扇状に広がる膜を展開して大気抵抗を増やすというものです。
地球を回る衛星の高度でもごくわずかに大気が残っており、受ける面積が大きいほど速度が落ち、高度が下がっていきます。
BULLはHORNの最大設計面積を50平方メートルとし、膜を広げるタイプの装置としては世界最大級だとしています。

SBIRフェーズ3は、スタートアップなどが持つ先端技術の社会実装を促すための文部科学省の補助事業です。
宇宙分野では「スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証」がテーマのひとつになっています。

事業は3つの段階(事業フェーズ)に分かれ、次の段階へ進むかどうかや予算は、外部有識者によるステージゲート審査で判断されます。
ステージゲート審査とは、開発の節目ごとに成果を審査し、続けて資金を出すかを決める仕組みのことです。

何が発表されたか

BULLによると、追加配分の対象は課題「衛星等のデブリ化を防止する軌道離脱促進装置の開発・実証」で、補助金として2億6,000万円が配分されます。
財源は令和4年度補正予算で、今回の配分は事業フェーズ2の期間(2027年3月末まで)に充てられます。

文部科学省は、デブリ低減テーマのステージゲート審査結果を令和8年(2026年)10月2日付で公表しました。
書面審査とプレゼンテーション審査を行い、審査対象3件のすべてについて追加配分を決めています。

BULLは2025年6月、同じ事業で事業フェーズ1からフェーズ2への移行が決まったと発表していました。
その際、フェーズ2の期間(2025年7月〜2027年3月末)における同社への交付額の上限は13億1,000万円とされています。

今回の追加配分の前段には軌道上実証があります。
HORNの実証機2機(HORN-L、HORN-R)は、2026年6月12日に種子島から打ち上げられたH3ロケット6号機に搭載されました。

  • HORN-Lの膜面積:約20平方メートル
  • HORN-Rの膜面積:約10平方メートル

HORN-Lは2026年8月27日(UTC)に大気圏へ再突入し、打ち上げから約76日で軌道離脱を終えました。
その4日前の撮影で、膜が設計どおりに展開した状態を保っていたことも確認されています。
BULLは、膜の展開状態の確認をフルサクセス(実証で目標とした最上位の成果)の基準としており、これを達成したと発表しています。

宇藤恭士CEOは、今回の決定をHORNの技術開発と実証の取り組みが評価された結果と受け止め、追加の軌道上実証と、社会実装に向けた量産・内製化を加速するとコメントしています。

宇宙業界にとっての意味

使い終えた衛星を軌道に残さずに降ろす技術は、文部科学省がSBIRフェーズ3の宇宙分野で独立したテーマとして資金を出している分野です。
今回の審査では、このテーマの3件すべてに追加配分が決まりました。
国の事業としてデブリ低減技術の開発・実証が続くことになります。

BULLにとっては、宇宙での実証で示した結果のあとに、次の開発段階の資金が積み増された形です。
HORNは推進剤を使わず、膜と大気抵抗で高度を下げる方式です。
実証では約20平方メートルの膜で、打ち上げから約76日での再突入が確認されました。
一方、実証で使った膜面積は、最大設計面積の50平方メートルより小さいものでした。

今後の注目点

BULLは、追加の軌道上実証と、量産・内製化を加速するとしています。
実証の時期や対象となる機体は、まだ発表されていません。

事業フェーズ2の期間は2027年3月末までです。
最終段階の事業フェーズ3に進むかどうかは、予算額も含めて今後のステージゲート審査で判断されます。
より大きな膜での実証や、他社の衛星・ロケットへの搭載がどう進むかが、次の確認点になります。

ほしまる

20平方メートルの膜で約76日なら、最大の50平方メートルまで広げたときはどこまで早く降ろせるんだろう?次の実証で何を確かめるのかが気になるよ。

出典

ほしまる
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