Amateras Spaceが国産月面宇宙服へ産学連携の枠組みを発足

宇宙服を開発するスタートアップのAmateras Space株式会社は2026年9月30日、「次世代宇宙服コンソーシアム」を正式に発足させました。
コンソーシアムには、大学の研究者とダイビングスーツメーカー、試作の専門会社が加わります。

2035年までに、月面での船外活動に使う国産の宇宙服を実現することを目標にしています(出典:PR TIMES「Amateras Space、国産月面宇宙服の実現に向けた「次世代宇宙服コンソーシアム」を正式発足」)。

3行で分かるポイント

  • 宇宙服スタートアップが、大学や企業と組んで月面用の国産宇宙服を開発する枠組みを立ち上げた
  • ダイビングスーツの製造技術や試作技術、宇宙医学の研究をひとつの体制に集める
  • 2035年の実現を目標にし、技術はまず地上の防災・消防装備などへの応用も検討する
目次

まず押さえたい背景

Amateras Spaceは2024年に設立された、東京都千代田区に本社を置く会社です。
次世代宇宙服をはじめとする、人が宇宙で活動するための基盤技術の研究開発と社会実装を事業にしています。
今回のコンソーシアムでは、構想の策定とシステム統合を担い、全体の取りまとめ役(幹事機関・事務局)を務めます。

参画企業のひとつ、株式会社モビーディックは、宮城県石巻市に本社と工場を置き、ダイビング用のウェットスーツやドライスーツを製造しています。
ドライスーツは、服の中に水が入らないようにして体を乾いた状態に保つ潜水服です。

もうひとつの参画企業、株式会社クロスエフェクトは、京都市伏見区に本社を置く試作の専門会社です。
様々な業界の試作プロジェクトを請け負い、CTの画像をもとに心臓の立体模型を作った実績があります(出典:厚生労働省「若者雇用促進総合サイト」)。

宇宙服の開発で難しいのは、身を守ることと動きやすさの両立です。
真空の宇宙では、服の中を空気で満たして体に圧力をかけておく必要があります。
すると服は風船のように膨らみ、関節を曲げるにも力が要ります。

一方で、宇宙船の中より低い気圧の服に移ると、体に溶けていた窒素が気泡になって痛みなどを起こす「減圧症」のリスクがあります。
ダイバーが急に浮上したときに起きる症状と同じ仕組みです。

何が発表されたか

コンソーシアムは「日本発の次世代宇宙服の実現を目指す産学連携の枠組み」と位置づけられています。
研究開発の中心を担うのは、岐阜医療科学大学で生理学と宇宙医学を専門とする田中邦彦教授です。

田中教授は2008年の宇宙利用シンポジウムで、船外活動用宇宙服向けに伸び縮みする素材のグローブを開発し、その有用性を検証した研究を共著者とともに報告しています(出典:JAXAリポジトリ「船外活動宇宙服用弾性グローブの開発と有用性検証」)。

役割分担は次のとおりです。
モビーディックは、体を守りながら自由に動ける服を作るドライスーツの知見を宇宙服に応用します。
クロスエフェクトは、設計と試作の支援、高精度の3Dプリンティングで開発を進めます。

主な活動は5つです。

  1. 有人宇宙機の共通インテリジェンス基盤「ONZO(オンゾ)」の開発
  2. 宇宙飛行士の健康とパフォーマンスを管理する技術の開発
  3. 減圧リスクの低減と動きやすさを両立する宇宙服の設計・試作・評価
  4. 服の中の空気を保つ「気密層」、グローブ、関節の機構などの要素技術の開発
  5. ヘルスケア、防災、潜水・消防装備への応用の検討

ONZOは、宇宙飛行士の体の状態や動きの情報と、周りの環境や機器の状態の情報をまとめてAIで分析するシステムです。
健康状態の把握、危険の前触れの検知、運用中の判断を支援することを狙っています。

宇宙業界にとっての意味

今回の発表は、宇宙服を完成させたという発表ではなく、開発の体制ができたという段階のニュースです。
この体制では、宇宙医学の研究、潜水服の製造、試作という異なる分野の参画者が、宇宙服の別々の要素を担当します。
Amateras Spaceの蓮見大聖代表は、日本には素材や縫製、精密加工の技術があると述べ、それをAIによる情報解析と組み合わせて社会実装を進める方針を示しています(出典:財経新聞「Amateras Space、国産月面宇宙服の実現に向けた「次世代宇宙服コンソーシアム」を正式発足」)。

宇宙向けに開発した技術を、ヘルスケアや防災、消防の装備にも応用すると計画している点も特徴です。
宇宙と地上の両方で使える技術にすることで、月面での利用より前に、地上で技術を使える場面を作ろうとしています。

今後の注目点

コンソーシアムは、素材・繊維・縫製、熱制御・生命維持、センシング、AI・データ解析、システム統合、試験・評価の分野で、参加する企業や研究機関を審査制で募集しています。
今後は、どの分野にどんな参加者が加わるかが注目点のひとつです。

宇宙服の設計・試作・評価の具体的な日程や、2035年の目標に向けた途中の節目がいつ示されるかも、確認していくべき点です。
地上装備への応用の検討が、具体的な製品の開発や試験に進むかどうかも注目されます。

出典

ほしまる
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