NASAは2026年10月1日、機材や物品の管理、輸送、整備といった物流支援業務を担う会社として16社を選んだと発表しました。
契約の総額は14億ドルです。
NASAは、業務の要件をそろえ、報告を改善し、費用と資源の管理を効率化するための契約だとしています。
3行で分かるポイント
- NASAが、機材の管理や輸送、整備などの裏方業務を任せる会社として16社を選んだ
- 総額14億ドルの「枠」をあらかじめ決めておき、必要なときに仕事を発注する形の契約
- 発注できる期間は2031年9月30日までの5年間が基本で、延長の選択肢もある
まず押さえたい背景
ロケットの打ち上げや探査機の開発には、表に出にくい裏方の仕事が欠かせません。
試験装置や部品をどこに何台持っているかを管理し、拠点間で運び、古くなった物を処分し、壊れた機器を修理する、といった作業です。
NASAはこれらを「エンタープライズ・ロジスティクス・サポート・サービス」と呼び、組織全体の物流支援としてまとめて外部に委託します。
今回の契約は「ブランケット購買契約(BPA)」と呼ばれる形です。
これは、価格の決め方や業務の範囲を先に取り決めておき、実際の仕事は必要になった時点で個別に発注する、いわば「発注の枠」を作る契約です。
毎回ゼロから入札をやり直さずに済むのが利点です。
この枠は、GSA(米国一般調達局)が用意する「OASIS+(ワン・アクイジション・ソリューション・フォー・インテグレーテッド・サービシズ・プラス)」という仕組みの上に作られています。
OASIS+は、連邦政府機関が共通で使える複数社契約の集まりで、IT以外の専門サービスを幅広く扱います(出典:GSA「About OASIS+」)。
選ばれた16社には、LeidosやTetra Techが含まれます。
Leidosは政府や民間の顧客向けに、防衛、医療、デジタル基盤とサイバーセキュリティ、エネルギー、ミッション用ソフトウェアなどの事業を手がける会社で、防衛分野では宇宙・航空・海上・地上の装備も開発しています(出典:Leidos「Company」)。
Tetra Techは水、環境、持続可能なインフラの分野で技術・エンジニアリングサービスを提供する会社で、125か国に500の拠点を持つとしています(出典:Tetra Tech「About Us」)。
何が発表されたか
NASAの発表によると、契約の総額は14億ドルで、対象となる業務は次のとおりです(出典:NASA「NASA Awards Enterprise Logistics Support Services Agreements」)。
機材・物品の管理、輸送、廃棄、製品のサポート、飛行用ハードウェア(実際に宇宙へ打ち上げる機器)の支援業務、機材の保守と修理、輸出管理、移転作業、それに飛行用ハードウェアやその他の資材の購入です。
輸出管理とは、軍事転用されうる技術や部品を海外へ持ち出す際に、法律で定められた手続きや審査を守るための業務です。
契約の種類は、確定固定価格(作業の内容と価格を先に決める方式)、時間・材料費(かかった作業時間と材料費で支払う方式)、労働時間(作業時間に応じて支払う方式)、それらの組み合わせの中から、NASAが発注ごとに選べます。
発注できる期間は、2026年10月1日から2031年9月30日までの5年間が基本です。
そのあと1年ずつの延長が3回まで、さらに6か月の延長が選択肢として用意されています。
選ばれた16社は、Akima Facilities Operations、Akima Global Logistics、Alutiiq Operations Services、ASR International、ASRC Federal Administrative Services、ASRC Federal Professional Services、IAP Worldwide Services、KBR Wyle Services、Leidos、LogiCore、Prime Response、S&K Applied Solutions、TechTrans International、Tetra Tech、TRAX International、Yulista Support Servicesです。
NASAは10月2日に、社名の表記を明確にするため発表文を更新しています。
宇宙業界にとっての意味
宇宙開発のニュースはロケットや衛星そのものに目が向きがちですが、組織を動かすには機材の管理や輸送、修理といった支援業務が常に発生します。
今回の契約は、その支援業務をNASA全体で共通の枠にまとめるものです。
NASAが掲げる目的は、要件の標準化、報告の改善、費用と資源の管理の効率化の3点です。
選ばれた16社にとっては、5年以上にわたってNASAから仕事を受けられる立場を得たことになります。
ただし、ブランケット購買契約は発注の枠を決める仕組みなので、14億ドルがそのまま各社の売上になるわけではありません。
各社が実際にどれだけの仕事を受けるかは、今後の個別発注で決まります。
また、宇宙機関の仕事は宇宙機を設計・製造する会社だけのものではありません。
今回の16社には、水や環境のインフラを主な事業とするTetra Techのように、宇宙以外の分野を本業とする会社も入っています。
今後の注目点
注目点は、この枠の中で実際にどの業務がどの会社に発注されるかです。
飛行用ハードウェアの支援や輸出管理のように、宇宙機関ならではの専門性が要る業務がどの会社に任されるかは、各社の今後の事業展開に関わります。
もうひとつは、NASAが目的に掲げた要件の標準化や費用管理の効率化が、実際の運用でどう進むかです。
基本の発注期間は2031年9月30日までで、その後に延長の選択肢が使われるかどうかも、契約の評価を示す材料になります。
出典
- NASA「NASA Awards Enterprise Logistics Support Services Agreements」
- GSA「About OASIS+」
- Leidos「Company」
- Tetra Tech「About Us」