ロケットラボがNASAの火星通信網契約でブルーオリジン選定に抗議

アメリカの宇宙企業ロケットラボは2026年9月11日、NASAが火星の通信中継を担う探査機の開発事業者にブルーオリジンを選んだ決定について、連邦政府の契約をめぐる異議を審査する機関GAO(Government Accountability Office)へ正式な抗議を申し立てたと公表しました。
この契約は、最大で約7億ドルにのぼる規模です。
ロケットラボは、NASAの選定が議会の定めた参加資格の基準と整合していないように見えること、自社の技術提案書に対する審査に誤りがあったことを主張しています。

3行で分かるポイント

  • NASAは、火星と地球を結ぶ新しい通信中継の探査機をつくる相手にブルーオリジンを選び、契約額は最大で約7億ドルです。
  • 受注を逃したロケットラボが、選定の手続きに問題があるとして、連邦政府の契約の異議を審査する機関GAOへ抗議を申し立てました。
  • GAOは抗議を受け取ってから100日以内に判断を示す手順を公表していて、その判断が次の節目になります。
目次

まず押さえたい背景

ロケットラボは、アメリカ・カリフォルニア州ロングビーチに本社を置く宇宙企業です。
主力は小型ロケット「エレクトロン」で、NASAの説明では全長約18mの2段式ロケットです。
機体には炭素繊維の複合材を使い、3Dプリンターで製造した電動ポンプ式のロケットエンジンを搭載しています。
発射場はニュージーランドのマヒアにあり、ロケットの打ち上げに加えて人工衛星や探査機そのものの製造も手がけています。

ブルーオリジンは、アメリカ・ワシントン州ケントに本社を置く宇宙企業です。
大型ロケット「ニューグレン」を開発しているほか、NASAからは月着陸船「ブルームーン マーク1」で探査車VIPERを月の南極域へ運ぶ1億9,000万ドルの契約を受けています。

今回の契約の対象である「火星中継ネットワーク」は、火星探査を支える通信の仕組みです。
火星の地表で活動する探査車が撮った画像や観測データは、そのまま地球へ送られているわけではありません。
多くは上空を回る周回衛星がいったん受け取り、地球へ中継しています。
探査車には大きなアンテナと大きな電力を積みにくい一方、周回衛星は大きな無線機と太陽電池を持ち、地球と向き合える時間も長く取れるためです。

NASAによると、この中継網は4機の周回衛星で構成されています。
NASAのマーズ・オデッセイ(2001年から周回)とマーズ・リコネッサンス・オービター(2005年から)、ESAのマーズ・エクスプレス(2003年から)とExoMarsトレース・ガス・オービター(2016年から)です。
探査車と周回衛星の間の通信速度は、毎秒2メガビットに達します。

何が発表されたか

NASAは2026年9月、火星の新しい通信中継網を担う事業者としてブルーオリジンを選んだと発表しました。
契約は固定価格型で、最大で約7億ドルです。
固定価格型は、決めた作業に対してあらかじめ定めた金額を支払う方式で、費用が想定を超えても原則として受注側が負担します。

ブルーオリジンは、通信用探査機の設計・開発・組み立て・打ち上げ・運用までを一括して担い、2028年12月31日までにNASAへ引き渡します。
火星での運用開始は2030年が見込まれています。

この事業はNASAの宇宙通信・航法プログラムが所管し、メリーランド州グリーンベルトにあるゴダード宇宙飛行センターが契約を管理します。
提案の募集が始まったのは2026年5月です。

ロケットラボは9月11日、この選定に対してGAOへ抗議を申し立てたことを明らかにしました。
同社は、NASAの選定が議会の定めた参加資格の基準と整合していないように見えると述べています。
さらに、自社の技術提案書に対するNASAの審査は一貫性を欠き、誤った主張と結論を含んでいたとも主張しています(出典: Space.com「Rocket Lab protests NASA’s decision to award Blue Origin $700 million Mars orbiter contract」)。

GAOは、連邦政府の入札条件や発注先の決定に対する異議を審査する独立した機関です。
公表している手順では、抗議から30日で発注した省庁が報告書を出し、40日で抗議した側が意見を提出し、100日以内に判断が示されます。

宇宙業界にとっての意味

いま火星の中継を担っている周回衛星のうち、NASAの2機は2001年と2005年から周回を続けています。
探査車が地球へデータを届ける経路がこれらに支えられている以上、中継網をどう更新するかは、火星探査の計画そのものに関わる論点です。
NASAは今回の選定を、輸送や通信といった基盤を民間企業から調達し、自らは探査と科学的発見に力を集中するという方針の一環だと説明しています。

深宇宙で長期間動き続ける探査機を設計・製造・運用できる企業は多くありません。
1件の大型契約がどちらに渡るかは、各社の事業計画に直接響きます。

抗議という手段自体は、この分野で前例があります。
2021年には、NASAがアルテミス計画の有人月着陸船をSpaceX1社に発注した決定に対してブルーオリジンなどが抗議し、GAOは同年7月30日にこれを退けました。
今回は、そのときと立場が入れ替わった形です。

今後の注目点

まず、GAOがどのような判断を示すかが焦点になります。
GAOの手順では、抗議の提出から100日以内に判断が出ます。

次に、2028年12月31日というNASAへの引き渡し期限と、2030年の火星での運用開始という日程が、選定をめぐる争いの決着後にどう扱われるかも確認したい点です。
基盤となる通信網の調達をNASAがどう進めるかは、今後の火星探査の段取りにも関わってきます。

ほしまる

ぼくが太陽系の外側を旅していたころ、送った電波は地球に着くころにはか細くて、大きなアンテナに拾ってもらうのがやっとだったんだ。

出典

ほしまる
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