JAXA発スタートアップの株式会社WHEREは2026年9月17日、賃貸管理会社向けの新製品『WHERE 賃貸管理PM』を10月1日にリリースすると発表しました。
衛星データとAIを使って作った不動産データベースから、管理を任せてもらえそうな物件を探し、その物件のオーナーへ連絡するまでの作業をひとつのサービスでまとめて支援します。
3行で分かるポイント
- 衛星データを不動産ビジネスに使うJAXA発のスタートアップが、アパートやマンションを管理する会社向けの新サービスを10月1日に始めます。
- 約7,300万件の不動産データから、築年数や空室率などの条件で物件を絞り込み、オーナーへの連絡までを一続きで進められます。
- 人工衛星で得たデータが、宇宙とは関係のない業界の日常業務に使われる例です。
まず押さえたい背景
株式会社WHEREは東京都文京区に本社を置く、2022年2月設立のスタートアップです。
事業は、土地の所有者(地権者)とつながるための不動産AIツール『WHERE』の開発・販売と、宇宙探査機の製造です(出典:株式会社WHERE「管理戸数を伸ばすオーナー開拓AI『WHERE 賃貸管理PM』を10月1日にリリース」)。
JAXAはWHEREを、JAXAの知的財産や知見を使って事業を行うスタートアップとして紹介しています。
同社が応用しているのは、JAXAの月探査計画「LUNAR-A」で約20年開発されたペネトレータ技術です。
ペネトレータは地面に高速で突き刺さってから内部の機器で計測する探査機で、突入時には3,000〜4,000G程度の衝撃に耐える必要があります(出典:JAXA新事業促進部「株式会社WHERE」)。
主力の『WHERE』について、JAXAの紹介では、衛星データから特定の不動産をAIで見つけ、不動産を仕入れるための情報集めを自動化するサービスと説明されています。
衛星データとは、地球の周りを回る人工衛星が撮った画像や計測値のことです。
広い範囲を同じ条件で繰り返し記録できるため、人が現地を回らなくても、建物や土地の状況をまとめて把握する手がかりになります。
今回の新製品の利用者は賃貸管理会社です。
賃貸管理会社は、アパートやマンションのオーナーに代わって入居者募集や家賃の管理などを引き受け、その対価を得ています。
何が発表されたか
新製品『WHERE 賃貸管理PM』は2026年10月1日にリリースされます。
WHEREは、衛星データとAIを使って構築した自社の不動産データベースを「国内最大級」としており、その約7,300万件のデータが新製品の土台です。
主な機能は3つあります。
- 「築年数」「空室率」などの建物情報で候補物件を探す機能
- オーナー情報をプラットフォーム上で取得・管理する機能
- 物件探しからオーナーへのアプローチまでを一続きで支援する仕組み
空室率は、建物の部屋のうち入居者がいない部屋の割合です。
空室が多い物件のオーナーは、管理会社を見直す相手になりやすいと考えられています。
開発中の機能として、賃料の変化などからアプローチに適したタイミングを自動で知らせる機能、オーナーへの提案レポートを自動で作る機能、賃料の査定結果を出す機能も挙げています。
価格は、発表で公表されていません。
WHEREは開発の背景として、賃貸管理会社の課題を説明しています。
管理する部屋の数(管理戸数)が増えると、毎月の管理料のように継続して入る「ストック型」の収益が増えるため、多くの管理会社にとって管理戸数の拡大は最重要業務のひとつです。
新しい管理物件を得る方法として、不動産ポータルサイトの募集情報から空室の多い物件を見つけてオーナーに提案するやり方が、一部の管理会社で実践されています。
一方で、候補物件の探索や絞り込みに時間を取られ、オーナーへの提案そのものに人手を回せない会社が多いこと、成果が担当者の力量に左右されて再現しにくいことを、同社は課題として挙げています。
宇宙業界にとっての意味
人工衛星のデータを、宇宙とは関係のない業界の業務に組み込み、その利用料で収益を得る事業は、宇宙ビジネスの中で「衛星データ利用」と呼ばれる分野にあたります。
衛星を作ったり打ち上げたりする会社とは別に、データを使いやすいサービスに加工して届ける会社が必要になります。
WHEREはこの役割を不動産業界で担っている会社です。
今回の製品は、既存の不動産データベースを、土地の仕入れとは別の顧客層である賃貸管理会社向けに使い直したものです。
ひとつのデータ基盤を複数の業務向け製品に展開できるかどうかは、衛星データを扱う事業が広がっていくかを見るうえでの論点のひとつです。
ただし、新製品の中で衛星データがどの工程にどのように使われているかは、発表では詳しく説明されていません。
今回の発表は製品リリースの告知で、導入社数や成果の数値はまだ示されていない段階です。
今後の注目点
最初の節目は、10月1日のリリースです。
その後は、開発中とされるアプローチのタイミング自動検知、提案レポートの自動生成、賃料査定の3機能がいつ提供されるかが注目点になります。
また、実際に導入した賃貸管理会社の数や、管理戸数の増加につながったかどうかといった結果が公表されるかも確認したいところです。
衛星データを使った不動産データベースが、仕入れ向けと管理会社向けの両方で使われるようになるかどうかも、同社の今後の発表から見えてきます。
出典
- 株式会社WHERE(PR TIMES)「JAXA発スタートアップ・株式会社WHERE、管理戸数を伸ばすオーナー開拓AI『WHERE 賃貸管理PM』を10月1日にリリース」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000146022.html
- JAXA新事業促進部「株式会社WHERE」 https://aerospacebiz.jaxa.jp/en/startup/where/
- www.jaxa.jp「20250828-1_j.html」 https://www.jaxa.jp/press/2025/08/20250828-1_j.html