NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年9月16日、宇宙飛行士4人をISS(国際宇宙ステーション)へ送る「Crew-13」ミッションについて、早ければ2026年10月初旬の打ち上げを目指すと発表しました。
このミッションは9月の打ち上げを予定していましたが、打ち上げ前の点検でSpaceXの宇宙船Dragon(ドラゴン)の推進システムから酸化剤が漏れているのが見つかり、日程が組み直されていました。
酸化剤の弁は交換を終えています。
3行で分かるポイント
- NASAとSpaceXは、宇宙飛行士4人をISSへ運ぶCrew-13の打ち上げを、2026年10月初旬に目指しています。
- 延期の原因は、打ち上げ前の通常の整備作業で見つかった宇宙船の推進装置の液漏れで、酸化剤の弁はすでに交換されました。
- 乗組員4人は2026年9月17日にヒューストンで隔離に入り、正式な打ち上げ日時の発表を待っています。
まず押さえたい背景
NASAの商業クルー計画(Commercial Crew Program)は、アメリカの民間企業と組んでISSへ宇宙飛行士を往復させる枠組みです。
NASAが自前の宇宙船を運用するのではなく、企業が開発・運用する宇宙船に乗員輸送を任せる形を取っており、NASAはSpaceXとBoeing(ボーイング)の2社と組んでいます(出典:NASA「Commercial Crew Program」)。
Crew-13は、このうちSpaceXが担当する飛行です。
SpaceXはアメリカの宇宙企業で、Falcon 9(ファルコン9)ロケットと、そのロケットで打ち上げるDragon宇宙船を運用しています。
人を乗せる仕様のDragonはCrew Dragon(クルードラゴン)と呼ばれ、ISSへの乗員輸送に使われています。
ISSでは、滞在する宇宙飛行士を数か月ごとに入れ替えます。
新しい乗組員を乗せた宇宙船が到着し、短い引き継ぎ期間を挟んでから、前の乗組員が地上へ戻るという順番です。
このため、1本の打ち上げがずれると、交代を待つ側の帰還時期も一緒に動きます。
ISSは、アメリカ(NASA)・ロシア(ロスコスモス)・ヨーロッパ(ESA)・日本(JAXA)・カナダ(CSA)の宇宙機関による国際協力で運用されています(出典:NASA「Space Station International Cooperation」)。
このうちカナダ宇宙庁(CSA)は、宇宙の平和的な利用と開発を進めること、科学を通じて宇宙の知識を広げること、宇宙の科学と技術がカナダの人々に社会的・経済的な利益をもたらすようにすることを、法律上の任務としています(出典:カナダ宇宙庁「Mission and mandate」)。
何が発表されたか
Crew-13はもともと9月の打ち上げを予定していましたが、2026年8月29日の発表で日程が白紙に戻りました。
理由は、打ち上げ前の通常の機体処理の中で、Dragonの推進システムから酸化剤が漏れているのが見つかったことです(出典:NASA「NASA, SpaceX Adjust Crew-13 Launch Date」)。
推進システムは、宇宙船が軌道上で向きや速度を変えるための装置です。
ロケットエンジンは燃料を燃やして推力を得ますが、宇宙空間には燃焼に使える酸素がないため、燃料とは別に酸化剤を積んでいきます。
どちらかが漏れ出せば、宇宙船は狙ったとおりに動けません。
NASAは9月16日、酸化剤の弁(バルブ)の交換が無事に終わったと説明したうえで、早ければ10月初旬の打ち上げを目指すとしています。
乗組員は4人です。
NASAのジェシカ・ワトキンス氏がコマンダー(司令官)、同じくNASAのルーク・デラニー氏がパイロットを務め、カナダ宇宙庁のジョシュア・クトリク氏とロスコスモスのセルゲイ・テテリャトニコフ氏がミッションスペシャリストとして搭乗します。
打ち上げ場所はフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地(Cape Canaveral Space Force Station)にある第40発射施設(Space Launch Complex 40)で、ロケットはFalcon 9です。
4人は9月17日の夜、ヒューストンのジョンソン宇宙センターで隔離に入りました。
これは打ち上げ前に病気になる危険を下げ、飛行中に症状が出るのを防ぐための措置です(出典:NASA「NASA, SpaceX Continue Crew-13 Prep as Crew Enters Quarantine」)。
宇宙業界にとっての意味
Crew-13の日程は、いまISSにいる別の乗組員の予定と直結しています。
現在滞在しているCrew-12の4人は、NASAのジェシカ・メイア氏とジャック・ハサウェイ氏、ESAのソフィー・アデノ氏、ロスコスモスのアンドレイ・フェジャエフ氏で、2026年2月14日からISSにいます。
NASAは、この4人がCrew-13の到着と短い引き継ぎ期間のあとにISSを離れると説明しています。
つまり、Crew-13の打ち上げが後ろにずれた分だけ、Crew-12の帰還もずれる関係にあります。
もうひとつの論点は、不具合が見つかった場所とタイミングです。
今回の漏れは飛行中ではなく、打ち上げ前の地上での機体処理の中で見つかりました。
機体が地上にある間なら部品を交換して確認をやり直せますが、打ち上げてしまえば同じ対応はできません。
今回は、打ち上げ日を動かして弁を交換するという進め方が取られました。
1本の飛行の遅れが、すでに軌道上にいる乗組員の帰還時期まで動かす——商業クルー計画の飛行が、単発の打ち上げではなく、交代の連鎖の一部として組まれていることが見て取れます。
今後の注目点
当面の焦点は、正式な打ち上げ日時の発表です。
NASAは10月初旬という目標を示していますが、具体的な日付と時刻はまだ公表されていません。
9月17日に隔離へ入った4人は、そのまま打ち上げを待ちます。
Crew-12の帰還日程も、Crew-13の到着と引き継ぎ期間が決まってから固まります。
Crew-13は、SpaceXの有人宇宙輸送システムにとって13回目の乗員交代ミッションで、人を乗せた飛行としては14回目にあたります。
4人は2027年に帰還する予定です(出典:NASA「NASA’s SpaceX Crew-13」)。
ほしまるぼくが旅していた深宇宙では、部品が傷んでも誰も直しに来てくれなかったんだ。地上にあるうちに弁を取り替えられるのは、打ち上げ前だからできることだよ。
出典
- NASA「Cargo Mission and Crew-13 Updates; Station Research, Maintenance Continue」
- NASA「NASA, SpaceX Adjust Crew-13 Launch Date」
- NASA「NASA, SpaceX Continue Crew-13 Prep as Crew Enters Quarantine」
- NASA「NASA’s SpaceX Crew-13」
- NASA「Commercial Crew Program」
- NASA「NASA’s SpaceX Crew-12 to Discuss Station Mission, Upcoming Return」
- NASA「Space Station International Cooperation」
- カナダ宇宙庁「Mission and mandate」
- sorae「NASA有人ミッション「Crew-13」は2026年10月初旬打ち上げへ 宇宙船の不具合対策で先送り」
- www.nasa.gov「nasa-partners-update-international-space-station-2026-flight-plan」