NASAのクルー13が延期を経て打ち上げISSへ約8時間で到着

NASA(アメリカ航空宇宙局)とSpaceXの有人宇宙船「ドラゴン」が、米東部夏時間2026年10月1日午前11時10分(日本時間10月2日午前0時10分)、4人の宇宙飛行士を乗せてフロリダ州から打ち上げられました。
宇宙船は打ち上げから7時間55分後に国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングしました。
NASAは、ISSの歴史上、米国の宇宙船として最も短い時間でのドッキングだったと発表しています。
この打ち上げは、8月末に宇宙船の推進系で漏れが見つかったため、予定を延ばしていました。

3行で分かるポイント

  • NASAが民間企業SpaceXの宇宙船で、4人の宇宙飛行士を宇宙ステーションへ送りました。
  • 打ち上げからステーションに着くまでの時間は、米国の宇宙船としてはこれまでで最も短い7時間55分でした。
  • 宇宙船の推進系の酸化剤漏れで一度延期しましたが、追加の点検を経て予定どおり乗組員の交代が進んでいます。
目次

まず押さえたい背景

国際宇宙ステーション(ISS)は、地球を約90分で1周しながら人が暮らし、実験を続けている有人の宇宙施設です。
NASA、ロシアのRoscosmos、ESA(欧州宇宙機関)、JAXA、カナダ宇宙庁(CSA)の5つの宇宙機関が建設に関わり、2000年11月から人が途切れずに滞在しています(出典:NASA「Space Station Facts and Figures」)。
人が住み続けるには、数か月ごとに乗組員を入れ替える必要があり、その送り迎えを「クルーローテーション(乗組員交代)」と呼びます。

その送迎を担っているのが、NASAの商業乗員輸送プログラムです。
NASAが自前で宇宙船を運用するのではなく、米国の民間企業と組んで、ISSへ人を安全で信頼性高く、費用を抑えて運ぶことを目指す仕組みです(出典:NASA「Commercial Crew Program」)。
SpaceXの「ドラゴン」はこのプログラムで使われている宇宙船で、ロケット「ファルコン9」の先端に載せて打ち上げます。

今回の乗組員のうち1人が所属するカナダ宇宙庁は、カナダ政府の宇宙機関です。
宇宙の平和利用と開発を進め、宇宙科学の知識を広げ、宇宙の科学技術がカナダの人々に社会的・経済的な利益をもたらすようにすることを任務としています(出典:Canadian Space Agency「Mission and mandate」)。

何が発表されたか

打ち上げたのは「クルー13」と呼ばれるミッションです。
SpaceXの有人輸送システムとしては13回目の乗組員交代で、2020年の試験飛行「Demo-2」を含めると、NASAの商業乗員輸送プログラムでドラゴンが人を乗せて飛ぶのは14回目です(出典:NASA「NASA’s SpaceX Crew-13」)。

乗組員は、船長のジェシカ・ワトキンス氏、パイロットのルーク・デラニー氏(いずれもNASA)、ミッションスペシャリストのジョシュア・クトリク氏(CSA)とセルゲイ・テテリャトニコフ氏(Roscosmos)の4人です。
ワトキンス氏は2022年のクルー4で170日間宇宙に滞在した経験があり、デラニー氏は今回が初めての宇宙飛行です(出典:NASA「Jessica Watkins」、NASA「Luke Delaney」)。

打ち上げ場所は、フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地の第40発射施設です。
ドラゴンは人の操縦に頼らない自動ドッキングで、米東部夏時間午後7時5分(日本時間10月2日午前8時5分)にISSの「ハーモニー」モジュール前方の接続口に到着しました(出典:NASA「Dragon Docks, Bringing SpaceX Crew-13 to Station」)。
ハッチ(出入口の扉)は午後9時19分に開き、4人はISSで活動中の「第75次長期滞在」のチームに加わりました。

滞在中は、ヒトの幹細胞から組織をつくって個別化医療や薬の試験に役立てる研究、自動で作物を育てる装置の試験、微小重力での血流の異常の研究、宇宙飛行士の健康を機内で調べる新しい診断機器の試験などを行います(出典:NASA「NASA’s SpaceX Crew-13 Launches to International Space Station」)。
NASAのジャレッド・アイザックマン長官は、このミッションを米国の有人宇宙飛行の能力と民間企業との協力の強さを示すものと位置づけ、月やその先の探査に必要な経験づくりにつながると述べています。

打ち上げまでには延期がありました。
NASAは8月29日、通常の打ち上げ前の整備中に、ドラゴンの推進系で酸化剤(燃料を燃やすために燃料と組み合わせて使う薬品)の漏れが見つかったとして、打ち上げ日を調整すると発表しました(出典:NASA「NASA, SpaceX Adjust Crew-13 Launch Date」)。
NASAとSpaceXの合同チームが追加の試験とデータの確認を行い、必要な手直しを済ませてから打ち上げる方針を示していました。

宇宙業界にとっての意味

今回の打ち上げで、民間企業の宇宙船による乗組員交代が13回目に達しました。
ISSへの人の送り迎えという、宇宙機関にとって中心的な仕事を、NASAは民間企業との協力で担う体制を続けています。

NASAは今回のミッションを「低軌道プログラム」の一部と位置づけています。
このプログラムは、民間企業と組んで宇宙へ行く手段を確保し、ISSでの研究開発を支え、地球低軌道の外への将来のミッションにつなげるものだと説明しています。

延期の経緯も、この体制の運用の仕方を示しています。
酸化剤の漏れは打ち上げ前の整備の段階で見つかり、NASAとSpaceXが共同で試験と手直しを行ったうえで、約1か月後に打ち上げました。
米国の宇宙船として最短となった7時間55分のドッキングも含め、民間の宇宙船の運用実績がまたひとつ積み上がった形です。

今後の注目点

次の節目は、ISSに滞在していたクルー12の帰還です。
NASAは、クルー13との短い引き継ぎを終えたあと、クルー12が早ければ米国時間10月5日(月)に地球への帰還を始める予定だと発表しています(出典:NASA「NASA Sets Coverage for Agency’s SpaceX Crew-13 Launch, Docking」)。

クルー12の4人はNASAのジェシカ・メイア氏とジャック・ハサウェイ氏、ESAのソフィー・アドノ氏、Roscosmosのアンドレイ・フェジャエフ氏です。
クルー13の地球への帰還は2027年の予定とされており、滞在中の研究の成果がどのように公表されるかも注目点です。

出典

ほしまる
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