Vardaが2億5,100万ドルを調達し宇宙での医薬品製造を拡大へ

アメリカの宇宙スタートアップVarda Space Industries(以下Varda)は、2026年9月30日にシリーズDと呼ばれる資金調達で2億5,100万ドルを集めたと発表しました。
この調達で、Vardaの企業価値は16億ドルと評価されました。

Vardaは地球を回る軌道上で医薬品の材料を加工し、カプセルで地上へ持ち帰る事業を手がけています。
調達した資金は、打ち上げ回数を増やすことと、宇宙で作る最初の医薬品を実現することに充てるとしています。

3行で分かるポイント

  • 宇宙で薬の材料を加工するVardaが、2億5,100万ドルの資金を集めた
  • 集めたお金は、打ち上げ回数を増やすことと、製薬会社との協力を深めることに使う
  • 2028年までに10回以上の打ち上げと地球への帰還を計画している
目次

まず押さえたい背景

Vardaは、アメリカ・カリフォルニア州エルセグンドに本社を置く会社です。
自社で設計・製造した宇宙機「Wシリーズ」を使って、軌道上で材料を加工し、地球へ持ち帰る事業を行っています(出典:Varda公式サイト)。

軌道上では、宇宙機も中の物体も一緒に落ち続けているため、重力の影響をほとんど受けない「微小重力」の状態になります。
地上では、重い成分が沈んだり、温度差で液体が対流したりして、結晶のでき方が乱れます。
微小重力ではこのような現象が起きにくいため、薬の有効成分を地上では作れない形で結晶化させられるとVardaは説明しています。
同じ成分でも結晶の形が違うと、体への溶けやすさなどが変わることがあるため、新しい薬の製剤につながる可能性があります。

もうひとつの柱が、再突入カプセルです。
再突入とは、軌道を回っていた物体が大気圏に戻ってくることです。
Vardaの発表では、Wシリーズは軌道からの再突入時に音速の25倍(マッハ25)に達します。
これほどの速さで飛ぶ機会は地上の実験施設では限られるため、Vardaはカプセルを、極超音速(音速の5倍以上)で飛ぶ技術を試す場として、政府や国防関連の顧客にも提供しています。

何が発表されたか

今回の調達は、投資会社のLux CapitalとNatural Capitalが主導しました(出典:Varda Space Industries「Varda Announces $251 Million Series D to Scale Space-Based Pharmaceutical Processing」)。
Lux Capitalは、AIやロボティクスなどの企業を投資先として公式サイトで紹介しています。
Natural Capitalは、2025年7月に発表された前回のシリーズC(1億8,700万ドル)でも調達を主導しました。
今回はほかに、Founders Fund、Khosla Ventures、General Catalystなど7社も出資しています。

スタートアップは事業の段階が進むごとに、シリーズA、B、C…と名前を付けて投資家から資金を集めます。
Vardaがこれまでに調達した総額は、今回の分を含めて5億9,800万ドルになりました。

Vardaは資金の使い道として、打ち上げ回数を増やすこと、製薬会社との協力関係を深めること、宇宙で製造した最初の医薬品を届けることの3つを挙げています。
共同創業者で社長のDelian Asparouhov氏は、地球上で服用される最初の宇宙製の医薬品は、今回の調達から生まれると考えて会社を始めたとコメントしています。

これまでの飛行実績については、2023年の初打ち上げ以来、6回の再突入ミッションを行ったとしています。
2028年までに、さらに10回以上の打ち上げと再突入を計画しています。

宇宙業界にとっての意味

宇宙で物を作る事業は、材料を打ち上げるだけでは成り立たず、製品を地上へ安全に持ち帰る手段が必要です。
Vardaは、その持ち帰りを自社のカプセルで繰り返し行える体制づくりを進めてきました。
発表では、Wシリーズを、確実に繰り返し使えて費用を抑えた、材料とデータを持ち帰る手段と位置づけています。

ただし、医薬品事業はまだ実用化の前の段階です。
CEOのWill Bruey氏はCNBCの取材に対し、会社にとって最大の節目は、微小重力で作った製剤を2030年前後に臨床で人に投与するときだと話しています。
同じ報道によると、来年のペイロード(カプセルに載せる荷物)の約70%は政府向けで、2032年までに製薬向けが多数を占める見通しです。
当面の収入を国防関連の試験が支え、その間に医薬品事業を育てる構図だと読み取れます。

今後の注目点

直近では、W-8とW-9の2機が、SpaceXの相乗り打ち上げ「Transporter-18」で10月1日にも打ち上げられる予定です。
相乗り打ち上げは、1機のロケットに複数の顧客の衛星や宇宙機を載せて打ち上げる方式です。
W-8は再突入時のカプセルの温度などを測るセンサーを積み、米軍の研究として熱から機体を守る材料も試します。
W-9は、極超音速で飛ぶ間の航法を試す米国防総省の荷物を載せます。

より長い目では、医薬品の臨床試験に進めるかどうかと、製薬向けの荷物がどこまで増えるかが、宇宙での医薬品製造が事業として成り立つかを見る目安になります。

出典

ほしまる
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