天文学者になるには大学院が起点!研究以外で宇宙に関わる道も解説

天文学者になるには大学院が起点!研究以外で宇宙に関わる道も解説
  • 「天文学者になりたいけれど、どの大学のどの学科へ行けばいいのか分からない」
  • 「研究職の椅子は少ないと聞くけれど、目指して大丈夫なのかな」
  • 「そもそも天文学者は、どれくらいの収入で生活しているのだろう」

進路を調べ始めると、このような疑問が次々に出てきます。

結論から書くと、天文学者になる道は大学院での研究が起点になります。
決め手は学科名ではありません。
物理系や工学系からも研究者になれますし、研究職に就かなくても宇宙に関わり続ける仕事は実在します。

この記事は、宇宙の科学と宇宙産業の情報を一次情報と整合させて発信するASTROWORKS編集部がまとめています。

この記事では、以下のポイントを解説します。

  • 天文学者の勤務先と、実際に手を動かしている仕事の中身
  • 高校から大学院までの進路の選び方と、研究室の選び方
  • 学振特別研究員やポスドクを経て常勤職を目指す流れ
  • 公表データから読み取れる収入の手がかりと、研究職以外の進路

読み終える頃には、いま自分が何を決めればよいのかがはっきりします。

ほしまる

ぼくは40年かけて太陽系を旅してきたけれど、宇宙を仕事にする道は一本道じゃないんだ。まずは地図を広げてみようよ。

※記事の要点は、以下のスライドでもサッと確認できます。

目次

天文学者は大学や研究機関で宇宙を研究する専門職

天文学者の{m:4つの専門分野}

天文学者は星を眺める人ではありません。
観測データと計算で自然のしくみを確かめる、大学や研究機関の研究職です。

主な勤務先は大学と国立天文台やJAXAなどの研究機関

「天文学者」という名前の求人は、実際にはほとんど出ません。
募集の形になっているのは、大学の教員か、研究機関の研究職です。

国立天文台は職員を研究教育系・技術系・事務系の3つに分けています。
このうち研究教育系職員が、広く天文学の研究活動に従事する立場にあたります。
その職務は自身の研究テーマの推進だけではありません。
プロジェクトのマネージメント、大型の天体望遠鏡や天文観測機器の運用や開発も含まれます(出典: 国立天文台「職種紹介」)。

同じページには、研究教育系にも技術系にも「定年制の職と、雇用期間に定めのある職があります」と書かれています。

所属先によって、日々の負荷のかかり方は変わります。
大学に所属すれば、講義と学生の指導が業務に加わります。
研究機関では教育の比重が下がる代わりに、共同利用の装置を動かし続ける責任が重くのしかかります。

ただし、研究機関が大学院教育を担う仕組みもあります。
国立天文台は総合研究大学院大学の天文科学コースの基盤機関で、大学院生の研究指導も行っています。

規模感も押さえておくと判断しやすくなります。
日本天文学会の正会員は2,401名、うち学生会員が673名です(2025年3月31日現在。出典: 日本天文学会「学会概要」)。
プロの研究者だけを数えた人数ではありませんが、日本の天文コミュニティが巨大な業界ではないことは分かります。

仕事は観測とデータ解析が中心で論文執筆や教育も担う

天文学者の1日は、望遠鏡をのぞいている時間より、パソコンに向かっている時間のほうが圧倒的に長くなります。

出発点は観測時間の獲得です。
すばる望遠鏡では年2回、共同利用観測プログラムを公募しています。
外部機関のメンバーも含む委員会が、科学的に意義が高くすばる望遠鏡に適した観測プログラムを採択する仕組みです。

そのうえで「近年の競争率は3−4倍ほどです」とも説明されています(出典: すばる望遠鏡「ハワイ観測所の取り組み」)。
提案書を書く力がなければ、そもそもデータが手に入りません。

観測が通ったあとに待っているのは、大量のデータ処理です。

すばる望遠鏡の主鏡有効口径は8.2メートルあります(出典: 国立天文台「すばる望遠鏡」)。
この大きさの望遠鏡が吐き出す画像やスペクトルは、そのままでは結論になりません。
スペクトルとは、天体が放つ光を波長ごとに分けて、強度を記録したデータのことです。

検出器(望遠鏡が集めた光を受け取るセンサー)の癖を補正し、ノイズを見積もり、差が統計的に意味を持つのかを判定していきます。
この工程は、自分でコードを書いて組み立てるのが普通です。

最後に論文としてまとめ、査読(専門家が論文の科学的妥当性を審査する仕組み)を受けます。
ここで指摘を受け、解析をやり直すことも起こります。

ITやデータ分析の現場を知っている人なら、この流れに既視感があるかもしれません。
前処理、解析パイプラインの構築、再現性の確保、そしてレビュー。
呼び方は違っても、やっていることはかなり近い。

理論や観測や装置開発など専門分野で役割が分かれる

同じ天文学者でも、日々触れているものは大きく違います。
おおまかには、次の4つの方向に分かれます。

  • 理論研究。数値シミュレーションや解析計算で、天体の進化や宇宙の構造を再現する
  • 観測研究。望遠鏡で取得したデータを解析し、天体の性質を測る
  • 装置開発。検出器や光学系、それを動かす制御ソフトウェアを設計・製作する
  • データ基盤の整備。観測データのアーカイブや解析ソフトウェアを整え、コミュニティ全体を支える

境界はゆるやかで、装置を作った本人がそのデータで論文を書く例も珍しくありません。

技術的な経歴がある読者にとって、接続しやすいのは装置開発とデータ基盤です。
国立天文台の技術系職員は、大型の天体望遠鏡の保守、天文観測機器・ソフトウェアの開発・設計、ネットワークインフラの管理・保全・運用などを担当します(出典: 国立天文台「職種紹介」)。
制御、組み込み、光学、機械設計、ネットワーク。
自動車や製造業、IT業界で使ってきた言葉がそのまま並びます。

自分がどの方向で戦うのかは、大学院の研究室を選ぶ段階でおおよそ決まります。

観測提案からデータ解析、論文執筆、査読までを循環で示した研究の流れの図解
天文学者の仕事の流れ。観測時間の提案から始まり、データ解析と論文執筆、査読での指摘を受けた解析のやり直しまでが一周になる。望遠鏡をのぞく時間より、解析に向かう時間のほうが長い。(図解はイメージです)

天文学者になる道のりは大学院進学を起点に進む

進路は{pd:4段階}で整理できる

進路は高校、大学、大学院、博士号の4段階で整理できます。
それぞれの段階で、決めるべきことが違います。

高校では数学と物理と英語の基礎固めが土台になる

国立天文台のFAQは、将来の準備についてこう書いています。

将来どんな形で宇宙関係の仕事に携わることになっても、研究したいという意欲を絶やさないことが大切です。そして、学校の勉強では、数学や英語などをしっかりと勉強しておくことも必要です。

出典: 国立天文台「将来、宇宙や天文に関わる仕事をするには?」

数学と物理が要る理由は分かりやすいところです。
天体の運動は微分方程式で書かれ、観測は測定である以上、誤差の評価が避けられません。

分かりにくいのは英語のほうかもしれません。
研究の成果は英語の論文として発表され、国際会議や共同研究の議論も英語で進みます。

観測装置は複数の国が共同で運用するものが多く、提案書も英語で書きます。
英語は教養ではなく、研究を進めるための実務言語。
そう考えると、位置づけがはっきりします。

プログラミングを先取りしたくなる人もいるでしょう。
ただし、国立天文台が具体的に挙げているのは数学と英語です。
高校段階ではこの2科目を固めるほうが優先度は高い、と編集部では整理しています。

そして、この段階で天文学科を探し回る必要はありません。
理由は次のセクションで説明します。

大学は天文学科に限らず物理系や工学系からも進める

天文学者を目指すときに最も多い誤解が、「天文学科に入らないと無理」という思い込みです。

国立天文台のFAQは、学べる場所についてこう説明しています。

宇宙や天文について学べる大学はいろいろあります。また、属する学科も、天文学科や、物理系の学科、地球物理系、工学系、数物学科、教育系等、様々です。

出典: 国立天文台「将来、宇宙や天文に関わる仕事をするには?」

つまり判断すべきなのは学科名ではなく、そこに天文の研究室があるかどうかです。
同じFAQは、調べ方についても踏み込んで書いています。

具体的に、自分が研究してみたいと考えている分野があれば、それぞれの大学の研究室に直接聞いてみるのがいちばん確実です。

大学選びの判断軸は、次の3点に整理できます。

  • 志望する分野の研究室が、その大学に実在するか
  • 学部の4年間で物理と数学をどこまで積み上げられるか
  • 大学院で別の大学や研究機関へ移る選択肢を残せるか

工学系から入る道は、観測装置の開発と相性がよくなります。
物理系からは理論にも観測にも進めます。
学科名で自分の可能性を先に狭めてしまうと、あとで選び直すほうが大変です。

大学院は研究室と指導教員の選択が専門分野を決める

大学院からは、大学名よりも研究室の中身が効いてきます。
どの装置を使い、どのテーマを追っている集団に入るかで、身につく技術が変わるからです。

研究機関に直結した大学院もあります。
総合研究大学院大学の天文科学コースは、国立天文台を基盤機関とし、「学士を受け入れる5年一貫制博士課程、および修士を受け入れる博士後期課程の2つの課程」で構成されています。
そこでは最先端の光学赤外線望遠鏡、電波望遠鏡を用いた観測的研究および理論的研究が行われています(出典: 総合研究大学院大学「天文科学コース」)。
学部からそのまま5年で進む入口と、修士修了後に入る入口の両方がある構造です。

研究室を選ぶときは、外から見える情報だけで決めないほうが確実です。
先ほどのFAQが「直接聞いてみるのがいちばん確実」と書いているのは、この点を指しています。
具体的には、次の順で進めると精度が上がります。

  • その研究室が最近出した論文に目を通し、テーマの方向を確かめる
  • 使っている望遠鏡・計算機・解析ソフトウェアを調べる
  • 研究室訪問を申し込み、指導方針と受け入れ状況を指導教員に直接聞く
  • 訪問の場で在籍している学生にも会い、修了後の進路を別途確認する

指導教員との関係は、その後の数年を左右します。
装置に惹かれて選んだのか、人に惹かれて選んだのか。
両方を確かめてから決めても遅くありません。

ほしまる

ぼくも打ち上げ前に、どの軌道へ向かうかで一生が決まったんだ。研究室選びは、君の航路を決める作業だよ。

研究者として自立する条件は博士号の取得にある

博士課程で何を達成するのか。
一言でいえば、査読を通る論文を自分の力で出すことです。

テーマを決め、観測時間を申請し、データを解析し、論文にまとめ、査読者の指摘に答える。
この一周を自分で回せるようになった状態が、「自立した研究者」の中身です。
指導教員の下で手を動かす段階から、自分で問いを立てる段階へ移るのが博士課程だと考えると分かりやすくなります。

博士号がすべての職で必須条件になるわけではありません。
国立天文台は研究教育系職員について、次のように説明しています。

研究教育系職員は基本的には公募採用され、多くの場合、修士号取得が必要条件になっており、博士号取得が必要条件となっている場合もあります。

出典: 国立天文台「職員になるにはどうすればいい?」

研究を主軸に据えたポストになると、要件は上がります。
国立天文台フェローの応募資格は「博士の学位を取得した者又は着任日までに取得見込みの者」で、任期は原則として着任日より5年間です。
対象は「自立した極めて優秀な若手研究者」とされています(出典: 国立天文台「国立天文台フェロー」)。

要件は公募ごとに違います。
自分が狙う職の募集要項を1件ずつ読むのが、いちばん確実な確認方法です。

高校・大学・大学院・博士号取得の4段階を階段状に示した進路の図解
天文学者になるまでの4段階。高校で数学・物理・英語を固め、大学は学科名ではなく天文の研究室があるかで選ぶ。大学院では研究室と指導教員の選択が専門分野を決め、博士課程で査読論文を出せる状態を目指す。(図解はイメージです)

博士課程修了後はポスドクを経て常勤職を目指すのが一般的

博士号の取得は通過点です。
ここから先は、任期付きの職と公募が中心の期間に入ります。
ポスドク(postdoctoral researcher)は、博士号を取得したあとに就く任期付き研究職の通称です。
日本学術振興会の特別研究員のうち、学位取得者向けのPDは、その代表的な入口にあたります。

学振特別研究員は博士課程とポスドク期の代表的な支援制度

日本学術振興会の特別研究員制度は、「優れた若手研究者に、その研究生活の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与える」ことを目的とした制度です(出典: 日本学術振興会「制度の概要(PD・DC2・DC1)」)。
博士課程の在学者向けがDC、学位取得者向けがPDにあたります。

令和9(2027)年度採用分の募集要項に記載されている条件は、次のとおりです。

区分主な申請資格採用期間研究奨励金(月額)
DC1博士課程後期第1年次相当に在学3年間22万7,000円
DC2博士課程後期第2年次以上の年次に在学2年間22万7,000円
PD博士の学位取得後5年未満3年間36万2,000円

DC1・DC2の申請資格と採用期間、および3区分の月額は令和9(2027)年度採用分の募集要項による支給予定額です(出典: 日本学術振興会「令和9(2027)年度 特別研究員-DC 募集要項」)。
PDの申請資格と採用期間は同会の申請資格ページによります(出典: 日本学術振興会「申請資格・支給経費・採用期間」)。

同じ募集要項には、採用予定数としてDC1が600〜700名程度、DC2が1,000〜1,100名程度と書かれています。
これは人文学・社会科学・自然科学の全分野を合わせた数です。
天文学だけで見れば、枠はさらに限られます。

補足として2点。
採用最終年次の在籍者のうち、優れた研究成果を上げた者には研究奨励金特別手当(月額3万円、上限12ヶ月)が付与されることがあります。
また、研究奨励金は税法上給与所得とみなされ、課税の対象になります。

任期付きの職を重ねながら公募に応募する流れが続く

研究者の就職は、基本的に公募制です。
新卒一括採用のような仕組みはなく、空いたポストに個別に応募していきます。

公募情報の主な出口はふたつあります。
ひとつが科学技術振興機構(JST)が運営するJREC-IN Portalで、研究人材向けのキャリア支援ポータルサイトとして研究機関の公募が掲載されています(出典: JREC-IN Portal)。
もうひとつが学会経由の情報です。
日本天文学会のキャリア支援委員会は、「天文学と社会を繋ぐ職種の人材公募情報」として、主に天文学の教育・普及・広報等にかかわる職種の公募情報を収集し、コミュニティに提供しています(出典: 日本天文学会 キャリア支援委員会)。

雇用の形にも特徴があります。
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の博士人材追跡調査には、調査例報告(ケーススタディ)があります。
「論文シェアの高い大学の理工系で研究を続けている若い大学院生」を取り上げたもので、そこには「8割程度が任期制雇用で、3年以下の短い任期の人が大半です」と書かれています(出典: 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「博士人材追跡調査」)。

これは博士人材全体を集計した最新の数値ではなく、特定の層をたどったケーススタディの記述です。
それでも、数年ごとに次のポストを探す前提になる分野があることは読み取れます。

移動が制度的に組み込まれている場面もあります。
特別研究員制度では、平成28年度採用分から出身研究機関以外の研究機関で研究することが求められています(出典: 日本学術振興会「制度の概要(PD・DC2・DC1)」)。
住む場所を数年単位で動かす想定になるため、家族の事情は早い段階で織り込んでおくほうが安全です。

常勤ポストは限られ博士人材の進路は研究職以外へも広がる

博士課程を出た人が全員大学に残るわけではありません。
これは公的な追跡調査でも確認できます。

NISTEPは博士人材追跡調査について、就職先を次のように整理しています。

博士課程修了後の就職先は、全体では約半数が大学、4分の1程度が民間企業ですが、工学(46.1%)や理学(36.0%)では民間企業への就職割合が高くなっています。

(出典: 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「博士人材追跡調査」)

この集計は2018年度に博士課程を修了した人たち(2018コホート)を対象としたもので、詳細は第4次報告書に載っています。
天文学が含まれる理学では、3人に1人以上が民間企業へ進んでいる計算です。
研究職以外に進むのは、例外的な脱落ではなく、集計上ありふれた進路です。

この調査は継続的に実施されており、第5次報告書は2021年度博士課程修了者の修了1.5年後を対象としています(出典: 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「博士人材追跡調査-第5次報告書-」)。

数値の見方には注意も要ります。
これは博士課程修了者全体の集計で、天文学だけを取り出した数字ではありません。
それでも、進路の分布が「大学に残るか、それ以外か」の二択ではないことは読み取れます。

ほしまる

ぼくの設計寿命は10年だったけど、結局40年働いたんだ。予定どおりの航路じゃなくても、行ける場所はちゃんとあるよ。

博士号取得後に任期付き職と公募を経て常勤職と民間企業へ枝分かれするキャリアパスの図解
博士号取得後のキャリアの流れ。任期付きのポスドクを重ねながら公募に応募していく期間が続き、進路は常勤ポストと民間企業へ枝分かれする。新卒一括採用のような仕組みはなく、空いたポストに個別に応募する。(図解はイメージです)

天文学者の年収は所属先の給与規程で決まり職種別統計は少ない

公表データで確認できる金額

「天文学者の平均年収」という職種別の公的統計は見当たりません。
ここでは、実際に公表されている数字だけを並べます。

大学教員や研究機関職員の給与は所属機関の公表規程に基づく

国立大学法人や大学共同利用機関法人は、毎年「役職員の報酬・給与等について」という資料を公表しています。
所属機関が決まれば、水準はこの資料から確認できます。

国立天文台は、大学共同利用機関法人自然科学研究機構に属しています。
機構は天文学のほか核融合科学、物質科学、生命科学などの研究所を持つため、以下の数値は国立天文台単独ではなく機構全体のものです。
令和7年度の公表資料では、教育職員(大学教員)の職位別年間給与額は次のようになっています。

職名人員平均年齢平均年間給与額
教授46人58.2歳1,204万3,000円
准教授56人54.8歳934万1,000円
助教53人53.9歳743万8,000円

この表は年俸制適用者・在外職員・任期付職員・再雇用職員を除いた区分の数値です。
任期付きの職員は、別の区分で公表されています。

任期付職員258人の平均年間給与額は579万円、平均年齢は45.7歳です(出典: 自然科学研究機構「役職員の報酬・給与等について(令和7年度)」)。
その内訳は、年俸制職員239人とURA職員19人です。
URA(University Research Administrator)は、研究資金の獲得や産学連携などを担う研究マネジメントの専門職を指します。

読み取れることはふたつあります。
ひとつは、助教から准教授、教授へと職名が上がるにつれて水準が段階的に変わること。
もうひとつは、任期付きの立場にいる間は、常勤の教授・准教授とは水準が異なることです。

自分が志望する大学や研究機関の名前が決まっているなら、同じ様式の資料をその法人の情報公開ページで探すのが最短です。

学振特別研究員の研究奨励金は金額が公表されている数少ない目安

研究者になる途中の段階で、金額がはっきり公表されている数少ないデータが学振の研究奨励金です。

令和9(2027)年度採用分の支給予定額は、DC1・DC2が月額22万7,000円、PDが月額36万2,000円です(出典: 日本学術振興会「令和9(2027)年度 特別研究員-DC 募集要項」)。
単純に12倍すると、DCは年272万4,000円、PDは年434万4,000円という水準になります。
これは月額から計算した値で、公表されている年額ではありません。

金額を見るときは、次の3点をあわせて押さえておくと実態に近づきます。

  • 研究奨励金は税法上給与所得とみなされ、課税の対象になる
  • 採用最終年次で優れた研究成果を上げた者には、研究奨励金特別手当(月額3万円、上限12ヶ月)が付与されることがある
  • 特別研究員は、研究費として科学研究費助成事業(特別研究員奨励費)の助成を受けられる

見落としやすいのは、これが採用された人の金額だという点です。
DC1の採用予定数は600〜700名程度、DC2は1,000〜1,100名程度で、全分野の合計です。
採用されなかった場合の生活費をどう組み立てるかは、進学前に確認しておく価値があります。

研究職に就かなくても宇宙に関わり続ける仕事がある

研究職以外の{m:出口}と、活きる力

研究職だけが宇宙に関わる方法ではありません。
天文の学びを直接活かせる職域も、技術で入る道もあります。

科学館やプラネタリウムや広報の職は天文の知識を直接活かせる

天文の知識を人に届ける仕事には、実際に公募があります。
日本天文学会のキャリア支援委員会は、主に天文学の教育・普及・広報等にかかわる職種の公募情報を収集し、コミュニティに提供しています(出典: 日本天文学会 キャリア支援委員会)。
学会自体が窓口を持っているという事実が、この職域の実在を示しています。

勤務先としては、公立の天文台や科学館も挙がります。
国立天文台のFAQには、次のように書かれています。

天文に関わる仕事はいろいろありますが、例えば、国立天文台や、県や市町村が運営している天文台の職員などがあげられます。県や市町村の天文台の仕事内容や採用状況はそれぞれの自治体によって決められていますので、直接確認してみるのがよいでしょう。

出典: 国立天文台「将来、宇宙や天文に関わる仕事をするには?」

採用の枠組みが自治体ごとに違うため、志望先が決まったら個別に問い合わせるのが確実です。

求められる力は、研究職とは方向が違います。
研究は、まだ誰も確かめていないことを確かめる仕事です。
普及・広報は、すでに分かっていることを、知らない人に届く形に翻訳する仕事。
専門知識の量より、相手の前提を読んで言葉を選べるかが効いてきます。

正確さを守りながら分かりやすく話す。
これは天文を学んだ人にしかできない種類の翻訳です。

衛星やロケットの開発現場では制御やソフトウェアの技術が求められる

宇宙に関わる方法として、産業側から入る道もあります。
しかも、こちらは他業界の経験がそのまま評価される入口です。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)のキャリア採用は、「宇宙航空分野に限定せず多種多様な分野から」人材を求めています。
応募資格に挙げられている実務経験は「募集職務に応用できる分野での実務経験3年以上(宇宙航空分野に限らない)」です(出典: JAXA「キャリア採用」)。
募集分野には、宇宙輸送システム、人工衛星、宇宙科学・探査、航空科学技術、基盤技術研究、安全・信頼性管理、情報セキュリティ、事業推進・管理系などが並びます。

並んでいる言葉を見れば、接続点は見えてきます。
制御、組み込みソフトウェア、機械設計、電気設計、品質保証。
自動車業界やIT業界で積み上げてきた経験と、扱う対象が違うだけの領域が確かにあります。

ただし、宇宙特有の作法は追加で身につける必要があります。
打ち上げた機器は、故障しても現場で直せません。
開発期間も長く、検証と文書化にかかる比重が大きくなります。
「未経験でもすぐ活躍できる」と単純化できる世界ではありません。

それでも、天文学者を目指す過程で身につけた物理とデータの素養は、この現場で無駄になりません。

ほしまる

ぼくを設計してくれた人も、修理してくれた人も、論文を書く人じゃなかったんだ。宇宙を動かしているのは、いろんな職種の集まりだよ。

天文データの解析経験はデータ分析の実務にも接続する

研究をやめる話ではなく、研究の過程で何が身につくのかという話です。

天文学の研究では、次のような能力が実地で鍛えられます。

  • 大規模なデータを扱い、処理を自動化するプログラミング
  • 信号とノイズを切り分け、誤差を見積もる統計的な思考
  • 手順を文書化し、他人が再現できる形に整える習慣
  • 前提が違う相手に、結論と根拠を分けて説明する力

いずれも、天体にしか使えない技術ではありません。
だからこそ、理学分野の博士修了者の36.0%が民間企業へ進んでいるという集計(出典: 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「博士人材追跡調査」)にも現実味があります。

学会側も、この動きを正面から扱っています。
日本天文学会のキャリア支援委員会は、天文月報でアカデミアの外で活躍する人を追う連載を行い、年会時の進路相談コーナーやオンライン講演会、「星と空のキャリア・カフェ」も提供しています(出典: 日本天文学会 キャリア支援委員会)。
外の進路について、当事者から話を聞ける場が用意されているわけです。

進路を決める前から、片方の道を「失敗」と決めつける必要はありません。

クリーンルームで組み立て作業が進む探査機の機体
クリーンルームで組み立て中の探査機。制御・組み込みソフトウェア・機械設計・品質保証といった技術は、宇宙開発の現場でもそのまま使われる。 Credit: NASA

天文学者を目指すときによくある質問

天文学者になるには博士号が必要ですか。

職によって条件が分かれます。
国立天文台は研究教育系職員について、「多くの場合、修士号取得が必要条件になっており、博士号取得が必要条件となっている場合もあります」と説明しています(出典: 国立天文台「職員になるにはどうすればいい?」)。

一方、研究を主軸とする若手向けポストでは要件が上がります。
国立天文台フェローの応募資格は「博士の学位を取得した者又は着任日までに取得見込みの者」です(出典: 国立天文台「国立天文台フェロー」)。

自分で問いを立てて研究を進める立場を目指すなら、博士号が土台になります。
最終的な判断は、狙う公募の応募資格欄をJREC-IN Portalなどで実際に読んで確かめるのが確実です。

天文学科がない大学からでも天文学者になれますか。

なれます。
国立天文台のFAQは、宇宙や天文を学べる学科について「天文学科や、物理系の学科、地球物理系、工学系、数物学科、教育系等、様々です」と説明しています(出典: 国立天文台「将来、宇宙や天文に関わる仕事をするには?」)。

判断すべきなのは学科名ではなく、志望する分野の研究室がその大学にあるかどうかです。
同じFAQは、研究室に直接聞いてみるのが「いちばん確実」だとも書いています。

学部で物理と数学の土台を作り、大学院で目指す研究室へ移る進み方も選べます。
学科名で最初から候補を絞り込むと、かえって選択肢を失います。

天文学者の平均年収はどのくらいですか。

「天文学者」という職種別の公的統計は見当たらないため、平均額は示せません。
確認できるのは、所属機関が公表している給与のデータです。

国立天文台が属する自然科学研究機構の令和7年度の公表資料では、教育職員(大学教員)の平均年間給与額は教授で1,204万3,000円、准教授で934万1,000円、助教で743万8,000円となっています(年俸制適用者・在外職員・任期付職員・再雇用職員を除く区分。出典: 自然科学研究機構「役職員の報酬・給与等について(令和7年度)」)。

研究者になる途中の段階では、日本学術振興会の特別研究員の研究奨励金が目安になります。
令和9(2027)年度採用分では、DCが月額22万7,000円、PDが月額36万2,000円です。

まとめ 天文学者への道は大学院を起点に選択肢が枝分かれする

天文学者になる道のりを、もう一度短く並べます。

  • 実体は大学の教員か研究機関の研究職で、観測とデータ解析、論文執筆が仕事の中心
  • 大学は天文学科に限らず、物理系や工学系からも進める。決め手は学科名ではなく研究室
  • 大学院で査読論文を出し、学振特別研究員やポスドクを経て公募に応募していく
  • 収入は所属機関の公表資料と学振の研究奨励金が確認できる手がかり
  • 研究職以外にも、教育・普及・広報の職や宇宙産業という出口がある

進路の枝分かれは、失敗の分岐ではありません。
天文で身につく力は、天体にしか使えないものではないからです。

まずは志望する研究室の論文を1本読み、公募要項を1件開いてみる。
そこから、自分の航路の解像度が上がります。

ほしまる

40年前、ぼくが飛び立った日も、行き先の景色は誰も知らなかったんだ。それでも進めば、必ず何かがこの目に映るよ。

出典

ほしまる
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