ESAとJAXAのアポフィス探査機RAMSESが初めて電源を投入

2029年に地球の近くを通過する小惑星アポフィスを調べる探査機RAMSESで、機体の中心部分に初めて電源が入りました。
欧州宇宙機関(ESA)が2026年9月23日に発表しました。
作業は、機体の製造を取りまとめるイタリアのOHB Italiaが、ミラノのクリーンルームで行いました。
機体に組み込んだ搭載コンピュータと周辺の電子機器を、初めてつないだ状態で動かしています。

3行で分かるポイント

  • ESAとJAXAが共同で進める小惑星探査機RAMSESで、機体の中心部分に初めて電源が入り、機器どうしを組み合わせた試験が始まりました。
  • RAMSESは2028年春に日本のH3ロケットで打ち上げ、2029年4月13日に地球へ近づく小惑星アポフィスに先回りして観測します。
  • 次の節目は2027年春で、別の国でつくっている推進部分とオランダで組み合わせる予定です。
目次

まず押さえたい背景

ESAは、欧州の国々が宇宙の研究と技術開発で協力するために1975年に設立した政府間の機関で、本部はフランスのパリにあります(出典:ESA「ESA facts」)。
OHB Italiaはミラノに本社を置く宇宙企業で、人工衛星や観測機器を製造しています。
欧州の宇宙企業グループOHB SEの一員で、イタリア宇宙機関とESAの大型ミッションで主契約企業を務めています(出典:OHB Italia「About us」)。
主契約企業は、機関から探査機全体の開発を請け負い、各社がつくる部品の取りまとめに責任を持つ会社です。

RAMSESの正式名称は、宇宙の安全のための迅速なアポフィス探査ミッション(Rapid Apophis Mission for Space Safety)です。
アポフィスは直径約375mで、ESAはクルーズ船ほどの大きさとしています。
2029年4月13日には、地表から3万2,000kmの距離まで地球に近づきます(出典:ESA「Ramses: ESA’s mission to asteroid Apophis」)。
ESAによると、この大きさの小惑星がこれほど近くを通るのは、5000~1万年に1度と考えられています。
なお、アポフィスが2029年の接近で地球にぶつかるおそれはありません。

このミッションは「地球防衛(プラネタリーディフェンス)」の取り組みのひとつです。
JAXAは、地球に近づく天体を早く見つけて性質を調べ、軌道を正確に求めて衝突の確率を評価し、衝突のおそれがあれば被害を防ぐ手段を開発する国際的な取り組みと説明しています(出典:JAXA「欧州宇宙機関(ESA)との地球防衛に関する協力覚書(MOC)及び地球接近小惑星アポフィス探査計画(RAMSES)の協力協定の締結」)。

何が発表されたか

電源が入ったのは、RAMSESの「コアモジュール」です。
コアモジュールは、搭載コンピュータや電源などを収める機体の中心部分を指します。
電源を入れたのは、探査機の頭脳にあたる搭載コンピュータと、つながっている次の電子機器です(出典:ESA「First switch on for ESA-JAXA Ramses asteroid mission」)。

  • 大容量メモリ(観測データなどを一時的にためておく記憶装置)
  • 電源調整・分配装置(太陽電池からの電力を整えて各機器へ配る装置)
  • 複数のリモートターミナルユニット(機器からの出力をコンピュータ用のデジタルデータに変換する装置)

これまでは、機器を1台ずつ単独で確かめる段階でした。
今回は、機体の中に組み込んだ状態で機器を互いにつなぎ、コンピュータから各機器に指令を送って性能を確かめられるようになりました。
ESAのRAMSES主任エンジニアであるIngo Gerth氏は、機体の中で搭載コンピュータと周辺機器に一緒に電源を入れられたのは今回が初めてだと述べています。

機体は国をまたいでつくられています。
コアモジュールはミラノのOHB Italiaで、軌道や向きを変えるための推進モジュールはドイツのランポルツハウゼンにあるArianeGroupのオービタル推進センターで製造中です。
この推進センターは、人工衛星や探査機向けのエンジン(スラスタ)や推進システム、燃料タンクを製造しています(出典:ArianeGroup Orbital Propulsion Centre「space-propulsion.com」)。

宇宙業界にとっての意味

RAMSESは、打ち上げの時期を動かせないミッションです。
アポフィスが地球に近づく日は決まっており、探査機はその前に小惑星に追いつく必要があります。
ESAの計画では、2028年4月に打ち上げ、2029年2月にアポフィスに着きます。

到着は最接近の2か月前です。
接近の前後で小惑星の形・表面・軌道・自転がどう変わるかを調べ、内部の構造や密度などを知る手がかりにします。
ESAは、地球に向かってくる危険な小惑星の進路をどう変えるのがよいかを考えるデータになるとしています。

開発期間の短さも、このミッションの特徴です。
ESAは、契約の署名から打ち上げまでを3年半に満たない期間で進めるとしています。
組み合わせ試験の開始は、この工程が計画に沿って進んでいることを示す節目です。

日本も、打ち上げ以外の部分で機体に関わっています。
JAXAは2026年5月にESAと協力協定を結び、薄くて軽い太陽電池パドル(電力をつくる翼状のパネル)と、熱を赤外線でとらえて表面の温度を測るカメラ(熱赤外センサ)を提供することになりました。
打ち上げには、日本のH3ロケットを使います。
国連は2029年を「小惑星認識と惑星防衛の国際年」に定めています。

今後の注目点

次の節目は2027年春です。
コアモジュールと推進モジュールを、オランダ・ノールドワイクにあるESAの試験施設(ESTEC試験センター)に運び、ひとつの機体に組み上げる予定です(出典:ESA「First switch on for ESA-JAXA Ramses asteroid mission」)。
その先には、2028年春のH3ロケットによる打ち上げが控えています。

今後の注目点は、JAXAが提供する太陽電池パドルと熱赤外センサを機体に取り付ける時期と、組み上げたあとの試験の進み具合です。
打ち上げ日が2028年春のどこになるかの発表も、スケジュールを確かめる材料になります。

出典

ほしまる
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