将来宇宙輸送システム株式会社は2026年9月30日、開発中の液体ロケットエンジンの地上燃焼試験で、定格出力の60%相当での燃焼に成功したと発表しました。
燃料を送るポンプをモーターで回す「電動ポンプ」を組み込んだエンジンで、試験は2026年8月27日から9月9日にかけて滋賀県高島市で行われました。
出力は20%、40%と段階的に引き上げられました。
3行で分かるポイント
- 東京のロケット開発スタートアップが、モーターでポンプを回す方式のロケットエンジンを地上で燃焼させ、本来の出力の60%まで上げることに成功しました。
- この方式は出力を細かく調整しやすく、打ち上げ後に戻ってきて着陸する「繰り返し使えるロケット」に向いています。
- 次の目標は本来の出力(100%)での燃焼で、その後は着陸技術を試す機体での飛行試験が計画されています。
まず押さえたい背景
将来宇宙輸送システム(ISC)は、東京都中央区に本社を置く2022年5月設立のスタートアップ企業です(出典:将来宇宙輸送システム「再使用型ロケットエンジンの地上燃焼試験を行い、燃焼出力の段階的な引き上げに成功」)。
繰り返し使うことができる再使用型ロケット「ASCA(アスカ)」を開発しており、宇宙港や宇宙旅行などのサービスも構想しています。
同社の計画では、ASCAは離着陸の試験機から始め、100kgの輸送能力を目指す人工衛星打ち上げ機、さらに有人機へと段階的に大型化していく予定です。
液体ロケットエンジンは、タンクに入った燃料と酸化剤(燃料を燃やすための酸素のもと)を燃焼室へ送り込み、燃やしてできた高温のガスを噴き出して進みます。
大きな推力を得るには、推進剤を高い圧力で大量に送り込む必要があり、その役目をポンプが担います。
電動ポンプは、このポンプを電気モーターで回す方式です。
モーターの回転数を変えれば推進剤の供給量を調整でき、エンジンの出力を制御しやすいという特徴があります(出典:SPACE CONNECT「将来宇宙輸送システム、電動ポンプ駆動による初のエンジン燃焼試験に成功」)。
「定格出力」は、そのエンジンが設計上の本来の条件で運転したときの出力を指します。
今回の60%は、その本来の出力に対する割合です。
何が発表されたか
ISCは、国内ポンプメーカーと共同で開発を進める電動ポンプを組み込んだ液体ロケットエンジンの燃焼試験を実施しました。
試験場所は、滋賀県高島市饗庭野地区にある旭化成株式会社のあいばの試験所です。
旭化成は東京都千代田区に本社を置き、「ヘルスケア」「住宅」「マテリアル」の3つの領域を手掛ける企業です(出典:旭化成「会社概要」)。
試験期間は2026年8月27日から9月9日までです。
ISCは、出力をいきなり上げるのではなく、20%、40%と段階的に引き上げながら、エンジン各部の設計が妥当かどうかを確認しました。
そのうえで、定格出力60%相当での燃焼に成功したと発表しています。
エンジンの推力や燃焼時間、使った推進剤の種類について、ISCは発表で数値を示していません。
宇宙業界にとっての意味
使い捨てのロケットと違い、再使用型ロケットは打ち上げ後に地上へ戻り、着陸する必要があります。
着陸では速度を落としながら姿勢を保つため、飛行状況に応じてエンジンの出力を細かく調整することが求められます。
回転数で供給量を変えられる電動ポンプは、この細かい出力調整に対応できる方式として、ISCが採用したものです。
ロケットを繰り返し使えるようになれば、機体を毎回つくり直す必要がなくなります。
ISCはその実現に向けて、まずエンジンを地上で安定して動かせることを段階的に確かめている段階です。
今回の結果は、宇宙へ飛ばした実績ではなく、地上試験で出力を本来の6割まで上げられたという節目です。
今後の注目点
ISCが次の目標に掲げるのは、定格出力100%での燃焼です。
その後、このエンジンを帰還・着陸技術実証機に組み込み、2026年度中に飛行実証試験を行う計画と報じられています(出典:SPACE CONNECT「将来宇宙輸送システム、電動ポンプ駆動による初のエンジン燃焼試験に成功」)。
さらに2028年3月までに、北海道スペースポート(HOSPO)での人工衛星の打ち上げ実証を目指しています。
HOSPOは北海道大樹町にある、民間企業や大学などが利用できる商業宇宙港で、ロケットの発射場と滑走路を備えています(出典:北海道大樹町「北海道スペースポート(HOSPO)について」)。
注目点は、100%出力での燃焼がいつ達成されるかと、飛行試験で実際に出力を細かく変えながら着陸できるかどうかです。
ほしまる地上で100%まで出せたら、次は空を飛びながら出力を上げ下げして、狙った場所に降りられるかが試されるんだね。
出典
- 将来宇宙輸送システム株式会社(PR TIMES)「再使用型ロケットエンジンの地上燃焼試験を行い、燃焼出力の段階的な引き上げに成功」
- SPACE CONNECT「将来宇宙輸送システム、電動ポンプ駆動による初のエンジン燃焼試験に成功|再使用ロケット開発へ前進」
- 将来宇宙輸送システム株式会社「トップページ」
- 将来宇宙輸送システム株式会社「Rocket」
- 旭化成「会社概要」
- 旭化成「企業情報」
- 北海道大樹町「北海道スペースポート(HOSPO)について」
- innovative-space-carrier.co.jp「company」