英Skyroraが軌道打ち上げ目標を2030年に延期し人員を据え置き

英国のロケット企業Skyrora(スカイローラ)が、初の軌道打ち上げの目標を2030年に変更しました。
米国の宇宙業界メディアPayloadが2026年10月2日に報じています。

Skyroraはこれまで、楽観的に見れば2026年第4四半期にも軌道打ち上げに挑めるとしていました。
今回、開発を急がず、人員を増やさないまま計画の期間を延ばす方針を示しています。

3行で分かるポイント

  • 英国のSkyroraが、人工衛星を地球を回る軌道へ運ぶ初めての打ち上げの目標を、2026年末ごろから2030年へ遅らせました。
  • 軌道用ロケットのエンジンにつながる小型試作エンジンを、地上で45秒間燃やす試験を終えています。
  • 大きな資金調達に頼らず、部品販売や試験設備の貸し出しで収入を得ながら開発を続ける方針です。
目次

まず押さえたい背景

Skyroraは2017年に創業した英国のロケット企業で、小型の人工衛星を宇宙へ運ぶロケットを開発しています(出典:Payload「Skyrora Shifts Orbital Launch Timeline to 2030」)。
同社の公式サイトには、太陽同期軌道へ衛星を運ぶ3段式の軌道ロケットと、宇宙空間に届いてそのまま落ちてくる1段式の弾道飛行用ロケット「Skylark L」が載っています。
太陽同期軌道は、毎回同じ地方時刻に同じ場所の上空を通る軌道で、地球観測衛星がよく使います。
エンジン開発や3Dプリンターを使った部品製造も手がけています(出典:Skyrora公式サイト)。

ここで「軌道打ち上げ」と「弾道飛行(サブオービタル飛行)」の違いを押さえておきます。
弾道飛行は高く打ち上げても横向きの速さが足りないため、宇宙に届いても地上へ落ちてきます。
軌道に乗せるには、衛星が落ちずに地球を回り続けるだけの非常に大きな横向きの速さが必要です。
そのため、エンジンもロケットも大型になり、開発の難しさが大きく上がります。

打ち上げ場所として予定しているSaxaVord(サクサボード)宇宙港は、英国スコットランド北部のシェトランド諸島ウンスト島にある打ち上げ施設です。
運用中の射場は1つで、さらに2つを建設中としています(出典:SaxaVord Spaceport「About」)。

何が発表されたか

Payloadによると、Skyroraは初の軌道打ち上げの目標を2030年としました。
同社の最高執行責任者(COO)Jack-James Marlow氏は、軌道に向けて全力で走る戦略は取らないと述べています。
同氏は、運営費を増やして急に規模を広げた企業を見てきたとも話しています。

技術面では、軌道ロケットSkylark XLの1段目に使う推力70kNのエンジンについて、小型版で45秒間の燃焼試験(ホットファイア)を終えました。
燃焼試験は、エンジンを地上の台に固定したまま実際に燃やし、性能や耐久性を確かめる試験です。
kN(キロニュートン)は力の単位で、70kNは地上で約7トンの物体を持ち上げる力に当たります。
同社は試験データを、エンジンとほかの部分との接続部、燃焼の運用手順、タンクの設計の改良に使うとしています。

計画の期間を延ばした理由として、Payloadは、英国政府と国内の投資家の双方で、自国から打ち上げる能力(ソブリン打ち上げ)への関心が比較的小さいことを挙げています。
射場が限られていることも制約です。
Skyroraは2025年8月に、英国民間航空局(CAA)からSkylark LをSaxaVordで打ち上げる許可を得ました(出典:Payload「Skyrora wins its first UK launch license」)。
一方でSaxaVordは、ドイツのHyImpulseやRocket Factory Augsburgなど海外の新興企業にも開放されています。

資金については、創業以来の調達額は約6,590万ドル(PitchBookのデータ)ですが、軌道到達にはその約2倍が必要と同社はみています。
Skyroraは、自社開発の部品を宇宙業界へ売る、試験設備を英国の研究者に貸す、試作品づくりのための3Dプリンターを幅広い業界に提供する、という形で収入を得る計画です。
Marlow氏は、人員数を一定に保ったまま計画の期間を延ばすことに納得していると述べています。

宇宙業界にとっての意味

ロケット開発の新興企業にとって、「早く打ち上げる」と「会社を続けられる資金を保つ」は、どちらも重要な目標です。
Payloadは、Skyroraの方針は、大きな資金調達をしたものの収入を上回る規模に膨らみ、破産に至ったOrbexやVirgin Orbitと同じ道を避ける狙いだと伝えています。

比較の対象として、Skyroraより1年後の2018年に創業したドイツのIsar Aerospaceは、2026年9月にノルウェーのアンドイヤ宇宙港からロケット「Spectrum」を打ち上げ、2回目の挑戦で初めて軌道に到達しました(出典:Payload「Isar Aerospace Reaches Orbit on Second Attempt」)。
欧州の新興ロケット企業の間で、軌道到達までのペースに差が出ていることになります。

英国にとっては、自国内の射場から軌道打ち上げを実現する時期の見通しのひとつが、後ろにずれたことになります。

今後の注目点

当面の節目は、Skylark Lの2号機にあたるSkylark L2の飛行です。
Payloadによると、同社は2027年の飛行を目指して準備を進めています。
初号機のSkylark Lは2022年10月にアイスランドで打ち上げられましたが、上昇の途中で異常が起き、射点から約500m離れたノルウェー海に落下しました(出典:Payload「Skyrora’s Skylark L Debut Ditched Into Norwegian Sea」)。

軌道ロケットについては、小型版の試験に続いて、70kN級の実機エンジンの燃焼試験がいつ行われるかが次の確認点です。
あわせて、部品販売や設備の貸し出しによる収入が、必要とされる資金を補う規模になるかが、2030年の目標を左右します。

出典

ほしまる
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