SpaceX(スペースX)は日本時間2026年10月2日3時32分、アメリカのヴァンデンバーグ宇宙軍基地からFalcon 9(ファルコン9)ロケットを打ち上げました。
今回の打ち上げは、多くの会社や機関の衛星をまとめて運ぶ相乗り(ライドシェア)ミッション「Transporter-18」です。
ロケットは衛星や再突入カプセルなど130個の搭載物を積んで予定の軌道に到達し、それらを分離しました(出典:sorae「Transporter-18」打ち上げ記事。以下、打ち上げの数値は同記事によります)。
3行で分かるポイント
- スペースXが1回の打ち上げで、衛星など130個の搭載物を宇宙へ運びました。
- グーグルの「宇宙でAIの計算をする」構想の試作衛星や、衛星を修理・延命する機体の初号機が含まれています。
- 130個のうち41個は、別の小型輸送機に載ったまま運ばれ、あとで分離されます。
まず押さえたい背景
相乗りミッションは、乗り合いバスのように、ひとつのロケットに多くの顧客の衛星を一緒に積んで打ち上げる方式です。
ロケットを1機まるごと借りるより、小さな衛星を持つ会社が宇宙へ行きやすくなります。
Transporter-18は、スペースXの小型衛星相乗りプログラムの18回目にあたります。
今回の搭載物には、名刺箱ほどの規格化された超小型衛星(キューブサット)、それより大きめの小型衛星、他社の衛星に機器だけを載せてもらうホステッドペイロード、軌道間輸送機が含まれます。
軌道間輸送機は、ロケットから切り離されたあとに自分のエンジンで軌道を変え、積んできた衛星を別の場所で放出する「宇宙の配送車」のような機体です。
主な顧客を紹介します。
Planet(プラネット)はサンフランシスコに本社を置き、多数の衛星で地球を高い頻度で撮影し、その画像やデータを政府や企業に提供している会社です。
Starfish Space(スターフィッシュ・スペース)はアメリカのシアトルに本社を置き、軌道上の衛星にドッキングして寿命を延ばしたり、役目を終えた衛星を処分したりする「衛星サービス」に取り組む会社です。
Varda Space Industries(ヴァーダ・スペース・インダストリーズ)はカリフォルニア州エルセグンドに拠点を置き、無重力に近い軌道上で材料を処理して地球に持ち帰る事業を手がけています。
ICEYE(アイスアイ)はフィンランドで創業した会社で、SAR衛星を多数運用しています。
SAR衛星は、電波を地表に当てて跳ね返りから画像を作る衛星で、雲があっても夜でも撮影できます(出典:ICEYE「Company」)。
何が発表されたか
打ち上げは日本時間10月2日3時32分、ヴァンデンバーグ宇宙軍基地のSLC-4E発射台から行われました。
ロケットは改良型のFalcon 9 Block 5です。
搭載物の分離は打ち上げの約54分後に始まり、約11分かけて行われました。
130個のうち41個は、4機の軌道間輸送機に載って運ばれています。
このほか、地球へ帰還するための再突入カプセルを持つ宇宙機が2機含まれています。
注目の搭載物のひとつが、グーグルの試作衛星「Project Suncatcher M1」です。
Project Suncatcherは、太陽光が地上よりずっと安定して得られる低軌道で、機械学習(AI)の大規模な計算ができるかを確かめる研究計画です。
グーグルによれば、低軌道の太陽電池パネルは地上の最大8倍の電力を生み出せます。
M1には、グーグルがAIの計算用に開発した専用チップ(TPU)が載っていて、打ち上げの激しい振動、宇宙の放射線、真空での熱の問題にチップがどこまで耐えられるかのデータを集めます。
この衛星はPlanetと共同で開発されました(出典:Google「Project Suncatcher」解説ページ)。
ほかにも、Starfish Spaceにとって初めての衛星サービス機「Otter」が搭載されていました。
Varda Space Industriesの再突入カプセル「W-8」「W-9」、Planetのハイパースペクトル衛星「Tanager-2」、ICEYEのSAR衛星、イタリアの地球観測プログラム「IRIDE」の衛星も含まれます。
ハイパースペクトル衛星は、光を数百もの細かな色(波長)に分けて撮ることで、目では区別できない物質の違いを見分けられる衛星です。
宇宙業界にとっての意味
今回の打ち上げでは、地球観測、衛星サービス、軌道上での材料処理、宇宙でのAI計算の試験といった、目的の違う130個の搭載物が1機のロケットに集まりました。
顧客もアメリカ、フィンランド、イタリアの企業やプログラムにまたがっています。
小型衛星を開発する会社にとって、自前でロケットを用意するのは大きな負担です。
相乗りなら決まった日程の便に空きを予約するだけで済むため、新しい事業を軌道上で試す最初の一歩として使いやすくなります。
今回もOtterの初号機や、グーグルの研究計画の最初の試作衛星が、この方式で宇宙へ運ばれました。
さらに、41個が軌道間輸送機に積まれていた点も見逃せません。
相乗りでは本来、すべての衛星がほぼ同じ軌道に放出されます。
軌道間輸送機を組み合わせることで、相乗りの安さを生かしながら、それぞれの衛星をより希望に近い軌道へ届ける運び方が広がっています。
今後の注目点
打ち上げと分離はスタート地点で、各機体が軌道上で予定どおり動くかはこれから分かります。
軌道間輸送機に載った41個は、このあと順に放出されます。
グーグルは、Project Suncatcherの次の段階として、2027年に2機の衛星でレーザーによる衛星間通信を試す計画を示しています。
M1が集めるTPUの耐久データは、宇宙でAIの計算をする構想が成り立つかを判断する最初の材料になります。
Varda Space Industriesの「W-8」「W-9」は再突入カプセルを持つ機体なので、今後の地球への帰還も節目になります。
出典
- sorae「スペースX、ライドシェアミッション『Transporter-18』の打ち上げを実施 130のペイロードを軌道投入」
- Google「Project Suncatcher」解説ページ
- Planet 公式サイト
- Starfish Space 公式サイト
- Varda Space Industries 公式サイト
- ICEYE「Company」