米国東部夏時間2026年10月1日午後11時54分、SpaceXの大型ロケット「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」が、米国の偵察衛星を担う政府機関NRO(国家偵察局)の機密衛星を載せて打ち上げられました。
発射場所はフロリダ州にあるNASAケネディ宇宙センターの第39A発射台で、日本時間では10月2日午後0時54分にあたります。
NROはこれまでFalcon 9ロケットで22回の打ち上げを行ってきましたが、Falcon Heavyを使うのは今回が初めてです(出典:Spaceflight Now「Falcon Heavy flies its first mission for U.S. spy satellite agency」)。
ミッション名は「NROL-97」です。
3行で分かるポイント
- 米国の偵察衛星を担う政府機関NROが、SpaceXの大型ロケットFalcon Heavyを初めて使いました
- 米宇宙軍が2025年に結んだ安全保障向けの打ち上げ契約で発注された、NROの任務として初めての打ち上げです
- 横に付いた2本のロケットは1か月前の宇宙望遠鏡の打ち上げで使った機体の再使用で、今回も着陸して回収されました
まず押さえたい背景
NRO(National Reconnaissance Office、国家偵察局)は、米国の偵察衛星(スパイ衛星)を扱う政府機関です。
偵察衛星は、安全保障のために宇宙から地上の様子などを観測する衛星で、今回の衛星も中身が公開されない機密扱いの衛星です。
Falcon Heavyは、Falcon 9の1段目(ブースター)を3本横に並べ、その上に2段目とフェアリングを載せたロケットです。
ブースターは打ち上げ直後の上昇を担う推進部分で、フェアリングは大気中を上昇するあいだ衛星を包んで守る先端のカバーです。
3本のブースターで合計27基の「マーリン1D」エンジンを使い、2018年に初めて打ち上げられました。
今回の打ち上げは、米宇宙軍の「NSSL(国家安全保障宇宙打ち上げ)」という枠組みで調達されました。
NSSLは軍や政府の衛星を打ち上げるサービスを民間から買う制度です。
現在の第3段階(フェーズ3)は2つの枠に分かれ、「レーン2」は信頼性への要求が最も厳しく、失敗が許されにくい衛星向けの約54回分の打ち上げを指します(出典:Via Satellite「SpaceX, ULA, Blue Origin Receive NSSL Contracts Worth Up to Nearly $14B」)。
何が発表されたか
NROL-97はFalcon Heavyとして14回目の打ち上げで、フロリダの海岸から北東方向へ上昇しました。
NROにとって、2025年にNSSLフェーズ3のレーン2契約で調達した任務のなかで、実際に打ち上げられた最初の例になります。
機体の使い方にも特徴があります。
中央のブースター(B1106)は新品で、今回は回収せずに使い捨てました。
両脇の2本(B1104とB1072)は、1か月前にNASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡を打ち上げた機体で、B1104は2回目、B1072は4回目の飛行です。
2本は打ち上げ後に発射地点の近くへ戻り、ケープカナベラルの着陸場(LZ-1とLZ-2)に着陸しました。
着陸の際には、音速を超えた機体が出す大きな衝撃音(ソニックブーム)が響きました。
NROによると、フェアリングも7月のNROL-95の打ち上げで使ったものの再使用です。
SpaceXはこの日、有人飛行の「Crew-13」と、多数の小型衛星をまとめて運ぶ「Transporter-13」を含めて合計3回の打ち上げを行いました。
1日に4本のブースターを着陸させたのは、同社にとって初めてです。
宇宙業界にとっての意味
今回の打ち上げで、NROは中身を公開しない機密衛星の打ち上げにも、再使用したブースターとフェアリングを使いました。
レーン2はNSSLのなかでも信頼性への要求が最も厳しい枠で、その枠で調達されたNRO任務の初めての打ち上げでもあります。
レーン2の契約は2025年4月に3社と結ばれました。
想定される約54回の任務のうち、SpaceXには28回が割り当てられる見込みで、同社の契約額の上限は59億ドルを超えます。
今回の打ち上げで、この契約にもとづくNRO任務の打ち上げが実際に始まりました。
今後の注目点
レーン2では、SpaceXに割り当てられる28回のうち、今後の打ち上げが順に続きます。
今後の注目点は、NROやほかの安全保障向けの任務で、どのくらいFalcon Heavyが選ばれるかです。
もうひとつの注目点は、ブースターやフェアリングの再使用が、機密性の高い任務でも続くかどうかです。
衛星そのものの中身は公開されないため、外から確認できるのは、使ったロケットや機体の飛行回数といった打ち上げ側の情報です。
出典
- Spaceflight Now「Falcon Heavy flies its first mission for U.S. spy satellite agency」
- Spaceflight Now「Falcon Heavy • NROL-97」
- Via Satellite「SpaceX, ULA, Blue Origin Receive NSSL Contracts Worth Up to Nearly $14B」 https://www.satellitetoday.com/launch/2025/04/06/spacex-ula-blue-origin-receive-nssl-contracts-worth-up-to-nearly-14b/