東京に拠点を置く衛星企業のアクセルスペースは2026年9月29日、7月に打ち上げた次世代地球観測衛星「GRUS-3」7機のうち4機で不具合が起きたと発表しました。
不具合があったのは、撮影した画像を地上へ送るための通信の仕組みです。
同社は、この4機では予定していた商用運用が難しいと判断しました。
残る3機では同じ現象は起きておらず、商用運用の開始に向けた確認を続けています。
3行で分かるポイント
- 7月に打ち上げた7機の観測衛星のうち4機で、撮った画像を地上へ送る通信が不調になり、予定していた商用運用は難しいと判断された
- 送信用の電波を強める回路の不具合が原因とみられ、同社は詳しい原因を調べている
- 残る3機では同じ現象は起きておらず、商用運用の開始に向けた確認が慎重に進められている
まず押さえたい背景
株式会社アクセルスペースは、東京・日本橋に拠点を置く2008年設立の宇宙ベンチャーです(出典:アクセルスペース「会社概要」)。
東京証券取引所グロース市場に上場する株式会社アクセルスペースホールディングスの完全子会社で、グループは2つの事業を持っています。
1つは、小型衛星について、設計・製造から打ち上げの手配、打ち上げ後の運用までをまとめて引き受ける「AxelLiner」です。
もう1つは、自社の衛星群で地球を撮影し、その画像データを農業や災害監視などの分野に提供する「AxelGlobe」です(出典:アクセルスペースホールディングス「サービス」)。
GRUSは、AxelGlobeのために同社が自ら運用する光学観測衛星(カメラで地表を撮る衛星)です。
GRUS-3はその次世代機で、1機の重さは約150kgです。
地上分解能は2.2mです。
地上分解能とは、画像の1画素が地上のどれくらいの広さに当たるかを示す値で、小さいほど細かいものまで写ります。
1機が一度に撮影できる幅は28.3kmで、7機を合わせると1日に最大230万km²を撮影できる設計です(出典:アクセルスペース「次世代地球観測衛星『GRUS-3』を2026年7月以降に打ち上げ」)。
このように多数の衛星を連携させて運用する仕組みを、コンステレーションといいます。
機数が多いほど、同じ場所を短い間隔で撮り直せます。
何が発表されたか
GRUS-3の7機は、2026年7月7日にSpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられました。
多くの衛星を1機のロケットに相乗りさせる「Transporter-17」というミッションで、7機すべてから最初の電波を受信しています(出典:アクセルスペース「次世代地球観測衛星『GRUS-3』7機の打ち上げおよび電波受信成功」)。
その後の初期運用で、GRUS-3B、3E、3F、3Gの4機に異常が見つかりました。
初期運用とは、衛星が軌道上で設計どおりに動くかを確かめ、本格的な運用に備える期間です。
異常が出たのは、撮影した画像データを地上へダウンロードするための高速通信系統でした。
観測衛星は、撮った画像を電波で地上局へ送って初めて利用者に届けられます。
この経路が使えなければ、撮影できても画像を届けられません。
同社は確認と復旧作業を続けましたが、9月28日の社内の委員会で「高速通信系統の復旧と予定していた商用運用は困難」とする結論が報告されました。
原因は、通信系統の中にある電力増幅回路の不具合とみられています。
電力増幅回路は、送信する電波を地上まで届く強さに引き上げる回路です。
詳しい原因は現在も調べられています(出典:アクセルスペース「AxelGlobe事業の小型衛星『GRUS-3』の不具合に関するお知らせ」)。
残るGRUS-3A、3C、3Dの3機では、同じ現象は起きていません。
同社は、商用運用の開始に向けた品質保証のための確認などを慎重に進めるとしています。
宇宙業界にとっての意味
GRUS-3は、AxelGlobeの観測能力を大きく広げるための機体でした。
2026年9月2日には、欧州を中心に光学衛星やレーダー衛星の画像を提供するAirbus Defence and Spaceと、GRUSの画像を販売する提携を発表しています。
同社はこの発表で、初期運用を終えたGRUS-3を加えて衛星群を10機以上に広げる計画を示していました(出典:Axelspace「Axelspace Announces Partnership with Airbus Defence and Space to Deliver Satellite Imagery to a Broader Market」)。
今回の発表で、この計画のうち4機分は予定していた商用運用が困難となりました。
衛星は打ち上げたあとに部品を交換できないため、軌道上で見つかった不具合はそのまま運用の制約になります。
同社は今後、開発プロセスを見直し、衛星の品質を高めるための施策を検討するとしています。
今後の注目点
まず注目されるのは、残る3機が品質確認を終えて商用運用に入れるかどうかです。
次に、電力増幅回路の不具合について、詳しい原因と、同じ設計の3機や今後の衛星にどう反映されるかが示されるかです。
業績への影響については、同社は9月29日の発表時点で具体的な数値を示していません。
ほしまる画像を撮れても地上へ送れないと、観測衛星の仕事は完結しないんだ。残る3機の確認がどう進むか、続報を待ちたいね。
出典
- アクセルスペース「AxelGlobe事業の小型衛星『GRUS-3』の不具合に関するお知らせ」
- アクセルスペース「会社概要」
- アクセルスペースホールディングス「会社情報」
- アクセルスペースホールディングス「サービス」
- アクセルスペース「次世代地球観測衛星『GRUS-3』を2026年7月以降に打ち上げ」(PR TIMES)
- アクセルスペース「次世代地球観測衛星『GRUS-3』7機の打ち上げおよび電波受信成功」
- Axelspace「Axelspace Announces Partnership with Airbus Defence and Space to Deliver Satellite Imagery to a Broader Market」
- SPACE CONNECT「アクセルスペース『GRUS-3』4機で不具合|予定していた商用運用は困難に」