イタリアの大手携帯電話会社Fastweb + Vodafoneは、米SpaceXの衛星通信Starlinkと組み、スマートフォンを衛星に直接つなぐ試験をイタリア中部ウンブリア州で行いました。
この試験は2026年9月末に完了しています。
イタリア語のニュースサイトKey4biz(キーフォービズ)は、携帯電話の電波が届かない山間部で、衛星経由のWhatsAppビデオ通話に成功したと報じました(出典:Key4biz「Fastweb + Vodafone, la prima videochiamata WhatsApp con Starlink in Umbria. Il test di Key4Biz」)。
3行で分かるポイント
- 携帯電話の電波が届かないイタリアの山間部で、普通のスマートフォンを衛星につないでビデオ通話ができました。
- 試験は約3か月続き、地上の基地局の代わりに、上空約360kmの衛星に積んだアンテナが電波をやり取りしました。
- 一般向けのサービス開始時期や料金は、まだ決まっていません。
まず押さえたい背景
Fastweb + Vodafoneは、イタリアの通信会社です。
スイスの通信大手Swisscomが2024年12月31日にVodafone Italiaの買収を完了し、自社の子会社だったFastwebと統合して誕生しました。
携帯電話2,000万回線以上と固定回線560万回線を抱え、Fastweb、Vodafone、ho.の各ブランドで通信サービスを提供しています(出典:Fastweb「Swisscom completes the acquisition of Vodafone Italia. Fastweb + Vodafone is born」)。
Starlinkは、SpaceXが運用する衛星通信サービスです。
今回使われたのは、その中でも「Direct to Cell(ダイレクト・トゥ・セル、D2C)」と呼ばれる技術です。
通常、スマートフォンは地上の基地局(携帯電話の電波を送受信するアンテナ設備)とつながっています。
基地局が無い山奥や海の上では、電波が届きません。
D2Cでは、この基地局の役割を宇宙の衛星が担います。
専用の衛星電話ではなく、対応する市販のスマートフォンが、低軌道(高度数百kmの比較的低い軌道)を回る衛星と直接通信します(出典:Key4biz「Fastweb + Vodafone, la prima videochiamata WhatsApp con Starlink in Umbria. Il test di Key4Biz」。以下、試験の内容は同記事によります)。
Fastweb + VodafoneとStarlinkは、2026年7月16日に、イタリア中部のアペニン山脈でD2Cを試験する合意を発表していました(出典:Key4biz「Accordo Fastweb-Starlink per sperimentare per la prima volta il Direct to Cell in Italia」)。
何が発表されたか
試験は約3か月間行われ、9月末に完了しました。
場所はウンブリア州ペルージャ近郊のアペニン山脈で、携帯電話の電波が届かない地域です。
試験では、Fastwebが持つ2600MHz帯の周波数を、一時的な使用許可のもとで使いました。
スマートフォンの電波は、高度360kmの低軌道を回る衛星に積まれた携帯電話用アンテナに届きます。
衛星の通信エリア(セル)は50平方キロメートルとされます。
Key4bizによると、通信容量は地上の携帯電話網より限られるものの、WhatsAppを使うには十分です。
Key4bizは、この環境でWhatsAppのビデオ通話を試し、成功したと報じています。
利用には条件があり、空が見える場所、つまり衛星との間をさえぎる物が無い場所にいる必要があります。
試験段階で使えるサービスは限られています。
Fastwebの案内では、SMSの送受信、WhatsAppなどのメッセージアプリ、Google Mapsなど一部のアプリが対象です。
通常の音声通話と緊急通報には対応していません。
対応機種の一覧に載っていないスマートフォンでは、SMSだけが使えます(出典:Fastweb「Starlink」)。
現時点の利用者は業界関係者に限られ、一般の契約者はまだ使えません。
宇宙業界にとっての意味
衛星とスマートフォンの直接通信は、文字のメッセージから始まりました。
今回の試験では、文字より多くのデータを連続して送るビデオ通話が、イタリアで運用中の携帯電話会社の周波数を使って成立しました。
D2Cは、すでに米国で携帯電話会社T-Mobileがサービスとして提供しています。
欧州でも、大手の携帯電話会社が自社の周波数で試験を進めています。
地上に基地局を建てにくい山間部のような場所を、衛星で補う使い方です。
一方で、試験段階では電話網経由の通常の音声通話と緊急通報に対応しておらず、使えるのは屋外に限られます。
今回の成功は、商用化に向けて技術が使えるかどうかを確かめる段階の成果です。
今後の注目点
Fastweb + Vodafoneは、衛星経由の接続サービスを「Sat Mode」として通常の料金プランに加える方針で、その方式は今後決めるとしています。
提供開始の時期や料金は決まっていません。
今後は、正式サービスの開始時期と料金、対応機種の一覧、電話網経由の通常の音声通話や緊急通報への対応がいつ加わるかが焦点です。
さらに、2600MHz帯を衛星通信に使うための、イタリアでの正式な周波数のルールづくりも注目点になります。
出典
- Key4biz「Fastweb + Vodafone, la prima videochiamata WhatsApp con Starlink in Umbria. Il test di Key4Biz」
- Fastweb「Swisscom completes the acquisition of Vodafone Italia. Fastweb + Vodafone is born」
- Fastweb「Starlink」
- Key4biz「Accordo Fastweb-Starlink per sperimentare per la prima volta il Direct to Cell in Italia」