サウジアラビアの通信大手stc groupと、アメリカの衛星メーカーAstranisが、サウジアラビア向けの専用通信衛星を配備する契約を結んだと2026年9月10日に発表しました。
衛星はAstranisが手がける小型の静止衛星で、2027年の配備が予定されています。
どの地域へどれだけ電波を届けるかといった設定を、stc group自身が決められる契約です。
3行で分かるポイント
- stc groupは、自社だけが使う通信衛星1機をAstranisに発注し、2027年の配備を目指しています
- 衛星は赤道上空およそ3万6,000kmの静止軌道に置かれ、地上のアンテナを同じ方向へ向けたまま使えます
- 電波の割り振りと通信データの扱いを自分たちの側で決められる点を、両社は契約の狙いとして挙げています
まず押さえたい背景
stc groupは、サウジアラビアに本社を置く通信・デジタルサービスの企業グループです。
携帯通信や固定通信に加えて、データセンターや海底ケーブルといった通信インフラ、クラウド、サイバーセキュリティ、IoT、デジタル決済、動画配信などを手がけ、サウジアラビア、クウェート、バーレーンで通信事業を展開しています(出典: stc group「Group Subsidiaries」)。
Astranisは、アメリカの北カリフォルニアに本社と工場を構える衛星メーカーです。
設計から製造、試験、軌道上での運用までを自社で行い、約500人が働いています(出典: Astranis「stc group and Astranis advance Saudi Arabia’s connectivity with dedicated satellite」)。
主力製品は「MicroGEO」と呼ぶ小型の静止衛星で、2023年に打ち上げたArcturus以降、5機が軌道上にあり、10機以上を受注済みとしています。
同社はこの製品を、高い軌道向けの小型で高性能な衛星という新しい区分だと位置づけ、1つの顧客が専用に使える衛星ブロードバンドを売りにしています。
静止軌道は、赤道上空の高度およそ3万6,000kmにある円軌道です(出典: 日本天文学会「天文学辞典 静止軌道」)。
衛星が地球を一周する時間と地球の自転周期が一致するため、地上からは空の同じ方向に止まって見えます。
通信衛星や放送衛星をここに置けば、地上のアンテナを動かさず、同じ方向へ向けたままにできます。
何が発表されたか
発表されたのは、stc group専用の通信衛星1機をAstranisが製造し、2027年にサウジアラビアの通信網へ衛星回線を供給するという内容です。
stc groupは、衛星に積む通信機器の設定と、電波を届けるカバー範囲を自社の判断で決められます。
通信データは地域内に留め、企業向けの水準のセキュリティで扱うとしています。
stc groupでキャリア・ホールセール部門を統括するMohammad Alabbadi氏は、宇宙が自社の事業基盤の重要な一層になり、専用の衛星回線が、途切れにくく安全な通信を届けるうえで中心的な位置を占めるようになったと述べています。
AstranisのCEOで共同創業者のJohn Gedmark氏は、各国が重要な通信網とデータを自国の管理下に置くことを求めており、それに応えるために同社を立ち上げたとしています。
この衛星は、Astranisがまとめて打ち上げる「Block 3」の一群に含まれます。
Via Satelliteの報道では、Block 3はSpaceXのFalcon 9ロケット1機を専用に使って2027年第1四半期に打ち上げる計画で、衛星は部品を組み上げて機器をつなぎ、試験で性能を確かめる工程に入っています。
契約金額は両社とも公表していません。
宇宙業界にとっての意味
今回の契約で目を引くのは、衛星1機まるごとを1つの通信事業者が専用で使う形をとった点です。
Astranisは今回の分を含めて10機以上を受注しており、国家規模の通信事業者がその顧客に加わりました。
小型の静止衛星を1顧客専用に売るという商売の形が、大手通信会社の調達先としても選ばれた例になります。
通信網とデータを自分たちの管理下に置きたいという需要は、Gedmark氏の発言にも、データを地域内に留めるという契約条件にも表れています。
衛星通信は、地上にケーブルや基地局を敷けない場所へも電波を届けられます。
そのうえで、どの地域に電波を厚く配分するかを自社で決められることが、今回stc groupが専用衛星を選んだ理由として説明されています。
今後の注目点
次の節目は、2027年に予定されている打ち上げと、その後のサービス開始です。
打ち上げ後に、この衛星がどの周波数帯でどのようなサービスを提供し、静止軌道上のどの位置に置かれるのかが、具体的な使い道を知る手がかりになります。
Astranisにとっては、受注済みの10機以上を順に軌道へ送り、運用に入れられるかが問われる段階が続きます。
ほしまる静止軌道は、赤道の上をぐるりと一周する細い輪のような場所なんだ。ぼくが地球を離れて振り返ったときも、そこだけ衛星が数珠つなぎに並んでいたよ。