宇宙旅行の値段はいくら?公式に確認できる価格と、非公表の理由

宇宙旅行の値段はいくら?公式に確認できる価格と、非公表の理由

宇宙旅行の値段、検索するたびに金額がバラバラで確信が持てない、という方へ。

答えを先に書きます。
会社が価格を公式に出している区分と、出していない区分があります。
検索で見かける金額の多くは後者、つまり過去の落札額や報道由来の推測値です。

この記事は、宇宙の科学と宇宙産業の情報を一次情報と整合させて発信するASTROWORKS編集部がまとめています。

この記事で分かることは次の通りです。

  • 飛ぶ高度で4つに分かれる価格帯と、公式に確認できる金額
  • 検索で出てくる金額の出どころ(公式価格・落札額・推測値)の見分け方
  • ISS滞在型が数十億円規模になる理由と、日本発の成層圏気球で公表されている費用

読み終えるころには、どこかで見かけた金額を「これは公式価格か、落札額か、それとも推測か」と自分で仕分けられるようになります。

ほしまる

値段の話はね、「いくらか」より「誰がその数字を言ったか」のほうが大事なんだよ。ぼくと一緒に、出どころから見ていこうね。

※記事の要点は、以下のスライドでもサッと確認できます。

目次

宇宙旅行の値段は、飛ぶ高度で4つの価格帯に分かれる

高度で分かれる4つの区分

宇宙旅行の価格は連続していません。
どこまで上がるかで、桁がまとめて動きます。

区分代表的な高度飛行・滞在時間公表されている価格
成層圏気球18,000〜25,000m4〜6時間1回あたり2,400万円(岩谷技研)/1席5万ドル(World View・販売継続は現在未確認)
サブオービタル飛行約88km〜100km全飛行11分〜約70分(うち無重量状態 数分)1席75万ドル(ヴァージン・ギャラクティック)/非公表(ブルーオリジン)
軌道・ISS滞在約400km8〜18日非公表
月周辺地球周回軌道より遠方ー価格を提示した商品を確認できず

この表で先に断っておきたいことがあります。
4つの区分のうち、金額が公式に確認できるのは上の2区分だけです。
しかも成層圏気球の2つは、片方が1回あたりの費用、もう片方が1席あたりの価格で、単位がそろっていません。

高度20kmの成層圏気球、高度100kmのサブオービタル、高度400kmの軌道・ISS、月周辺という4つの区分を高度順に並べた図
宇宙旅行の区分は飛ぶ高度で分かれる。高度20km前後の成層圏気球、高度80〜100kmのサブオービタル、高度400kmの軌道・ISS滞在、さらに遠い月周辺という4段。高さの軸は圧縮して描いている。(図解はイメージです)

価格差を生んでいるのは、飛ぶ距離ではありません。
効いてくるのは、そこに留まる時間と、持ち上げなければならない質量です。
気球は4時間浮いていても燃料をほとんど使いませんが、ISSまで人を運ぶには秒速8km近くまで加速する必要があります。
厳密には異なりますが、製造業やITの調達に携わった経験がある方なら、仕様が一段変わると見積もりが桁で跳ねる感覚に近いものです。

ほしまる

ぼくも打ち上げのときがいちばん大変だったんだ。宇宙は「行く」より「留まる」ほうが、ずっとお金がかかるんだよ。

成層圏気球は宇宙空間には出ず、高度20km前後をゆっくり飛ぶ

この区分は、厳密には宇宙空間に出ません。
それでも「宇宙旅行」として販売されています。

岩谷技研は、成層圏内の高度18,000〜25,000mを飛行する遊覧フライトを公表しています(出典: 岩谷技研 プレスリリース「岩谷技研、世界初の宇宙遊覧フライト実現に向け共創メンバーを追加募集」2026年4月28日)。
同社が運営するOPEN UNIVERSE PROJECTの技術ページには、最高到達高度25km、飛行時間4〜6時間、そして「2,400万円 1回あたりの費用」という表記があります。

アメリカのWorld View(ワールドビュー)も成層圏気球を手がけており、公式の申込ページに1席5万ドル、申込金として1席500ドル(返金不可)と表示されています。
ただし、この価格表示が今も生きているかは別の話です。
販売継続は現在未確認で、事情は後半で扱います。

この区分の特徴は、価格の安さそのものよりも、体にかかる負担の軽さにあります。
ロケットのような激しい加速がないため、訓練の負担が軽く、飛行時間は数時間に及びます。
気球はゆっくり上昇し、ゆっくり降りてきます。

ただし高度20km前後は、後で触れる宇宙の境界(80km・100km)のはるか下です。
真っ黒な空と丸い地平線は見えますが、無重量状態は体験できません。
「宇宙に行く」ではなく「宇宙のような景色を見る」区分。
そう理解しておくと、価格差にも納得がいくはずです。

サブオービタルは数分の無重力を買う区分で、価格が公表されている

サブオービタル飛行は、地球を周回せずに放物線を描いて戻ってくる飛び方です。
上がって、数分間浮いて、落ちてくる。それだけです。

放物線を描いて戻るサブオービタル飛行と、地球を回り続ける周回軌道を比べた図。高度80kmと100kmの境界線も示す
サブオービタル飛行は上がって落ちてくる放物線の軌跡で、無重量状態は数分。周回軌道はまわり続ける飛び方で、必要な速度が桁違いになる。破線は高度80km(FAAの基準)と高度100km(カーマンライン)。(図解はイメージです)

ここで無重力と呼ばれる状態は、正確には無重量状態です。
重力が消えるわけではなく、機体と乗員がそろって落下し続けるため、体重を感じなくなります。

到達高度は会社によって違います。
カーマンラインは、国際航空連盟が航空と宇宙の境界として使う高度100kmの線です(出典: FAI「100km Altitude Boundary for Astronautics」)。
ブルーオリジンのニューシェパードは、11分の飛行でカーマンラインを越えると公表しています。
ヴァージン・ギャラクティックは2024年6月のGalactic 07で最高到達高度54.4マイル(約88km)を記録しました。
アメリカ連邦航空局(FAA)は高度50マイル(約80km)以上に達した搭乗者を宇宙到達者として扱うため、同社の飛行はFAAの基準は満たし、カーマンラインには届いていません。

価格が公表されているのも、この区分の特徴です。
ヴァージン・ギャラクティックは1席75万ドルという金額を決算資料に記載しています。
滞在時間が数分と短く、機体を繰り返し使える設計であることが、億単位に届かない価格につながっています。

軌道・ISS滞在は高度400kmに数日から数週間とどまる区分

ここから桁が変わります。
理由は単純で、地球を回り続けるために必要な速度が段違いだからです。

ISSは高度およそ400km(250マイル)を、90分で地球を1周する速さで飛んでいます(出典: NASA「International Space Station」)。
放物線を描いて戻るサブオービタル飛行と違い、この区分では落ち続けながら永久に地面に届かない速度まで加速します。
そこに、滞在している間の費用が上乗せされます。

地球を背景に軌道上を飛ぶ国際宇宙ステーション
高度およそ400kmを90分で地球を1周する国際宇宙ステーション。軌道・ISS滞在型の宇宙旅行は、ここに数日から数週間とどまる区分にあたる。 Credit: NASA

滞在期間は「数日から数週間」と幅があります。
NASAが公開している民間宇宙飛行士ミッションの実績では、2022年4月のAx-1が17日間、2023年5月のAx-2が8日間、2024年1月のAx-3が18日間、2025年6月のAx-4が18日間でした(出典: NASA「Private Astronaut Missions」)。
2週間前後を上限と決めつけると実態からずれます。

NASAはこうした民間ミッションを無制限に受け入れているわけではありません。
短期の民間宇宙飛行士ミッションを年に2回までとする方針を示しています(出典: NASA「NASA Updates Private Astronaut Mission Pricing Policy on Space Station」)。
枠が限られていることも、この区分の価格を押し上げる要因です。
なぜ数十億円規模になるのかは、この記事の後半で数字とともに扱います。

月周辺は計画は語られているが、運航実績のある商品はまだない

月をかすめて戻る飛行や、月を回る旅の構想は、たびたび発表されてきました。
ただし、料金を提示して販売されている商品は確認できませんでした。

ここで効いてくるのが、発表を2種類に分けて考える習慣です。
ひとつは「こういう計画がある」という構想や契約の発表。
もうひとつは「この条件で、この金額で売っています」という商品の告知です。
前者は資金調達や提携のタイミングで出ることが多く、実施時期が動いたり、静かに消えたりします。

月周辺については、日付や金額の入った計画名がいくつも流れています。
ただし一次情報までさかのぼれるものは、現時点では見当たりません。

金額を見たときは「その数字は誰の口から出たものか」を一段さかのぼるだけで、かなり整理できます。
会社の公式発表なのか、契約の相手が語ったものなのか、報道が関係者から聞いた話なのか。
月周辺の旅行は、この見分けがいちばん試される区分です。

価格を公式に示している会社は、いまのところ限られる

いちばん確度が高い数字

読者がいちばん欲しいのは、出どころのはっきりした数字のはずです。
現時点で最も確度が高いのは、ヴァージン・ギャラクティックの1席75万ドルです。

同社は2025年第4四半期および通期の決算発表で、宇宙飛行体験の価格を75万ドルと明記しました。
同じ発表のなかで、商業運航は2026年第4四半期に開始する見込みだとしています。
2機目の宇宙船は2026年第4四半期後半から2027年第1四半期前半にかけて就航する見込みだと説明されています(出典: Virgin Galactic「Virgin Galactic Announces Fourth Quarter and Full Year 2025 Financial Results and Provides Business Update」2026年3月30日)。

同じ「75万ドル」でも、どこに書かれていたかで信頼度は変わります。
決算発表は投資家向けの開示なので、出どころの示されていない金額とは性質が違います。

なお、この金額はドル建てです。
円に直した額は為替次第で動くため、この記事では原文の通貨のまま記載します。

いま買えるとは限らない、という但し書きが付く

価格が公表されていることと、いま申し込めることは別の話です。
ここを混同すると、値段を調べた意味が半分なくなります。

ヴァージン・ギャラクティックの公式サイトには、宇宙飛行体験が現在すべて予約済みである旨が表示されています。
そのうえで、2026年秋の予約受付に向けて関心登録を受け付ける案内が出ています。
価格は分かる、けれども棚には在庫がない、という状態です。

同じことが成層圏気球の側でも起きています。
World Viewの申込ページには1席5万ドル、申込金500ドルという表示が残っています。

その一方で企業サイトは「World View is now part of Ondas Sentinel」と掲げ、防衛・情報収集向けの情報サービス事業を前面に出す構成に変わりました。
Ondasによる買収完了は2026年4月1日で、遊覧飛行の販売が続いているという告知は公式サイトから確認できません(出典: World View(Ondas Sentinel)公式サイト)。
価格表示だけが残っている状態と考えたほうが、実態に近いはずです。

価格は「公表されている金額」と「いま買える金額」を分けて見る必要があります。
宇宙旅行の分野では、この2つがずれている状態がむしろ普通です。
価格表を見つけたら、同じ会社の予約ページや最新の告知まで一続きで見ておくと、判断を誤りにくくなります。

よく見る金額が、会社の公式価格とは限らない

落札額は市場価格ではない

検索して出てくる「◯◯社は◯万ドル」の多くは、公式の販売価格ではありません。
落札額、過去の契約額、報道由来の推測値が混ざっています。

金額の出どころを確度順に並べた階段図。上から決算資料、公式ページ、落札額、報道の推測
同じ金額でも、どこに書かれていたかで確度が変わる。上場企業の決算資料がいちばん硬く、公式ページの価格表示、一点物の落札額、報道由来の推測値と下がっていく。(図解はイメージです)
ほしまる

ぼくの故郷でも、値札のない品物ほど噂の金額がふくらむんだ。数字を見たら、まず値札かどうかを確かめてね。

落札額は市場価格ではない

ブルーオリジンの名前とともによく出てくるのが、2,800万ドルという金額です。
同社の公式発表によると、これはニューシェパード初号機の座席がオンライン入札で2,800万ドルで落札されたときの金額で、落札額は同社の財団であるClub for the Futureへの寄付に充てられました(出典: Blue Origin「The very first seat on New Shepard sells for $28 million」)。

つまりこの金額は、寄付を兼ねた記念すべき1席への入札結果です。
歴史上初めて有人飛行する機体の、しかも最初の座席という一点物に値が付いたものと考えてください。
通常の販売価格とは性質がまったく違います。

厳密には異なりますが、美術品のオークションを思い浮かべると分かりやすいはずです。
著名な作家の代表作が高値で落札されても、その作家の他の作品が同じ値段で買えるわけではありません。
落札額は、その一点に対して支払われた金額でしかありません。

同社の公式ページで、一般向けの座席価格を示した記載は確認できませんでした。
他サイトで見た「ブルーオリジンは2,800万ドル」という表現に違和感を覚えたなら、その感覚は正しいものです。

非公表でも、高度と滞在時間は公表されている

価格が出ていない会社でも、比較の材料がないわけではありません。
飛行高度、滞在時間、機体の仕様は、各社が公表しています。

公表されている条件を横に並べると、次のようになります。

会社・機体到達高度飛行・体験時間無重量状態価格の公表状況
ブルーオリジン ニューシェパード高度100km(カーマンライン)超11分数分間座席価格は非公表
ヴァージン・ギャラクティック54.4マイル(約88km)離陸から着陸まで約70分(2024年6月のGalactic 07。離陸08:31・着陸09:41)数分間1席75万ドルを決算資料に記載
岩谷技研の気球18,000〜25,000m4〜6時間なし1回あたり2,400万円を技術ページに記載

高度と時間は各社の公式発表による数値です。
岩谷技研のキャビンは2名乗りの与圧構造で、内部を地上に近い気圧に保つ設計になっています。

条件がそろえば、価格が出たときに高いか安いかを自分で判断できます。
逆に、条件を見ないまま金額だけを並べても意味がありません。
高度20kmを4時間と、高度100kmを11分は、そもそも別の商品です。

厳密には別の話ですが、この見方は製造業やITの調達を経験した方には馴染みがあるはずです。
仕様書が先にあり、価格は後から乗る。
仕様が違うものを金額だけで比べても、安いか高いかは判定できません。
宇宙旅行の価格比較も、同じ順序で考えると足を取られずに済みます。

ISS滞在の桁が違うのは、輸送費と滞在費が実費で積み上がるから

ISS滞在が数十億円になる理由

この区分は、他の区分と違って公的機関が費用を試算した資料が残っています。
人を軌道まで運ぶ費用そのものが、すでに数十億円規模になります。

往復輸送費の上に滞在費が積み上がるISS滞在型の費用構造を示した積み上げ図
ISS滞在型の費用は、往復の輸送費の上に滞在中の資源利用料が積み上がる二層構造。NASAは基準能力を超えて使う分の全額償還を求めている。(図解はイメージです)
ほしまる

40年ぶんの旅で学んだんだけど、宇宙って「切符代」より「泊まり賃」のほうが読みにくいんだ。両方見ないと総額は見えないよ。

1席あたりの輸送費は、NASAの監察総監が試算している

民間企業の言い値ではなく、公的機関の監査部門が出した数字があります。
NASAの監察総監室(OIG)は、報告書のなかで商業乗員輸送の座席単価を試算しています。

射場から夜空へ上昇する商業乗員輸送のロケット
人を軌道へ運ぶ商業乗員輸送の打ち上げ。往復の座席をどう確保するかが、ISS滞在型の費用の土台になる。 Credit: NASA

1回の飛行に4人が搭乗すると仮定し、公開情報を用いた場合、1席あたりの平均費用はボーイングでおよそ9,000万ドル、スペースXでおよそ5,500万ドルと推計されています(出典: NASA Office of Inspector General「NASA’s Management of Crew Transportation to the International Space Station」Report No. IG-20-005、2019年11月14日。以下、ソユーズ座席の金額も同報告書の記載によります)。

同報告書は、この金額を確定した販売価格としてではなく、4人搭乗という仮定と公開情報にもとづく推計として提示しています。
契約総額から開発費と試験飛行の費用を差し引いて座席数で割った値であり、旅行商品として売られている金額ではありません。

それでも、この数字には意味があります。
ISS滞在型の旅行を成立させるには、往復の座席を確保しなければなりません。
その土台のコストが1席あたり数千万ドル規模である以上、旅行商品としての総額が数十億円に届くのは自然な帰結です。

なお、この報告書の時点は2019年11月です。
その後の契約や機体の状況までは反映されていません。

商業乗員輸送の1席あたり平均費用の推計をボーイングとスペースXで比べた棒グラフ
NASA監察総監室が公開情報と1回4人搭乗の仮定から試算した、商業乗員輸送の1席あたり平均費用。販売価格ではなく推計値で、時点は2019年11月。(図解はイメージです)

同じ座席でも、買う年によって価格はまるで違った

宇宙旅行の値段には、固定された相場がありません。
供給側の事情で、同じものが年ごとに大きく動きます。

ソユーズ宇宙船の座席がその実例です。
NASAは2006年以降、70席をおよそ39億ドルで購入しており、2006年から2020年までの完了分と計画分を平均すると1席あたり5,540万ドルでした。
ただし往復1回あたりの価格には、およそ2,130万ドルからおよそ8,600万ドルまでの開きがあります。
2017年以降に追加で確保した12席は総額およそ10億ドル、平均で1席7,970万ドルでした。

数字を並べ直すと、振れ幅がはっきりします。

区分1席あたりの金額
往復1回あたりの下限約2,130万ドル
往復1回あたりの上限約8,600万ドル
2006〜2020年の全期平均約5,540万ドル
2017年以降に確保した12席の平均約7,970万ドル

安いときと高いときで、4倍近い差があります。
性能が4倍になったわけではありません。
他に選択肢がない時期には価格が上がり、代替手段が見えてくると下がる。
それだけのことです。

ソユーズ座席の1席あたり金額を下限・全期平均・2017年以降の平均・上限で比べた棒グラフ
NASAが購入したソユーズ座席の1席あたり金額。往復1回あたりで約2,130万ドルから約8,600万ドルまで開きがあり、同じ座席でも買う時期で4倍近く動いた。(図解はイメージです)

この構造は、半導体や部材の調達を経験した方には見覚えがあるはずです。
供給元が1社に絞られた瞬間、同じ型番の値段が跳ね上がります。
宇宙輸送も同じ力学で動いてきました。
「宇宙旅行の相場はいくらか」という問いに一つの数字で答えられないのは、この変動があるからです。

日本人がISSに滞在した実例でも、支払額は公表されていない

2021年12月、実業家の前澤友作さんと、撮影を担当した平野陽三さんがISSに滞在しました。
JAXAは2人を宇宙飛行参加者と表記しています。
打ち上げは日本時間の12月8日午後4時38分、帰還は12月20日午後0時13分で、滞在はおよそ12日間でした(出典: JAXA 有人宇宙技術部門「ソユーズMS-20宇宙船(66S)ミッション」)。

飛行を手配したのはアメリカのスペース・アドベンチャーズです。
同社は2021年5月の発表で、2人がロシアのスターシティにあるガガーリン宇宙飛行士訓練センターで訓練を受けると明らかにしていました(出典: Space Adventures 公式発表 2021年5月13日)。

支払った金額は公表されていません。
公表されているのは相場のほうで、同社のトム・シェリー社長は打ち上げ前の2021年10月、ソユーズの座席は1席5,000万〜6,000万ドルの範囲だと語っています(出典: AFP「US firm sees ‘exciting’ moment as space tourism booms」2021年10月15日)。
これは前澤さんが実際に払った額ではなく、当時の市場価格についての発言です。

この幅は、さきに挙げたソユーズ座席の実績(約2,130万ドル〜8,600万ドル)の上寄りと重なります。
出どころの違う数字が同じあたりを指しているという意味では、ISS滞在型が数十億円規模になるという見立ての裏づけになります。

滞在にも費用がかかり、NASAは基準を超えた分の全額償還を求める

往復の座席を買えば終わり、ではありません。
ISSに滞在している間、乗客はISSの資源を使います。

NASAは民間宇宙飛行士ミッションの価格方針について、ISSの基準能力を超えるNASA資源の価値を全額償還する形だと説明しています(出典: NASA「Commercial and Marketing Pricing Policy」)。
基準能力に含まれるものとして、生命維持、訪問宇宙機への電力供給、乗員が使うノートPCやタブレット、データのダウンリンクが挙げられています。
これらを超えて使う分が、費用として乗ってきます。

具体的な単価も料金表として用意されています。
商業利用向けの表と、民間宇宙飛行士ミッション向けの表の2種類です。

費用は、往復の輸送費に滞在中の資源利用料が積み上がる構造です。
さらにNASAは短期の民間ミッションを年2回までとしており、枠そのものが希少です。
ISS滞在型に定価が付いていないのは、隠しているからではなく、ミッションごとに条件が変わるためだと考えられます。

日本発の宇宙旅行は成層圏気球が先行し、費用も公表されている

日本の読者にとって、いちばん距離が近い選択肢が成層圏気球です。
高度も時期も費用も、公式情報から確認できます。

岩谷技研は、成層圏内の高度18,000〜25,000mを飛行する宇宙遊覧フライトについて、2027年度以降の実施を予定していると発表しています。
同社が運営するOPEN UNIVERSE PROJECTの技術ページには、1回あたりの費用として2,400万円という金額が示されています。
共創パートナーにはJTBと日本航空が名を連ねています。

ほしまる

日本の空にも、宇宙の入口に手が届きかけている場所があるんだ。ぼくはそういう知らせを聞くのが、いちばん好きなんだよ。

日本の気球はすでに人を成層圏まで運んでいる

構想段階の話ではありません。
到達実績が、日付と数値付きで公表されています。

2024年7月17日、北海道十勝地方でフリーフライト有人飛行試験が行われ、最大到達高度20,816mの成層圏に到達しました。
使用されたのは、商業運航で使う機体と同型の2名乗り与圧キャビンです。
士幌町から離陸し帯広市に着陸するまで、飛行時間は4時間56分、飛行距離は41kmでした(出典: 岩谷技研 プレスリリース「宇宙遊覧商業運航へ向け、自社開発有人気球で国内初の高度20,816m到達」2024年7月18日)。

士幌町を離陸して高度20,816mに到達し帯広市に着陸した有人気球の飛行プロフィール図
2024年7月17日に北海道十勝地方で行われた有人飛行試験の飛行プロフィール。士幌町を離陸して最大到達高度20,816mへ達し、帯広市に着陸するまで4時間56分・飛行距離41km。(図解はイメージです)

この20,816mという数値が効いてくるのは、商業運航で想定されている高度帯が18,000〜25,000mだからです。
つまり、売ろうとしている高度に、すでに人を乗せて到達しています。
技術的な山をひとつ越えた状態だと理解してよいでしょう。

ただし、到達実績と商品化は別の話です。
試験飛行が成功することと、不特定多数の乗客を定期的に安全に運ぶことの間には、まだ距離があります。
飛行できる季節が限られる点も含め、商業運航の条件は今後詰められていく段階です。

搭乗の募集は始まっているが、条件は個別に決まる

搭乗客の募集は、すでに公式に告知されています。
ただし条件は募集ごとに変わります。

同社は2026年4月28日の発表で、2027年度以降に実施予定の宇宙遊覧フライトに搭乗する人を募集すると告知しました。
募集の対象はパイロット、共創パートナー、搭乗客の3種類で、それぞれに条件があるとしています。
募集条件の詳細は2026年8月頃に改めて発表する予定だと説明されていましたが、その告知は現時点では出ていません。

費用については、OPEN UNIVERSE PROJECTの技術ページに1回あたり2,400万円と記載されています。
同じページには、最高到達高度25km、飛行時間4〜6時間、直径1.7mの球形与圧キャビン、直径1.5mのドーム型アクリル窓といった仕様も並んでいます。
ただし、この2,400万円が1席あたりなのか、2名乗りキャビン1機あたりなのかを明示した記載は見当たりませんでした。

公式に分かっているのは、飛ぶ高度、実施予定の時期、そして1回あたりの費用です。
分かっていないのは、募集の具体的な条件と、1回あたりの費用が何人分を指すのかという点になります。
ここを曖昧にしたまま「日本なら2,400万円で宇宙へ行ける」と読むと、実態からずれます。

直径1.7mの球形与圧キャビンと直径1.5mのドーム窓、2名分の座席を示した断面図
技術ページに示されている与圧キャビンの仕様。直径1.7mの球形キャビンに2名が乗り、直径1.5mのドーム型アクリル窓から外を見る。1回あたりの費用は2,400万円と記載されているが、1席分か1機分かは明示されていない。(図解はイメージです)

よくある質問

宇宙旅行はいくらから行けますか

公式に価格が示されているもののなかでは、World Viewの成層圏気球が1席5万ドルで最も低い金額です。
ただし先述のとおり、遊覧飛行の販売が続いているかは未確認です。
日本の岩谷技研は1回あたり2,400万円、ヴァージン・ギャラクティックのサブオービタル飛行は1席75万ドルとなっています。

成層圏気球は宇宙空間まで上がらない区分であり、無重量状態も体験できません。
同じ「宇宙旅行」という言葉でも中身が違うため、金額の低さだけで並べると比較になりません。

宇宙旅行の値段は今後下がりますか

断定はできません。
参考になるのは、NASAが購入したソユーズ座席の往復価格が、およそ2,130万ドルからおよそ8,600万ドルまで動いた実績です。
価格は技術の進歩だけでなく、供給側の事情で上下してきました。

将来の価格見通しを公式に示している会社はほとんどないため、公表されている運航計画、たとえば商業運航の開始時期や機体の増備予定を手がかりに読むことになります。

ISSに滞在する宇宙旅行はなぜ数十億円になるのですか

理由は2つあります。
ひとつは往復の輸送費で、OIGの試算では1席あたりおよそ5,500万ドルから9,000万ドル規模です。
もうひとつは滞在中の費用で、NASAはISSの基準能力を超える資源の価値について全額償還を求める方針を示しています。

運ぶ費用と泊まる費用が別々に積み上がる構造になっています。

まとめ 宇宙旅行の値段は、確認できる数字とできない数字を分けて考える

宇宙旅行の価格を調べるとき、いちばん役に立つのは金額の一覧ではありません。
その数字がどこから来たのかを見分ける目です。

現時点で確認できていることを整理します。

  • サブオービタル飛行には、決算資料に記載された1席75万ドルという価格がある
  • 成層圏気球は1回あたり2,400万円(岩谷技研)という表示が公式ページに出ている
  • World Viewの1席5万ドルという表示も残っているが、先述のとおり販売継続は未確認
  • ISS滞在型は、往復の輸送費だけでOIGの試算で1席あたり数千万ドル規模になる
  • 日本発の気球は高度20,816mへの有人到達を済ませ、2027年度以降の実施を予定している

まだ分かっていないこともあります。

  • ISS滞在型を含む多くの商品の定価
  • 今後どこまで価格が下がるのか、その幅と時期
  • 月周辺を回る旅が商品として成立する時期

宇宙旅行の値段は、まだ相場と呼べるほど安定していません。
同じ座席が年によって4倍違ったソユーズの例が示すのは、この分野の価格が技術ではなく供給の都合で動いてきたという事実です。
価格表が固まるのは、選択肢が増えてからになります。

その意味で、いま出ている金額は「到達点」ではなく「途中経過」です。
数年後に同じ検索をしたとき、この記事の数字が古く見えているとしたら、それはこの分野が前に進んだということでもあります。

出典

ほしまる
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