JAXA宇宙戦略基金が国内打上げを調整できる実証機関リストを更新

JAXAは、宇宙戦略基金事業の「国内打上げが調整可能な軌道上実証機関登録リスト」を、2026年9月11日時点の内容に更新したと公表しました。
このリストは、基金の支援を受ける企業や大学が、開発した機器を宇宙で動かして確かめる相手先を探すための名簿です。
登録は常時受け付けられており、リストは随時更新されます。

3行で分かるポイント

  • JAXAが宇宙戦略基金事業の「軌道上実証機関登録リスト」を2026年9月11日時点の内容に更新した
  • この基金では、打上げ費用を計上する開発テーマは原則として国内から打ち上げることになっており、リストはその調整先を示すもの
  • 機器を預かって宇宙で動かす機関は常時登録でき、相談の窓口も置かれている
目次

まず押さえたい背景

宇宙戦略基金は、JAXAを結節点として産学官の宇宙活動を加速させるために設けられた基金です。
総額1兆円規模で、スタートアップをはじめとする民間企業や大学等を対象に、最大10年間の複数年度にわたる支援ができます。
対象は「輸送」「衛星等」「探査等」の3分野で、「市場の拡大」「社会課題解決」「フロンティア開拓」の3つを出口として掲げています(出典: JAXA宇宙戦略基金「宇宙戦略基金設立の目的・概要」)。

ここで鍵になるのが「軌道上実証」です。
新しく開発した部品や装置が設計どおり動くかを、実際に軌道へ上げて確かめる作業を指します。
真空、日向と日陰で大きく変わる温度、放射線といった宇宙特有の環境は、地上の試験設備だけでは再現しきれません。
そのため、実際に宇宙へ持ち込んで動かした実績が、機器を世に出すうえでの関門になります。

基金の基本方針では、打上げ費用や軌道上実証費用を計上できる技術開発テーマについて、打上げを円滑かつ確実に履行する観点から、原則として国内からの打上げとすると定めています(出典: JAXA宇宙戦略基金「国内打上げ原則」。以下、制度の内容は同ページの記載によります)。
そしてJAXAは、この原則を満たす実証手段を明確化・可視化するため、「国内打上げの調整が可能な軌道上実証機関」を登録制度で管理しています。
ここでいう軌道上実証機関とは、実証のための衛星やプラットフォーム、月面着陸ランダー、軌道間輸送機(OTV)などを運用する機関です。
軌道間輸送機は、ロケットから切り離されたあとに搭載物を目的の軌道まで運ぶ宇宙機を指します。

何が発表されたか

今回更新されたのは、この登録制度でまとめられているリストの最新版です。
リストは随時更新され、支援を受ける側が計画を立てたり調整したりするときに使われます。
登録の申請は常時可能で、専用の申請フォームから受け付けられています。

調整の実務を支えるしくみも用意されています。
JAXAはSpace BD株式会社に外部委託し、国内の宇宙輸送事業者や軌道上実証機関の対応可能枠の情報提供と、提案書の作成に必要となる調整に関する助言を行っています。
Space BDは東京都中央区の日本橋に本社を置く2017年設立の企業で、衛星打上げ事業、国際宇宙ステーション利用事業、技術プロジェクトマネジメント、宇宙機器の輸出入事業、教育事業を手がけています(出典: Space BD株式会社「会社概要」)。

登録側の顔ぶれも、各社の発表から確認できます。
東京都中央区に本社を置くアクセルスペースは、小型衛星の開発・運用事業「AxelLiner」と、複数の光学衛星による地球観測データ提供事業「AxelGlobe」を手がける企業で、軌道上実証サービス「AxelLiner Laboratory」での登録を2025年12月15日に公表しました。

宮城県仙台市のElevationSpaceは、宇宙環境利用・回収プラットフォーム事業と、有人拠点からの高頻度物資輸送事業を掲げる企業で、軌道上で実証して地上へ回収する衛星「ELS-R」と、回収カプセル「ELS-RS」での登録を2026年2月13日に公表しています。

宇宙業界にとっての意味

国内打上げ原則があるため、基金へ提案する段階で、どの手段で打ち上げ、どの機関の機体に載せて実証するかの見通しを立てておく必要があります。
開発する側から見ると、機器はできあがったのに載せてくれる相手が見つからない、という状態が起こり得ます。
登録リストは、その候補をJAXAの側で一覧にして示すことで、探す手間と時間を減らそうとするしくみです。

もうひとつは、実証サービスを事業として掲げる企業にとっての意味です。
アクセルスペースやElevationSpaceのように、他社の機器を預かって軌道上で動かすサービスを用意する企業が国内に出てきています。
基金の支援を受けるテーマが国内で実証先を探すことになれば、こうしたサービスがその候補になります。

今後の注目点

リストは随時更新され、登録も常時受け付けられています。
地球を回る小型衛星だけでなく、月面着陸ランダーや軌道間輸送機といった機体の登録が広がるかどうかは、今後の更新で見えてきます。

実証案件そのものも動き始めています。
アクセルスペースは、AxelLiner Laboratoryの2026年の第一号実証案件として、共同開発したリアクションホイールの軌道上実証を予定していると公表しました。

リアクションホイールは、衛星の中で円盤を回して機体の向きを変える姿勢制御の装置です。
名簿が整うだけでなく、そこに載った機関が実際に他社の機器を宇宙で動かした実績を積めるかどうかが、次の段階になります。

ほしまる

ロケットを打ち上げてくれる相手と、宇宙で機器を預かって動かしてくれる相手は、別々に探すことになるんだね。

出典

ほしまる
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