NATOの技術機関が予算の約25%を宇宙関連事業に投じると説明

北大西洋条約機構(NATO)で通信・ITシステムの調達を担う専門機関のトップが、業界誌Via Satelliteのインタビューで、機関の予算のおよそ25%を宇宙分野の取り組みに充てていると述べました。

インタビュー記事は2026年9月11日付で公開されました。
NATOは2026年7月、加盟8か国が各国の軍用衛星をひとつのネットワークにつなぐ構想を立ち上げたばかりです。

今回のインタビューでは、その構想の現在地と、NATO側が民間企業に向ける調達の姿勢が語られました。

3行で分かるポイント

  • NATOで通信・ITの調達を担う機関は常時300を超える事業を抱え、その予算の約25%が宇宙分野に向けられています。
  • 2026年7月、カナダやドイツなど8か国が、各国が所有したままの軍用衛星を相互につなぐ構想「HALO」を発表しました。最初の段階は、衛星同士を中継する通信衛星群の構築です。
  • NATOは2025年6月に初の商業宇宙戦略を公表し、調達手続きの簡素化と民間企業の参加拡大を掲げています。
目次

まず押さえたい背景

NATOは、ヨーロッパと北米の国々でつくる軍事同盟です。
今回インタビューに答えたディラン・ブラウン氏は、NATO Communications and Information Agency(NCIA)のトップであるゼネラルマネージャーを務めています。
NCIAは2012年7月1日に発足したNATOの技術部門で、本部はベルギーのブリュッセル、ほかにオランダのハーグ、ベルギーのモンス、ポルトガルのオエイラスに拠点があります。
仕事の中身は、指揮統制のための技術の調達、加盟国のシステム同士が問題なくつながるようにすること、防空の指揮統制システムの運用、そして24時間体制のサイバー防御です(出典: NATO「NATO Communications and Information Agency (NCI Agency)」)。

NATOが宇宙を陸・海・空・サイバーと並ぶ作戦領域と位置づけたのは、2019年のロンドン首脳会合でした。
2024年には、ドイツのラムシュタインにある連合空軍司令部に宇宙運用センターが置かれています。
衛星を使った監視では、2023年2月に始まったAPSS(Alliance Persistent Surveillance from Space、宇宙からの同盟持続監視)があります。

これは各国が持つ偵察衛星と民間の観測衛星を、データを融通し合う仮想的な衛星群としてまとめる仕組みで、「Aquila」と名づけられています。
新しい衛星を一から打ち上げるのではなく、すでにあるものをつなぎ直すという発想です。
NATOの公表では19か国が参加し、投資額は10億ドルを超えます(出典: NATO「NATO’s approach to space」)。

何が発表されたか

ブラウン氏によれば、NCIAは常時300を超える複雑な事業を動かしており、予算のおよそ25%が宇宙関連の取り組みに向けられています(出典: Via Satellite「NATO Invests for the New Era of Space Defense: Interview with NCIA GM Dylan Browne」)。
対象には、秘匿性の高い通信、民間の衛星通信サービスの調達、画像や情報の取得などが含まれます。

投資の全体像として、ブラウン氏は2025年に欧州の同盟国とカナダが中核的な防衛需要への投資を1,390億ドル超増やし、増加率はおよそ20%に達したと述べています。
直近のNATO首脳会議では、500億ドルを超える新規調達が発表されたとしています。
いずれも宇宙分野に限った金額ではなく、防衛全体の数字です。

宇宙で具体化しつつあるのがHALO(Hybrid Alliance Layered Operations in Space)です。
2026年7月7日、トルコのアンカラで開かれたNATO首脳会議の防衛産業フォーラムで、カナダ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、トルコの8か国が立ち上げを表明しました。

各国が自国の軍用衛星の所有と管理を続けたまま、それらを相互に接続して大規模な衛星ネットワークにするという構想で、高速通信、情報収集、ミサイル追跡を目的に掲げています(出典: NATO「NATO Allies join forces to develop high-end space capabilities」)。
現在は、多国間での構成、必要な性能、対象範囲、費用を話し合う検討段階にあり、実装は段階を分けて進めます。

第1段階は、既存および将来の各国の衛星をつなぐ「トランスポート・コンステレーション」の開発と提供です。
コンステレーションとは、多数の衛星を連携させてひとつのまとまりとして運用する仕組みを指す言葉です。

このうちトランスポート層と呼ばれるものは、地表を撮る衛星ではなく、衛星同士や地上との間でデータを中継する役目に特化しています。
開始時期はまだ決まっていません。

宇宙業界にとっての意味

予算の約25%という配分は、宇宙が同盟の通信・情報基盤のなかで小さくない位置を占めていることを示す数字です。
HALOの設計で目を引くのは、衛星の所有と管理を各国に残したまま接続する点です。
NATOは、この形をとることで、1か国だけで衛星隊列を運用する場合の費用・時間・カバー範囲の制約を乗り越えるとしています。

民間企業にとっては、調達の入り口が広がるかどうかが関心事になります。
NATOは2025年6月の国防相会合で初の商業宇宙戦略を承認し、同月24日に公開版を公表しました。
掲げているのは、宇宙関連企業がNATOと取引する機会を増やすこと、調達手続きの煩雑さを減らすこと、加盟国をまたぐ協力関係を強めることの3点です(出典: NATO「NATO releases Updated Defence Production Action Plan, Commercial Space Strategy and Rapid Adoption Action Plan」)。
実際に、既存の商業衛星を使って北極域の通信をつなぐNORTHLINKや、既存の商業宇宙監視サービスを試す試行事業SINBADのように、民間サービスを前提にした取り組みが動いています。

今後の注目点

HALOは構成・要求性能・範囲・費用を詰めている段階で、実装の開始時期は示されていません。
まず確認したいのは、第1段階にあたる中継用の衛星群に、どの企業がどのような形で関わるのかという点です。

参加国の広がりも論点になります。
7月の発表と同じ機会に、カナダがNATOの打ち上げに関する取り組みSTARLIFTに、スペインがAPSSに加わりました。
枠組みごとに参加国の顔ぶれが異なるため、それぞれがどこまで広がるかは個別に見ていく必要があります。
商業宇宙戦略が掲げた調達手続きの簡素化が、実際の契約という形でどう表れるかも、企業側が追う点になります。

ほしまる

ぼくが太陽系の外側を飛んでいたころ、地球に信号を届けるには大きなアンテナの空き時間をひたすら待ったんだ。中継してくれる相手が増えるって、そういう待ち時間の話でもあるんだよ。

出典

ほしまる
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