NASAは2026年9月9日、ワシントンD.C.の本部で、米国宇宙アカデミー(United States Space Academy)の設立を検討する大統領委員会の初会合を開きました。
あわせて、キャンパスをどこに置くかについて、全米の州から情報を募る手続きを始めています。
提出の締め切りは2026年10月26日午後6時(米国東部夏時間)で、州ごとに1件だけ受け付けます(出典: NASA「NASA Answers President’s Call to Establish United States Space Academy」)。
3行で分かるポイント
- アメリカ政府は、宇宙分野の科学者・技術者・宇宙飛行士などを育てる新しい国立の学校をつくると決め、NASAが準備を主導しています。
- NASAは各州に対し、キャンパスを置く土地の候補と、その土地がどれだけすぐ使えるか、地元がどんな支援を出せるかを示すよう求めています。
- 予定では2027年までに着工、2028年に最初の300人を暫定的な場所で受け入れ、2031年に恒久キャンパスを稼働させます。実行には議会が予算を付けることが前提です。
まず押さえたい背景
この動きの出発点は、2026年8月28日にトランプ大統領が署名した大統領令です。
宇宙分野の人材を増やすため、NASAが主導する連邦政府の教育機関を設立する方針を示しました(出典: The White House「Establishing the United States Space Academy」)。
大統領令は、大統領が行政機関に対して出す命令のことです。方針を定めて政府を動かす力はありますが、新しい予算を自分でつくることはできません。
この大統領令にも、実施は予算が確保されることを条件とする、という一文が入っています。
大統領令が直接つくったのは、学校そのものではなく「大統領委員会」です。
委員会は、政府の重要な案件について有識者や閣僚が集まって案をまとめ、大統領に助言する会議体を指します。
委員長はNASA長官、副委員長は科学技術と経済政策を担当する大統領補佐官、事務局長はNASA副長官が務めます。
国防を担当する閣僚や空軍長官、予算・国家安全保障の担当者も加わります。
委員会は署名から120日以内に、大統領へ報告書を出すことになっています。
報告書に盛り込むよう求められているのは、運営の枠組み、教育課程、卒業生に課す勤務義務、入学に必要な条件、設置場所の選定、そして実現に必要な立法措置を含む実施方法です。
つまり、学校の中身を決める作業は、まだこれからという段階です。
何が発表されたか
9月9日の初会合には、ジャレッド・アイザックマンNASA長官のほか、戦争長官、国家経済会議の責任者、空軍長官、米国政府の最高技術責任者らが出席しました。
アイザックマン長官は、政府内の関係機関がすでに作業に入っていることと、各州にとって国の中核となる教育機関の形づくりに関わる機会が生まれたことを述べています。
同じ日に始まったのが、キャンパス候補地に関する情報提供依頼(RFI)です。
RFIは、政府が正式な公募や契約の前に、関係者から条件やアイデアを集めるための手続きで、この段階では相手を選定しません。
各州は知事が指名した担当者を通じて、1件だけ回答できます。
NASAが求めているのは、アカデミーを支えるために使える資源の詳細に加えて、候補地の場所、用地がどこまで整っているか、環境・規制の面での条件、そして周辺にどのような産業や研究機関が集まっているかです。
提示されている日程は、2027年までに着工し、2028年に最初の300人の学生を暫定的な場所で受け入れ、2031年に恒久施設を運用開始するというものです。
マット・アンダーソンNASA副長官は、アカデミーの立地が成功の土台であるとしたうえで、各州に対して、インフラ、パートナーシップ、そして地域社会を含めた最も強い構想を出してほしいと述べました。
この水準の学生が持つ進学先の選択肢と競争できるものであることを条件として挙げています(以上、出典: NASA「NASA Answers President’s Call to Establish United States Space Academy」)。
宇宙業界にとっての意味
宇宙産業で働く人をどう増やすかは、打ち上げ回数や事業規模の拡大に直結する課題です。
ホワイトハウスのファクトシートは、2030年までに米国内で年間1,000回を超える打ち上げと再突入を行う目標に触れ、必要な技術分野の教育課程と卒業生がまだ足りていないという認識を示しています(出典: The White House「Fact Sheet: President Donald J. Trump Establishes a Commission to Design the United States Space Academy」)。
アカデミーは、この不足に国の制度で対応しようとする試みにあたります。
一方で、今回の手続きで各州に問われているのは、土地だけではありません。
使える資源や地元のパートナーをどこまで示せるかが回答の内容に含まれており、州や地域の側にも負担と関与が求められる形になっています。
連邦政府の予算が議会の判断に委ねられている以上、州がどこまで踏み込めるかが、候補地の競争を左右する要素になります。
今後の注目点
直近の区切りは、10月26日のRFI締め切りです。
そのあと、8月28日から120日以内という期限で、委員会が大統領に報告書を提出します。
時期としては2026年末ごろにあたります。
報告書では、入学資格、教育課程、卒業後の勤務義務といった、進路を考える人にとって最も具体的な条件が扱われます。
必要な立法措置も報告の対象に含まれているため、学校の設置と運営がどの法律に基づいて行われるかは、議会での審議を経て決まります。
ほしまる大統領令が決めたのは「つくる」という方針で、実際に使えるお金が付くかどうかは、これからの予算の話なんだ。
出典
- NASA「NASA Answers President’s Call to Establish United States Space Academy」
- NASA「President Trump Signs Executive Order to Create US Space Academy」
- The White House「Establishing the United States Space Academy」
- The White House「Fact Sheet: President Donald J. Trump Establishes a Commission to Design the United States Space Academy」