ispace米国法人が月の通信衛星輸送でArgo Spaceと契約

株式会社ispaceの米国法人ispace technologies U.S., inc.(以下、ispace-U.S.)と、米国のArgo Space Corp.(以下、Argo Space)は2026年9月17日、月を回る通信衛星「Alpine(アルパイン)」を月周回軌道まで運ぶ正式契約を締結したと発表しました。
Alpineは、ispaceが構想する月の通信・測位サービスに向けた初号機にあたります。

このミッションは「ミッション2.5」と名付けられ、打ち上げは早ければ2027年とされています。

3行で分かるポイント

  • ispaceの米国法人が、月を回る通信衛星1機を月周回軌道まで運んでもらう契約を、米国の輸送会社と正式に結んだ
  • 運び手は水を推進剤に使う宇宙輸送機「アルゴノート」で、打ち上げは早ければ2027年
  • この1機は、2030年までに最低5基へ増やす月周回衛星群の1号機にあたる
目次

まず押さえたい背景

株式会社ispaceは2010年9月に設立された日本の企業で、本社は東京都中央区にあります(出典:ispace「会社概要」)。
月への輸送サービスや月面のデータサービスを事業とし、従業員は322名(2026年6月1日現在)、拠点は東京のほかルクセンブルクと米国コロラド州にあります。
今回の主体であるispace-U.S.は、米国コロラド州イングルウッドを拠点とするispaceの米国法人で、地球から月周回軌道や月面までの輸送とインフラを、政府機関や民間企業に提供しています。

契約相手のArgo Spaceは、米国カリフォルニア州エルセグンドに本社を置く企業です。
水を推進剤として使い、燃料を補給して繰り返し使える宇宙機を設計・製造・運用し、顧客の機器を様々な軌道へ届けるサービスを手がけています。

月を回る通信衛星が必要になるのは、月面の機器と地球が常に見通せるとは限らないためです。
月はいつも同じ面を地球に向けているため、裏側にある探査機からは地球が見えず、電波を直接やり取りできません。
月周回軌道に中継役の衛星を置けば、月面の機器と地球の間で電波を橋渡しできます。
ispaceは、直接の見通しが取れない地域まで通信の範囲を広げるとAlpineの役割を説明しています。

また、ロケットが地球の低い軌道まで運んだ荷物を、そこから目的の軌道まで運ぶ宇宙機を軌道間輸送機と呼びます。
今回のアルゴノートが、その役割を担います。

何が発表されたか

両社は2026年3月に発表していた合意を今回の契約で確定させ、ミッション2.5として早ければ2027年の打ち上げを正式に合意しました(出典:ispace「ispace-U.S.、「ミッション2.5」に向けた月周回衛星の輸送契約を米Argo Spaceと締結」。以下、ミッションの内容は同じ発表によります)。
Alpineという名前は、コロラド州のロッキー山脈にちなんでいます。

運搬を担うアルゴノートは、水を推進剤として利用する宇宙輸送機です。
ispaceの説明では、現在は地球から供給される水を利用し、将来的には月で採取される水資源の活用を見据えています。

Alpineはispaceのルナ・コネクトサービスに向けた初号機で、このサービスは2030年までに投入される最低5基の月周回衛星のコンステレーションによって構成される計画です。
コンステレーションは、複数の衛星を組み合わせてひとつのサービスとして運用する仕組みを指します。
提供する内容は、通信、測位、観測、そして宇宙状況把握(SSA)です。
SSAは、宇宙空間にある物体の位置や動きを把握する取り組みを指します。

ispace-U.S.のエリザベス・クリストCEOは「ミッション2.5により、ispaceはルナ・コネクトサービス提供に向けた初号機を月周回軌道に投入し、月周辺における通信・測位サービスの提供が可能となります」と述べています。

宇宙業界にとっての意味

月面での活動は、地球と直接電波をやり取りできる場所かどうかに左右されます。
月周回軌道に中継役の衛星があれば、その制約が緩みます。
Alpineが1機目として軌道に入れば、ispaceが計画する衛星群の土台ができることになります。

輸送の面にも読みどころがあります。
ispaceは、自社の着陸機や軌道間輸送機に加えて、他社の輸送サービスも使って衛星を配備する方針を示しています。
今回のミッション2.5は、その方針に沿って外部の輸送機を使う事例です。
月を目指す輸送の需要が、着陸機だけでなく軌道間輸送機にも広がっていることを示しています。

推進剤の選択も月経済圏の議論とつながっています。
水を推進剤とする方式は、将来的に月で得られる水を使う構想と地続きです。
ただし現時点で使うのは地球から運ぶ水であり、月の水資源の利用は今後の課題です。

今後の注目点

まず、早ければ2027年とされる打ち上げに向けて、アルゴノートとAlpineの開発がどう進むかが焦点です。
打ち上げに使うロケットや具体的な時期は、今後の発表を待つ段階です。

次に、ルナ・コネクトサービスの残りの衛星をどの輸送手段で送るかも注目点になります。
ispaceは2030年までに最低5基という計画を示しており、自社の輸送機と他社のサービスをどう組み合わせるかが、計画の進み方を左右します。

ほしまる

ぼくが旅していたときも、地球が見えない向きに回ると電波は送れなかったんだ。月の裏側で働く機械にとって、空の上にいる1機は頼りになる相手なんだよ。

出典

ほしまる
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