NASAが米国宇宙アカデミーの候補地を公募し各州が誘致に動く

NASAは2026年9月10日、新設が検討されている「米国宇宙アカデミー」のキャンパス候補地について、全米の州から情報の提出を募る文書を公表しました。
提出できるのは各州1件で、知事または知事が指名した担当者が出します。
締切は米国東部夏時間の10月26日午後6時です。

テキサス州やフロリダ州をはじめ、複数の州がすでに自州への誘致に向けて動き始めています。

3行で分かるポイント

  • トランプ大統領が2026年8月28日に大統領令へ署名し、NASA長官を委員長とする検討組織が新しい宇宙アカデミーの設計にあたっている
  • NASAは9月10日に候補地の情報提供を各州へ呼びかけ、2027年までの着工、2028年に最初の約300人、2031年に恒久キャンパス稼働という日程を示した
  • 学校を正式に設立するには議会の承認が必要で、コロラド州選出の上院議員からは重複した計画で費用がかさむという批判も出ている
目次

まず押さえたい背景

米国宇宙アカデミーは、トランプ大統領が2026年8月28日に署名した大統領令をきっかけに検討が始まった、NASAが主導する連邦の教育機関の構想です。
署名はヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターで行われました。
ジョンソン宇宙センターは、米国の宇宙飛行士が所属し、国際宇宙ステーションの運用を支えるミッションコントロールセンターを持つ、有人宇宙飛行の中心的な拠点です(出典:NASA「Johnson Space Center」)。

大統領令は、大統領が行政機関に対して出す命令です。
今回の大統領令が直接つくったのは学校そのものではなく、「米国宇宙アカデミーに関する大統領委員会」という検討組織でした。
委員長はNASA長官、副委員長は大統領科学技術担当補佐官のマイケル・クラツィオス氏と大統領経済政策担当補佐官のケビン・ハセット氏が務めます。
委員会は署名から120日以内に、運営体制、カリキュラム、卒業生に課す服務義務、出願の要件、恒久的な立地、必要な立法措置、実施計画をまとめた報告を大統領に提出することになっています。

ホワイトハウスは設立の理由として、宇宙が国家安全保障・経済成長・科学的発見・技術革新にとって重要な領域であること、そして宇宙分野を率いる人材の供給が足りていないことを挙げています。
トランプ大統領は署名にあたり、米国宇宙軍と商業宇宙産業が急速に伸びているため、熟練した軍人・技術者・民間の運用担当者を世代単位で育てる必要があると述べました。

何が発表されたか

NASA長官のジャレッド・アイザックマン氏は9月9日に委員会の初会合を主宰し、翌10日、NASAは候補地に関する情報提供依頼(RFI)を公表しました。
情報提供依頼は、正式な契約や発注の前に、どのような選択肢があるかを役所が広く尋ねるための文書です。

NASAが各州に求めているのは、立地の情報、用地の準備状況、環境や規制の面で考慮すべき点、そして周辺に宇宙関連の施設や産業がどれだけ集まっているかといった内容です。
アイザックマン氏は、各州には米国の宇宙の将来に向けた制度づくりに関わる機会があるとしています。

日程は、2027年までに着工し、2028年に提携先の施設で最初の約300人を受け入れ、2031年に恒久キャンパスを稼働させるという内容です。
Payloadの報道によると、恒久キャンパスは300エーカー以上(約1.2平方キロメートル)の敷地に、1,200人規模の学部生を受け入れ、4,000人程度まで広げられることが想定されています。

誘致の動きはすでに具体化しています。
テキサス州のグレッグ・アボット知事は9月15日、州下院歳出委員長のグレッグ・ボネン議員を長とする提案チームを設け、テキサス宇宙委員会と組んで州全体の提案をまとめると発表しました。
テキサス宇宙委員会はオースティンに拠点を置く州の組織で、民生・商業・軍事・学術の各分野の宇宙開発を後押しし、宇宙探査・航空研究基金を通じて企業や大学に助成を出しています。

フロリダ州では、州の航空宇宙の金融・開発機関であるSpace Floridaが提案の調整にあたっています。
Space Floridaは2006年に設立された州の公社で、航空宇宙企業への資金の提供や打ち上げ関連施設の利用支援を行っています。
このほかアラバマ州やネバダ州も名乗りを上げており、コロラド州やオハイオ州、ニューメキシコ州なども有力な候補に挙がっています(出典:Payload「States Campaign to Host the US Space Academy」)。

宇宙業界にとっての意味

この計画は、宇宙の仕事に就く人をどう増やすかという課題に、米国が国の制度で応えようとする動きです。
これまで宇宙関連の技術者や運用担当者は、既存の大学や軍の教育機関から供給されてきました。
専用の教育機関ができれば、そこに入学から卒業後の勤務先までを通した経路がひとつ加わることになります。

ただし、カリキュラムも卒業後に課される服務義務も、委員会の報告を待つ段階です。

立地の争いが熱を帯びているのは、キャンパスが置かれた州に学生と教員が長期にわたって集まるためです。
NASAが評価の観点に「周辺に宇宙関連の施設や産業がどれだけ集まっているか」を含めたことで、各州は既存のNASA施設を前面に押し出す構図になっています。
テキサス州がジョンソン宇宙センターを軸に据えたのも、この評価軸に沿った動きです。

今後の注目点

当面の節目は10月26日の提出期限と、そのあとに大統領へ出される委員会の報告です。
報告には恒久的な立地の案が含まれますが、最終的な判断はホワイトハウスが行います。

より大きな関門は議会です。
連邦の士官学校を正式に設立するには議会の承認が必要で、委員会には議員が入っていません。

コロラド州選出のジョン・ヒッケンルーパー上院議員は、この計画を既存の仕組みと重複していて費用がかかり、真剣な検討に値しないと批判しています。
予算の規模や設立の根拠となる法律の扱いは、これから議会で詰められる段階です。

ほしまる

州が競っているのは土地の広さなのかな、それとも近くに宇宙の現場があることなのかな。

出典

ほしまる
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