米国防総省と宇宙軍が静止軌道の偵察衛星の試作を民間2社に発注

Department of WarのDefense Innovation Unit(DIU)とアメリカ宇宙軍のSpace Systems Command(SSC)が、2026年9月18日、静止軌道にいる人工衛星を間近から撮影する偵察衛星の試作機を、True AnomalyとNorthrop Grummanの2社に発注したと発表しました。

計画の名前はGHOST-Rで、民間企業がすでに商用向けに開発した機体とカメラを使うことで、費用と開発期間を抑えることを狙っています。
打ち上げは2028年が予定されています。

3行で分かるポイント

  • 高度約3万6,000kmの静止軌道を回りながら、ほかの人工衛星を近くから撮影する試作衛星を、米軍の2つの組織が民間2社に発注しました
  • True Anomalyは自社で開発した機動性の高い衛星Jackalを、Northrop Grummanは小型の衛星ESPASat-Lに別会社製の光学カメラを載せた機体を提供します
  • 試作機は2028年に打ち上げられ、実証がうまくいけば、宇宙軍の正式な偵察衛星群の1号機として使われる計画です
目次

まず押さえたい背景

静止軌道(GEO)は、赤道上空の高度約3万6,000kmを回る円軌道です。
この高さでは衛星が地球を1周するのに約24時間かかり、地球の自転と足並みがそろうため、地上から見ると空の同じ場所に止まって見えます(出典:ファン!ファン!JAXA!「静止衛星はどうして止まっていられるのですか?」)。
止まって見える性質が便利なので、通信・放送・気象の衛星がここに集まっています。

一方で、この高度にどの国のどんな衛星がいて、何をしているのかを確かめるのは簡単ではありません。
地上に置いた望遠鏡やレーダーは、大気の影響と距離の遠さによって静止軌道では性能の限界にぶつかります。
そのため現在は、Northrop Grummanが手がけたGSSAP(静止軌道の宇宙状況把握プログラム)を中心とする少数の高性能な衛星が、近くまで寄って観測する役目を担っています(出典:Payload「DIU and SSC Announce Joint GHOST-R Mission」)。

発注した2組織のうち、DIUはアメリカ国防総省の組織で、民間で育った技術を軍の装備に取り込む役割を専門にしています。
2015年に設けられ、通常なら何年もかかる契約を数か月単位に縮めることを掲げています(出典:Defense Innovation Unit「About」)。
SSCは、今回の試作の先にある正式プログラム「RG-XX」を担当する宇宙軍側の組織です。

何が発表されたか

GHOST-Rは「Geosynchronous High-Resolution Optical Space-Based Tactical Reconnaissance」の略で、静止軌道で高解像度の光学撮影を行う偵察の計画を指します。
市販・商用ベースの機体と電気光学ペイロード(可視光などをとらえるカメラ類)を使い、軌道上の物体が何であるかを見分けること、攻撃を受けた衛星の被害状況を確かめること、対象が味方か相手かをはっきりさせることを目的としています(出典:Space Systems Command「DIU and Space Systems Command award GHOST-R prototype contracts」)。

True Anomalyは、コロラド州センテニアルなどに拠点を置き、宇宙空間での軍事作戦向けの衛星とソフトウェアを自社で作っている企業です。
提供するJackalは、燃料を多く積んで軌道を大きく変えられる自律型の衛星で、静止軌道向けの構成では最大200kgの機材と1,000Wの電力をまかなえます(出典:True Anomaly「Jackal」)。
同社の発表では、1機で数十機の衛星を数年にわたって見て回れる設計で、打ち上げ後はまず宇宙軍の運用員と共同で動かし、その後に政府が所有・運用する資産へ移ります。

Northrop Grummanは、バージニア州フォールズチャーチに本社を置く航空宇宙・防衛の大手で、従業員は約10万人です。
同社はスーツケースほどの大きさの衛星ESPASat-Lを使い、カリフォルニア州アーバインのTRL11が供給する光学ペイロードを組み合わせます。

TRL11は、宇宙機に映像・撮像の仕組みを載せることを手がける企業です。
組み立て・統合・試験・納入を24か月で行う計画で、同社のRyan Tintner氏は、宇宙が日々混雑し競争の場になりつつあるなかで試作機を短期間で実戦配備する意義を述べています。

宇宙業界にとっての意味

これまで軍の偵察衛星は、その任務のために一から設計した高価な機体が中心でした。
GHOST-Rはその前提を変え、民間企業が商用として開発済みの機体やカメラを土台にして、同じ役目を安く速く果たせるかを確かめる試みです。

注目したいのは、試作が試作で終わらない設計になっている点です。
この2機は、宇宙軍がGEOに多数の偵察衛星を並べる正式プログラムRG-XXにつながる位置づけで、実証に成功すれば、そのまま運用機として使われる計画になっています。
つまり今回の発注は、量産調達の入口を兼ねています。

もうひとつは、部品やセンサーを供給する側にも扉が開いていることです。
今回、大手であるNorthrop Grummanの機体の「目」にあたる光学ペイロードは、アーバインの小規模な企業が担当しています。
衛星の本体を作らない企業でも、センサーやソフトウェアで軍の調達に加わる道があることを示す組み合わせです。

今後の注目点

まずはNorthrop Grummanが掲げた24か月という納入期限を守れるかどうかです。
そのうえで、2機は2028年に打ち上げられ、高解像度の画像を撮れること、対象の衛星を週1回の頻度で観測し続けられることを実証する予定です。

これに成功すれば2029年に運用機として扱われる見通しだと、Air & Space Forces Magazineが報じています。
RG-XXとして最終的に何機を並べるのか、どの企業が量産分を担うのかは、これからの調達で決まる段階です。

ほしまる

地上から見上げると、静止軌道の衛星はどれも動かない小さな点にしか見えないんだ。そこまで行って隣から写真を撮るというのは、それくらい違う話なんだよ。

出典

ほしまる
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