米FCCが宇宙での運用を環境審査の対象外とする規則案を採決へ

アメリカで衛星に電波の免許を出す連邦通信委員会(FCC)は、2026年9月30日の公開会合で、環境審査の規則を見直す案を採決します。
宇宙専門メディアのPayloadによると、案には、宇宙空間での運用をFCCの環境審査の対象から外すという内容が含まれています。
打ち上げや再突入を担当する連邦航空局(FAA)も、7月に同じような見直しを提案しています。

3行で分かるポイント

  • アメリカで衛星の電波免許を出すFCCが、9月30日に環境審査の規則を見直す案を採決する
  • 案が通ると、宇宙空間での運用は環境への影響を調べる手続きの対象外になる
  • 打ち上げを担当するFAAも、商業ロケットの許可で環境審査などを省く案を出している
目次

まず押さえたい背景

FCCはアメリカの政府機関で、通信に使う電波の利用を免許で管理しています。
人工衛星は地上と電波でやり取りするため、アメリカで衛星を運用する事業者はFCCの免許を受けます。
連邦航空局(FAA)は、商業ロケットの打ち上げと宇宙から地球への再突入に許可を出す機関です。

この2つの機関が行う手続きに関係するのが、国家環境政策法(NEPA)です。
NEPAは「排出量をこれ以下にする」といった環境基準を定める法律ではありません。
政府機関が事業を認める前に、環境への影響を調べて公表することを求める法律です。

NEPAの審査を受けるかどうかは、主に2つの考え方で決まります。

1つ目は「主要な連邦の行為」かどうかです。
この言葉は議会が定義したもので、アメリカの管轄外で影響が生じる「域外の活動」は除かれます。

2つ目は「適用除外」で、環境に大きな影響がないと機関があらかじめ判断した種類の行為は、詳しい審査を省けます。
Payloadによると、FCCの衛星免許は1986年からこの適用除外の扱いになっています。

何が発表されたか

FCCは9月30日の公開会合で、NEPAに関する規則を全面的に見直す「報告と命令」を採決します。
追加の意見募集も同時に行います(出典:Benton Institute for Broadband & Society「FCC Announces Tentative Agenda for September 2026 Open Meeting」)。
FCCは、環境審査の対象となる行為の範囲をはっきりさせ、審査の手続きを簡単で速いものにすることが目的だと説明しています。

Payloadの報道では、案は宇宙空間での運用を「主要な連邦の行為」にあたらないものと位置づけます。
いまの適用除外は、書類作りを省くための扱いです。
新しい規則では、宇宙空間での運用がそもそもNEPAの範囲外だと定めます。

FCCが示す根拠は2つです。
ひとつは宇宙条約です。
宇宙条約は、宇宙空間をどの国も自国の領土にできないと定めています。

FCCはこれを理由に、宇宙空間での影響は「域外」にあたると主張しています。
もうひとつは、電波の免許を出しても、FCCは衛星の製造・運用・廃棄まで管理するわけではない、という理屈です。
大気中で起こる打ち上げと再突入については、FCCはFAAの判断に委ねるとしています。

宇宙業界にとっての意味

見直しは、アメリカの宇宙関係の機関全体で進んでいます。
Payloadによると、きっかけは2025年1月のトランプ大統領による大統領令です。
この大統領令は、大統領府の環境諮問委員会(CEQ)が各省庁にまたがるNEPAの規則を定める権限を取り消しました。
そのあと、何を環境審査の対象にするかを各機関が自分で決めることになりました。

FAAは2026年7月、商業ロケットの許可についてNEPAと12の法律の適用を免除する案を出しました。
免除する法律には、絶滅危惧種法、水質浄化法、大気浄化法、騒音規制法が含まれます。
8月31日の締め切りまでに、3,200件を超える意見が寄せられました。

FAAは、NEPAを免除しても審査の責任が他の機関へ移るだけで、なくなるわけではないと認めています。
アメリカ宇宙軍のように連邦の発射場を運営する機関は、自分で審査を行います。
このため、影響を受けるのは主に、SpaceXのスターベースのような民間の発射場だとPayloadは伝えています。

一方、NASAは7月1日にNEPAの規則を改め、原子力システムを積んだ宇宙機の打ち上げでは原則として環境アセスメントを求めることにしました。
宇宙軍は2025年12月、ケープカナベラルでスターシップの打ち上げを年最大76回、着陸を年最大152回まで認める環境影響評価書を出しています。
事業者にとっては、許認可の手続きが短くなる可能性があります。
ただし、どの機関が何を審査するかは機関ごとに異なります。

今後の注目点

まず、9月30日にFCCが案をそのまま採決するかどうかです。
次に、FAAが寄せられた3,200件超の意見を受けて、免除案をどう最終決定するかが焦点になります。

Payloadは、アメリカの国家宇宙輸送政策が2030年までに年1,000回を超える打ち上げと再突入を目標にしていると伝えています。
Payloadの見方では、宇宙活動の環境への影響は航空と比べると誤差ほどの大きさです。
一方で、打ち上げや再突入が増えたときに大気へ与える影響は十分に研究されていないとも指摘しています。
審査が簡単になったあと、この研究を誰が担うのかも注目点です。

ほしまる

宇宙での運用が審査の対象外になっても、打ち上げの審査はFAAに残るんだね。どの手続きをどの機関が見るのか、ここから整理されていくんだ。

出典

ほしまる
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