Ethereal SpaceがNOAAへ気象衛星データを2年間納入

アメリカ海洋大気庁(NOAA)は2026年9月18日、天気予報と宇宙天気の監視に使う衛星観測データを、民間企業3社から2年間購入すると発表しました。
その3社のうちの1社が、アメリカのコロラド州に拠点を置く衛星企業Ethereal Space(イーサリアル・スペース)です。

同社は9月23日に自社でも受注を発表しました。
最高経営責任者(CEO)のショーン・コクラン氏は、今回の受注を「新しい観測能力をつくって実証する段階から、実際の業務で使われる環境データを大規模に届ける段階への移行」と位置づけています。

3行で分かるポイント

  • アメリカの気象機関NOAAが、天気予報に使う衛星データを民間3社から2年間買う契約を結び、Ethereal Spaceもその1社に選ばれました
  • 同社が納めるのは、GPSなどの電波が大気を通るときの曲がり方から、気温や湿度を割り出すためのデータです
  • 同社への契約額は、NOAAの発表では548万2,500ドル、同社の発表では約2,740万ドルで、2つの発表の数字が一致していません
目次

まず押さえたい背景

NOAAは、民間企業が衛星で集めた気象観測データを評価して買い取る「商用データプログラム」を運営しています。
狙いは、天気予報を改善することと、NOAAの任務に必要なデータをより効率よく集める方法を探ることです(出典:NOAA NESDIS「NOAA Announces New Awards totaling $67M to Purchase Operational Commercial Data to Enhance Weather Forecasts and Space Weather Monitoring」。以下、NOAAの発表内容は同ページによります)。

Ethereal Spaceは、環境と宇宙天気を宇宙から観測するミッションを設計して運用する会社です。
宇宙天気とは、太陽の活動によって地球の周りの環境が変わることを指し、通信や衛星の運用に影響します。

同社はアメリカのコロラド州デンバーと、ドイツのミュンヘン地域にオフィスを置いています。
高度の低い地球周回軌道(低軌道)に複数の衛星を並べて運用しており、観測には太陽同期軌道と中傾斜軌道を使います(出典:Ethereal Space「Who We Are」)。

太陽同期軌道は、毎回同じ地方時刻に同じ地域の上空を通る軌道です。
中傾斜軌道は、赤道に対して中くらいの角度で傾いた軌道です。
同社の発表では、観測能力として次の3つを挙げています(出典:SpaceNews「Ethereal Space Awarded NOAA SBEM Task Order 1」。この記事は同社の発表文を掲載したものです)。
ひとつ目は電波掩蔽観測、2つ目は熱圏(高度の高いところにある薄い大気の層)の大気密度の測定、3つ目は可視光と赤外線で撮るマルチスペクトル画像です。

今回の中心になるのは、1つ目の電波掩蔽観測です。
英語ではGNSS radio occultation(GNSS-RO)と呼ばれます。
GNSSは、GPSをはじめとする測位衛星の総称です。

測位衛星の電波が大気を斜めに通り抜けると、電波は曲がり、速度も落ちます。
その変化を別の衛星で受信して測ると、大気の温度・気圧・水蒸気量を割り出せます。
NOAAはこのデータを天気予報に使っています。

何が発表されたか

NOAAによると、今回の契約は「ProTech 2.0 宇宙からの環境監視(SBEM)」という契約枠組みのもとで出す、最初の2年間のデータ購入です。
この枠組みはIDIQ(数量・納期不確定契約)と呼ばれる形式です。
あらかじめ企業を選んでおき、実際に何をどれだけ買うかは、あとから「タスクオーダー」と呼ばれる個別の注文で決めます。
今回は、その最初の注文にあたる「タスクオーダー1」です。

3社への発注額の合計は、2年間で6,705万3,698ドルです。
NOAAは3社から、GNSS-ROの観測データを1日あたり1万件、準リアルタイムで受け取ります。

このうちEthereal Spaceが担当するのは1日あたり500件で、発注額は548万2,500ドルです。
同社には35日間のデータ準備期間があり、納入は2027年1月5日から2028年12月1日までです。
NOAAは、今回の発注にはNOAAが必要に応じて追加のデータを買える「オプション」が含まれているとしています。

一方、同社の発表では、タスクオーダー1は期間24か月、契約総額は約2,740万ドルで、最初のデータ納入は2026年12月1日に始まるとしています。
金額も納入開始日も、NOAAの発表とは一致していません。

宇宙業界にとっての意味

この枠組みでNOAAは、GNSS-ROのほか、マイクロ波や赤外線の観測装置で大気を測るデータ、マルチスペクトル画像、熱圏の大気密度など、7つの分野の観測データを民間から買います。
2026年9月1日から2036年8月31日までの10年間の枠組みで、Ethereal Spaceを含む14社が選ばれています(出典:ExecutiveGov「NOAA Selects 14 Companies for Space-Based Environmental Monitoring IDIQ」)。
枠組みに選ばれることと、実際に注文を受けることは別の段階です。
14社のうち、最初の注文を受けたのはEthereal Spaceを含む3社でした。

気象データは、これまで政府が自分で持つ衛星で集めるのが中心でした。
今回の注文は、民間企業の衛星が集めたデータを、政府が決まった量だけ継続して買う仕組みです。
コクラン氏が「実証から大規模な運用データの提供への移行」と表現したのは、この継続的な納入を指しています。

今後の注目点

NOAAの発表では、同社の納入は2027年1月5日に始まります。
1日500件というデータを、期間を通じて安定して届けられるかが最初の節目です。

契約額と納入開始日は、NOAAと同社の発表で数字が違っています。
差がオプション分を含めているかどうかなど、何によるものかは、どちらの発表でも説明されていません。
また、この枠組みは10年間続くため、2件目以降のタスクオーダーで、同社がほかの分野のデータでも注文を受けるかどうかも注目点です。

出典

ほしまる
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