フランスの衛星通信会社ユーテルサット(Eutelsat)と、ポルトガルの大手通信会社MEOは、2026年9月23日に提携を発表しました。
MEOは、ユーテルサットが運用する衛星網「OneWeb(ワンウェブ)」の通信サービスを、自社の光ファイバー網と5Gを組み合わせた通信サービスに取り込みます。
狙いは、ポルトガル国内の企業、行政機関、自治体、重要インフラの運用者に、地上の回線に何かあったときの予備の通信手段を届けることです。
3行で分かるポイント
- フランスの衛星通信会社とポルトガルの大手通信会社が、宇宙を使った通信サービスで手を組みました。
- ポルトガルの企業や役所などが、光ファイバーや携帯電話の電波に加えて、衛星経由の予備の回線も使えるようになります。
- 2社は以前から地上設備で協力しており、今回はその協力をサービスの提供にまで広げます。
まず押さえたい背景
ユーテルサットは、パリに本社を置き、50か国以上に拠点を持つ衛星通信会社です。
テレビ放送の配信や、衛星を使ったインターネット接続などを提供しています(出典:Eutelsat「About Eutelsat」)。
同社は、静止軌道の衛星を31機運用しています。
静止軌道は赤道の上空にある高い軌道で、衛星が地上から見て空の同じ位置に止まっているように見えます。
同社はこれに加えて、低軌道(LEO)の衛星網であるOneWebも運用しています。
OneWebは600機を超える衛星で構成され、高度1,200kmの12の軌道面を飛んでいます(出典:Eutelsat「OneWeb LEO Constellation」)。
このように多数の衛星を連携させて1つの通信網として使う仕組みを、コンステレーション(衛星群)と呼びます。
低軌道の衛星は地上との距離が近いため、電波が往復する時間が短くなります。
ユーテルサットは、OneWebがビデオ通話のようにすぐ応答が返ってくる必要がある用途に向いていると説明しています。
MEOは、ポルトガルで固定電話、インターネット、テレビ、携帯電話などを提供する通信ブランドです。
運営するのはアルティス・ポルトガル(旧PTポルトガル)で、同社は2015年6月2日から、通信事業を多くの国で展開するアルティス・グループの完全子会社です(出典:MEO「History」)。
MEOは企業向けにも「MEO Empresas」というブランドでサービスを提供しています。
何が発表されたか
ユーテルサットの発表によると、MEOはOneWebのサービスを自社の通信サービスに組み込み、衛星、光ファイバー、5Gを組み合わせて提供します(出典:Eutelsat「Eutelsat expands resilient LEO connectivity across Portugal in partnership with MEO」)。
対象は、ポルトガル全土の企業、行政機関、自治体、重要インフラの運用者です。
提供するのは、ふだん使う回線とは別に用意しておく予備(バックアップ)の通信手段です。
2社の協力は今回が初めてではありません。
MEOは数年前から、ユーテルサットの地上局を自社の施設に置いてきました。
地上局は、衛星とやりとりする大型のアンテナを備えた地上の設備で、衛星とインターネットをつなぐ役割を担います。
この地上局は、最初は静止軌道の衛星に使われ、現在はOneWebにも使われています。
今回の提携で、協力の範囲が設備の提供からサービスの販売にまで広がります。
ユーテルサットのジャン=フランソワ・ファラシェCEOは、今回の合意でポルトガルでの低軌道衛星サービスが広がると述べました。
さらに、重要な通信について自分たちで管理できる度合いを高めたいという欧州のニーズに応えるものだとしています。
MEOのアナ・フィゲイレドCEOは、通信網が強くなるための出発点は1つの技術だけに頼らないことだと述べました。
そのうえで、光ファイバーと5Gに衛星通信を組み合わせることで、非常時にもより対応できる多層の通信網になると説明しています。
宇宙業界にとっての意味
衛星通信の会社が、利用者一人ひとりと直接契約するのには限りがあります。
現地の通信会社と組めば、その会社がすでに持っている顧客や営業網を通じてサービスを届けられます。
ユーテルサットは今回の提携について、自社のサービスを届ける販路を強め、ポルトガルのより幅広い顧客に低軌道衛星通信を届けるものだと位置づけています。
通信会社の側から見ると、今回の組み合わせは光ファイバーや5Gを置き換えるものではありません。
地上の回線に加えて、衛星という別の経路を予備として持つための組み合わせです。
地上の回線と衛星では電波や信号が通る経路が異なるため、片方が使えないときにもう片方で通信を続けられます。
フィゲイレドCEOの発言も、この「1つの技術だけに頼らない」考え方を軸にしています。
さらにファラシェCEOは、今回の提携を欧州の企業どうしの協力として説明し、重要な通信を欧州で管理することにつなげています。
衛星通信が、地上の通信網を補う予備の手段としても売り込まれていることが、今回の発表から分かります。
今後の注目点
今回の発表は提携の方向性を示したもので、サービスの料金、提供の開始時期、契約金額は示されていません。
今後は、MEOが企業や行政機関向けに具体的なサービスとして提供を始める時期と、その内容が注目点になります。
また、実際にどのような組織が予備の回線として導入するのかも、この提携がどこまで広がるかを見る材料になります。