スウェーデンの宇宙サービス企業SSC Spaceと防衛・安全保障企業Saab(サーブ)は2026年9月24日、宇宙分野での協力の可能性を探る覚書を結んだと発表しました。
協力の候補には、SSC Spaceがスウェーデン北部で運営するエスレンジ宇宙センターを、試験・実証・打ち上げ・運用の拠点として使うことが含まれています。
Saabは同じ日に、OHB Sweden、Ericsson(エリクソン)とも覚書を結んだと発表しています。
3行で分かるポイント
- スウェーデンの宇宙サービス企業と防衛企業が、宇宙分野で協力できる領域を探る取り決めを結んだ
- 衛星との通信や運用の支援に加え、北極圏にある宇宙センターの活用も協力の候補になっている
- 正式な契約ではなく、何を一緒に行うかを検討する段階
まず押さえたい背景
SSC Space(Swedish Space Corporation)は1972年に設立されたスウェーデンの宇宙サービス企業です。
衛星と地上をつなぐ通信、衛星の運用、システムエンジニアリング、科学観測や打ち上げのサービスを手がけ、従業員は750人を超えます(出典:SSC Space「About SSC」)。
主な事業のひとつが地上局の運営です。
地上局は、衛星に指令を送ったり、衛星が集めたデータを受け取ったりするための大きなアンテナを備えた施設です。
Saabはスウェーデンに本社を置く防衛・安全保障企業です。
航空機、兵器、指揮統制(部隊の状況を把握して指示を出すためのシステム)、センサー、水中システムを設計・製造・保守し、100か国以上に製品を届けています(出典:Saab「Saab expands its engagement in the space domain」)。
今回の話題の中心になるエスレンジ宇宙センターは、北極圏内のキルナ近郊にあります。
1966年から運用され、これまでに610機を超えるロケットと700機を超える気球を打ち上げてきました(出典:SSC Space「Esrange Space Center」)。
ここで打ち上げてきたのは主に観測ロケットで、宇宙空間に短時間だけ到達して実験や大気の観測を行い、そのまま戻ってくるロケットです。
2023年には人工衛星を打ち上げるための発射場が開所し、2028年の初打ち上げを目指しています。
高緯度にあるため、北極と南極の上空を通る極軌道の衛星と通信しやすいという特徴もあります。
何が発表されたか
両社が結んだのは覚書(MoU)です。
覚書は、正式な契約の前に、協力の方向性を確認しておくための取り決めです。
今回の覚書は、宇宙分野とマルチドメイン作戦での協力を探ることを目的としています(出典:SSC Space「SSC Space and Saab sign MoU to explore cooperation on space and multi-domain capabilities」)。
マルチドメイン作戦は、宇宙・航空・陸上・海上といった複数の領域の装備やシステムを連携させて運用する考え方です。
協力の候補として挙げられているのは、次の分野です。
SSC Spaceが世界に持つ地上局網を使った衛星運用サービス、打ち上げ直後の初期運用の支援、ミッションエンジニアリング(宇宙ミッション全体の技術的な設計や計画づくり)、高高度プラットフォームのサービスです。
打ち上げ直後の初期運用は、衛星がロケットから分離してから、正常に動くことを確かめて本来の運用に入るまでの期間を支える仕事です。
高高度プラットフォームは、成層圏のような高い高度にとどまって観測や通信を担う気球などの飛行体を指します。
さらに、エスレンジ宇宙センターを試験・実証・打ち上げ・運用のための戦略的な施設として活用することも検討対象に入っています。
Saabは同じ日に、スウェーデンの衛星メーカーOHB Sweden、通信機器大手のEricssonとの覚書も発表しました。
OHB Swedenとは既存と将来の衛星システムをSaabのシステムにつなぐ方法を、Ericssonとは地上と宇宙の通信技術の組み合わせ方を検討するとしています。
宇宙業界にとっての意味
Saabは、3つの覚書を宇宙分野で「システムインテグレーター」としての役割を強めるものと位置づけています。
システムインテグレーターは、複数の会社の装置やサービスを組み合わせ、ひとつのシステムとして機能するようにまとめる立場です。
Saabでグループ戦略・技術部門を率いるMarcus Wandt氏は、宇宙が防衛と安全保障にとって重要性を増すなかで、スウェーデンのより強くまとまった能力づくりに貢献したいと述べています。
SSC Spaceの社長兼CEOであるCharlotta Sund氏は、スウェーデンは宇宙分野で果たすべき役割が大きく、その役割は広がっていると述べています。
SSC Spaceの発表は、この協力の狙いを、スウェーデンと欧州にとって自国・自地域で完結する宇宙能力を提供することとしています。
地上局の運営から打ち上げ場までを持つ事業者と、防衛システムをまとめる企業が組むことで、衛星の打ち上げから運用、利用までを国内の企業でつなぐ構図を探る動きといえます。
ただし現時点では検討の枠組みで、どの分野で具体的な事業にするかはまだ決まっていません。
今後の注目点
注目されるのは、覚書で挙げた候補分野のうち、どれが正式な契約や具体的なプロジェクトに進むかです。
エスレンジ宇宙センターについては、SSC Spaceが掲げる2028年の衛星初打ち上げの目標に向けた動きと、今回の協力がどう関わるかも見どころになります。
Saabが同時に結んだOHB Sweden、Ericssonとの覚書が、SSC Spaceとの協力とどう組み合わされるかも確認したい点です。
ほしまる北極圏の発射場から衛星が飛び立つとき、見守るアンテナも同じ土地にあるんだね。そのつながりを、どの会社がどう使うのかが次の話になりそうだよ。