2026年10月1日、国立環境研究所、東京大学、広島大学、海洋研究開発機構、気象庁気象研究所、JAXAの6機関が「日本GHGセンター」を共同で設立することに合意したと発表しました。
GHGは温室効果ガス(Greenhouse Gases)の略で、二酸化炭素やメタンなど地球温暖化の原因になる気体を指します。
大学や研究機関、政府機関などに分かれて置かれていた観測データや研究成果をひとつの窓口にまとめ、国内外へ発信する拠点になります。
3行で分かるポイント
- JAXAを含む6機関が、温室効果ガスの観測データと研究成果をまとめる「日本GHGセンター」の設立に合意した
- 政策担当者や企業、市民がひとつの窓口からデータや知見にたどり着けるようにする
- 運営は必要な手続きが終わってから始まり、事務局は国立環境研究所に置かれる
まず押さえたい背景
温室効果ガスは、地上の観測所や船、人工衛星など様々な手段で測られています。
測ったデータから「どこで、どれだけ出て、どれだけ吸収されたか」を推定するには、観測値に加えてコンピューターによる計算(モデルシミュレーション)も必要です。
これまでは、こうした観測データや解析結果を大学や研究機関、政府機関などがそれぞれ別々に持っていました(出典:国立環境研究所ほか「温室効果ガスに関する情報と知見を集約する『日本GHGセンター』を設立」)。
センターの設立に合意した6機関は次のとおりです。
- 国立環境研究所は、気候変動や脱炭素化、生物多様性、環境汚染などを研究する国の研究機関で、衛星観測による環境モニタリングにも取り組んでいます。
- 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、研究船やスーパーコンピューターを使って海洋と地球の環境を研究し、将来予測にも取り組んでいる機関です。
- 気象庁気象研究所は、気象庁の業務に使う技術を研究開発する施設で、温室効果ガスの研究も行っています。
- 大学からは、東京大学の気候と社会連携研究機構と、広島大学の瀬戸内CN国際共同研究センターが加わります。
JAXAから参加するのは、人工衛星の開発や運用を担う第一宇宙技術部門です。
この部門は、二酸化炭素やメタンを宇宙から測る「いぶき(GOSAT)」シリーズの衛星を扱っています。
シリーズ最初の「いぶき」は2009年1月23日に打ち上げられ、JAXA、環境省、国立環境研究所の共同プロジェクトとして進められました(出典:JAXA第一宇宙技術部門「地球の呼吸を継続観測する『GOSATシリーズ』」)。
2025年6月29日に打ち上げられた「いぶきGW(GOSAT-GW)」では、JAXAが衛星とセンサーを開発し、温室効果ガス観測センサーの開発は環境省からの委託、データの提供と管理は国立環境研究所が担っています。
何が発表されたか
日本GHGセンターは、温室効果ガスに関するデータや研究成果、科学的な知見をつくり出し、集約し、国内外の政策担当者や民間企業、市民に提供・発信することを目的としています。
6機関はこのセンターを「国内初のオールジャパンの情報ハブ」と位置づけ、ワンストップで案内・発信すると説明しています(出典:JAXAほか「温室効果ガスに関する情報と知見を集約する『日本GHGセンター』を設立」)。
発表文に挙がっている主な活動は、次の5つです。
- 観測・解析・モデル開発によるデータと知見の創出
- 各機関のデータの集約
- 国内外への提供・発信
- 海外機関との連携
- 次世代の人材育成
運営は6機関がそれぞれの役割分担にもとづいて行い、事務局は国立環境研究所の地球システム領域に置かれます。
環境省、地球環境戦略研究機関、気象庁、森林研究・整備機構からも設立の趣旨に賛同を得ており、それぞれの役割に応じた連携・協力が期待されています。
運営は、必要な手続きが完了し次第始まる予定です。
情報の入り口になるのは、国立環境研究所が運営する専用のウェブサイトです。
このサイトでは、観測データ、モデルシミュレーションの結果、排出量・吸収量の情報、日本の温室効果ガスインベントリ(国全体の排出量の推移をまとめた統計)を扱うとしています。
これらは、排出量を測り・報告し・その正しさを確かめる活動(測定・報告・検証)や、教育機関・個人による気候の理解に活用されることが期待されています。
宇宙業界にとっての意味
衛星による温室効果ガスの観測は、データを集めるだけでなく、使われてはじめて価値が出ます。
「いぶき」シリーズのデータは、2019年から世界気象機関(WMO)の温室効果ガス世界資料センターを通じて世界の科学者に無料で提供されてきました。
いぶきGWの温室効果ガス観測センサーについては、排出量の検証や大規模な排出源の監視への活用が想定されています(出典:JAXA第一宇宙技術部門「いぶきGW(GOSAT-GW)」)。
今回のセンターは、衛星を運用する機関と、地上・海洋の観測や計算を担う機関が、データの届け先を共通の窓口にまとめる取り組みです。
発表では、届け先として研究者だけでなく政策担当者や民間企業、市民が挙げられています。
衛星データを社会で使ってもらう流れをどう作るかは、地球観測衛星に関わる事業者や研究機関にとって共通の課題で、その受け皿のひとつが国内に置かれることになります。
ただし、センターの中でJAXAが具体的にどの役割を担うのかは、今回の発表では示されていません。
今後の注目点
まず注目したいのは、必要な手続きが終わり、実際に運営が始まる時期です。
次に、6機関の役割分担が具体的にどう決まるか、とくに「いぶき」シリーズなどの衛星データがセンターのウェブサイトでどのような形で扱われるかが確認すべき点になります。
海外機関との連携や、企業向けの情報提供がどこまで進むかも、衛星データの利用が広がるかどうかを見るうえでの手がかりになります。
出典
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)「温室効果ガスに関する情報と知見を集約する『日本GHGセンター』を設立~関係機関の連携・協力を強化し、気候変動対策の加速と早期の脱炭素化達成に貢献~」 https://www.jaxa.jp/press/2026/10/20261001-2_j.html
- 国立環境研究所「温室効果ガスに関する情報と知見を集約する『日本GHGセンター』を設立」 https://www.nies.go.jp/pr/news-and-updates/2026/20261001-2.html
- PR TIMES(国立環境研究所)「温室効果ガスに関する情報と知見を集約する『日本GHGセンター』を設立」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000090531.html
- 国立環境研究所「日本GHGセンター(Japan Greenhouse Gas Center)」 https://esd.nies.go.jp/ghg-information/
- JAXA第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター「地球の呼吸を継続観測する『GOSATシリーズ』」 https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/news/2025/07/25/11226/index.html
- JAXA第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター「いぶきGW(GOSAT-GW)」 https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/project/gosat-gw/
- 国立環境研究所 公式サイト https://www.nies.go.jp/
- 海洋研究開発機構(JAMSTEC)公式サイト https://www.jamstec.go.jp/j/
- 気象庁気象研究所 公式サイト https://www.mri-jma.go.jp/