米FCCが衛星ブロードバンド向けに1000MHz超の周波数を開放

アメリカで通信を規制するFCC(連邦通信委員会)は2026年9月30日、12GHz帯と42GHz帯の合わせて1,000MHz超の周波数を衛星通信に使えるようにする命令(文書番号FCC 26-65)を採択しました。
12GHz帯では、衛星へ送る方向と衛星から受け取る方向の両方の通信が認められました。
飛行機や船の上で動きながら使う地上局も対象です。
42GHz帯では、衛星から地上の拠点局へ送る通信が認められました。

3行で分かるポイント

  • アメリカの通信規制当局が、衛星インターネットに使える電波の幅を1,000MHz超広げた
  • 家庭向けの衛星インターネットに加え、飛行機や船での通信、地上の中継拠点との通信にも使える
  • さらに広い周波数を衛星に使えるかどうかの検討も、同時に始まった
目次

まず押さえたい背景

FCCは、アメリカ国内の州をまたぐ通信と国際通信について、電波・テレビ・有線・衛星・ケーブルを規制する独立の連邦機関です(出典:NTIA「Federal Communications Commission (FCC)」)。
大統領が指名し上院が承認した5人の委員が率いています。

電波は、周波数ごとに用途が割り当てられています。
道路にたとえると、周波数帯は「どの車が走ってよいかが決められた車線」です。
同じ周波数を近くで別々の無線が使うと、互いに邪魔をする「混信」が起きます。
そのため、どの周波数を誰が使ってよいかを国が決めています。
使える周波数の幅(帯域幅。単位はMHz)が広いほど、一度に送れるデータ量を増やせます。

今回の命令に関係する用語は次のとおりです。

  • 「固定衛星業務(FSS)」は、地上の決まった場所に置いたアンテナと衛星との通信を指す、電波の用途区分です。
  • 「アップリンク」は地上から衛星へ、「ダウンリンク」は衛星から地上への通信を指します。
  • 「ゲートウェイ局」は、衛星とインターネットの地上回線をつなぐ大型の地上局です。
  • 衛星と地上回線をつなぐ通信回線は「フィーダーリンク」と呼ばれます。
  • 「ESIM(移動する地上局)」は、飛行機や船に積んで動きながら衛星と通信するアンテナです。

衛星の軌道は、地上から止まって見える静止軌道(GSO)と、それ以外の非静止軌道(NGSO)に分かれます。
非静止軌道には、多数の衛星で地球を覆う低軌道の通信網が含まれます。

何が発表されたか

FCCが9月30日に採択したのは、12.7〜13.25GHz(550MHz分)と42〜42.5GHz(500MHz分)を衛星通信に開く命令です(出典:CircleID「FCC Moves to Open 1,050 MHz of Spectrum to Satellite Broadband」)。

12.7GHz帯では、固定衛星業務のアップリンクとダウンリンクの両方が認められました(出典:TV Technology「FCC ‘Unleashes Spectrum Abundance for New Uses’」)。
主な内容は次の3点です。

  • 個別に免許を受けたゲートウェイ局やフィーダーリンク用の地上局から、静止衛星と非静止衛星の両方へのアップリンクを認める
  • 飛行機や船のESIMから静止衛星へのアップリンクも認める
  • 非静止衛星から利用者の端末へのダウンリンクを認める

対象の端末はESIMも含め、1台ずつではなく包括的に免許を受けたものです。

42GHz帯では、個別に免許を受けたゲートウェイ局などへの衛星からのダウンリンクが認められました。
この帯域では、地上の固定無線(決まった2地点を結ぶ無線回線)は引き続き優先して使える区分に残ります。
一方、地上の移動通信の扱いは「二次的」な区分へ下げられました。
二次的な区分の無線は、優先して使える無線に混信を与えてはならず、自分が受ける混信からの保護も求められません。

FCCのブレンダン・カー委員長は、次世代の衛星が届ける競争的で高速なインターネットの恩恵を消費者が受け続けられるようにする、という趣旨を述べています。

あわせてFCCは、Ku帯とKa帯(衛星通信で広く使われている周波数帯)の1,450MHz分と、より高い周波数のD帯の138.25GHz分について、衛星での利用を検討する手続きも始めました。
宇宙機の制御やデータ伝送に使う周波数帯を追加で検討する手続きも始まっています。

宇宙業界にとっての意味

FCCは、追加の周波数の用途として次のものを挙げています。

  • 利用者端末へのダウンリンク容量の拡大
  • 家庭向け衛星ブロードバンド
  • 飛行機や船での通信
  • ゲートウェイ局やフィーダーリンクで使える容量の増加

(出典:Converge Digest「FCC Opens 1,000+ MHz for Satellite Broadband」)

低軌道の通信衛星網は、利用者が増えるほど多くの電波を必要とします。
利用者との間の回線だけでなく、衛星と地上回線をつなぐゲートウェイ局側の回線も容量の上限になりえます。
今回の命令は、利用者端末向けとゲートウェイ局向けの両方に周波数を加えています。

CircleIDは採択前の記事で、この規則はSpaceXのStarlinkに使える周波数を増やすだけでなく、競合する衛星システムの容量にもなりうると指摘していました。
今回の命令は、特定の事業者に周波数を割り当てるものではありません。
各社がこの周波数をどれだけ使うかは、それぞれの免許申請と設備計画によって決まります。

今後の注目点

採択前に公表された案では、12.7GHz帯の既存の地上無線について10年間の移行期間を設けるとされていました(出典:HWG「FCC Proposes Expanded Spectrum Access for Satellite Communications and Space Operations」)。
対象は、マイクロ波の固定回線や放送事業者の中継用無線などです。
この期間の終了後は二次的な区分に移るという内容でした。

案の段階では、規則が連邦官報(アメリカ政府の公報)に掲載されたあと、Ku帯・Ka帯・D帯などの追加検討について30日間の意見募集を行う予定でした。

注目点は2つあります。

  • 採択された命令の全文で、移行期間などの条件がどう決まったか
  • 追加で検討する周波数帯が、実際に衛星に開かれるか
ほしまる

車線が増えても、実際に車が走るには地上局の免許や衛星の準備が要るんだね。各社がいつ申請を出すのかが次の見どころだよ。

出典

ほしまる
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