米宇宙軍が1970年から続いたミサイル警戒衛星DSPを全機退役

米宇宙軍は2026年10月1日、ミサイルの発射を宇宙から見張る衛星群「防衛支援計画(DSP)」の退役を発表しました。
最初の衛星打ち上げは1970年で、半世紀以上続いた計画です。

最後まで残っていた2機は、9月上旬の演習に参加したあと、ほかの衛星の邪魔にならない「墓場軌道」へ移されました。
ミサイル警戒の任務は、後継の衛星群「SBIRS」と、打ち上げを控えた次世代機に引き継がれます。

3行で分かるポイント

  • 米宇宙軍が、1970年から使ってきたミサイル警戒衛星DSPの最後の2機を退役させました。
  • 宇宙からのミサイル警戒は、2011年に初号機が打ち上げられた後継の衛星群SBIRSが担います。
  • 次の世代の警戒衛星の1号機が、今後数か月のうちに打ち上げられる見通しです。
目次

まず押さえたい背景

米宇宙軍(U.S. Space Force)は2019年12月20日に発足したアメリカの軍隊で、空軍省の下に置かれています(出典:DVIDS「U.S. Space Force Fact Sheet」)。
宇宙での米国と同盟国の利益を守るための部隊を組織・訓練・装備することが役割です。

ミサイル警戒衛星は、ミサイルが打ち上げられた瞬間を宇宙から見つけるための衛星です。
ロケットエンジンの噴射炎は高温のため、強い赤外線を出します。
この赤外線をセンサーでとらえれば、雲の上からでも発射を検知できます。

DSPやSBIRSの主力機は静止軌道を回っています。
静止軌道は赤道上空の高い軌道で、衛星が地球の自転と同じ周期で回るため、地上から見ると止まっているように見えます。
同じ地域をずっと見張れるので、警戒の任務に向いています。

SBIRSの主契約者はロッキード・マーティンです(出典:Air & Space Forces Magazine「Space-Based Infrared System」)。
同社は米メリーランド州ベセスダに本社を置く航空宇宙・防衛企業で、戦闘機、ミサイル防衛システム、ヘリコプター、宇宙機などを手がけています(出典:Lockheed Martin「Who We Are」)。
同社は、売上の大部分が米国防総省と米連邦政府機関向けだとしています。

何が発表されたか

最初のDSP衛星は1970年に静止軌道へ打ち上げられ、衛星群は最終的に23機まで増えました(出典:Air & Space Forces Magazine「Space Force Sunsets 1970s-Era Missile Warning Satellite Constellation」)。
最後の1機は2007年に打ち上げられましたが、2008年に部品の故障で予定外の軌道へ流され、早く運用を終えています。

冷戦期にはソ連からの先制攻撃への抑止を支え、1991年の湾岸戦争(砂漠の嵐作戦)では戦域で発射されたミサイルを検知しました。
赤外線センサーは、森林火災や火山噴火の発見にも使われています。

最後に残った2機は、9月上旬に米軍の演習で軌道上の機動を実演したあと、運用を終えて「超同期軌道」へ移されました。
超同期軌道は静止軌道よりわずかに高い軌道で、使い終えた衛星を置いておく墓場軌道として使われます。
宇宙軍は10月1日に退役を発表しました。

後継のSBIRSは、2011年5月に静止軌道の初号機を打ち上げています(出典:Air & Space Forces Magazine「Space-Based Infrared System」)。
静止軌道の衛星6機に加えて、細長い楕円軌道を回る衛星に載せたセンサー4基で構成されています。
同誌は、SBIRSの再観測の頻度はDSPの2倍、感度は3倍だとしています。

宇宙業界にとっての意味

ミサイル警戒は、少数の大型衛星を静止軌道に置く方式から、複数の軌道を組み合わせる方式へ移りつつあります。
次世代機「Next-Gen OPIR(次世代型上空持続赤外線)」の静止軌道衛星はロッキード・マーティンが開発しています(出典:Breaking Defense「First Next-Gen OPIR missile warning launch pushed to 2026」)。
同誌によれば、ミサイル警戒・追跡用のセンサー部の納入が13か月遅れ、初号機の打ち上げは当初予定の2025年から2026年にずれ込みました。

さらに宇宙軍は、中軌道と低軌道に多数の衛星を並べた衛星群も配備する計画です(出典:Air & Space Forces Magazine「Space Force Sunsets 1970s-Era Missile Warning Satellite Constellation」)。
一方で、北極域を見張る極軌道の次世代機2機については、2027会計年度の予算要求で計画の中止を提案しています。
DSPの退役は、半世紀続いた方式がひとつ終わり、警戒衛星の調達先と構成が変わっていく途中の出来事といえます。

今後の注目点

いちばん近い節目は、Next-Gen OPIRの静止軌道1号機の打ち上げです。
Air & Space Forces Magazineは、今後数か月のうちに打ち上げられる見通しだと報じています。

極軌道の次世代機の中止案が議会の予算審議でどう扱われるかも、ミサイル警戒網の構成を左右します。
中軌道・低軌道の衛星群がどの時期に、どの規模で配備されるかも今後確認したい点です。

出典

ほしまる
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