アストロスケール仏法人とHEMERIAが静止軌道の衛星検査で提携へ

2026年9月15日、アストロスケールのフランス法人アストロスケール・フランスと、フランスの宇宙・防衛メーカーHEMERIAが、戦略的提携を築く計画を発表しました。
目指すのは、地球から約3万6000km離れた静止軌道で、ほかの衛星に近づいて状態を確かめられる小型衛星です。
フランスと同盟国の防衛・政府機関を顧客に想定しています。

3行で分かるポイント

  • 両社は、静止軌道で他の物体に接近して観測する小型衛星を共同開発し、輸出していくための提携を計画していると発表した
  • HEMERIAが衛星本体を、アストロスケール・フランスが接近・観測の技術と搭載機器を担当する役割分担になる
  • 地上のレーダーや望遠鏡では見分けにくい対象の形や状態を、近くから確かめる用途を想定している
目次

まず押さえたい背景

アストロスケールは、東京都墨田区に本社を置く宇宙企業です。
2013年に創業し、役目を終えた衛星やロケットの残骸(スペースデブリ)の除去、衛星の寿命延長、軌道上での点検といった「軌道上サービス」を専門にしています。
フランス法人のアストロスケール・フランスは2023年に設立され、2025年6月にはフランス南部の航空宇宙産業が集まる都市トゥールーズに、本社と研究開発拠点を開設しました。
30人規模まで拡大しており、衛星の誘導・航法・制御を専門とするチームです。

HEMERIAは、同じトゥールーズに本社を置くフランスの企業です。
2019年7月に設立され、5つの生産拠点に約400人が在籍し、年間売上高は7000万ユーロです。
小型衛星やナノ衛星の設計・製造のほか、衛星用の配線(ハーネス)や構造パネル、断熱材、太陽電池パドルの供給、組立・統合・試験を手がけ、防衛分野では電子光学による追尾システムなども扱っています。

今回の舞台となる静止軌道は、赤道上空およそ3万6000kmを回る軌道です。
衛星が地球の自転と同じ周期で回るため、地上からは空の一点に止まって見えます。
この性質のおかげで、通信・放送・気象観測の衛星が集まっています。

何が発表されたか

両社が発表したのは、静止軌道で運用する機動性の高いマイクロサテライト(小型衛星)を共同で開発し、輸出するための提携計画です。
HEMERIAが衛星の土台となるプラットフォームを提供し、アストロスケール・フランスが軌道上で実証済みのRPO技術と、それに付随する搭載機器を担当します。

RPOはランデブ・近傍運用の略で、宇宙機が別の物体に安全に近づき、その周りを回りながら間近で観測する技術を指します。
アストロスケールは2024年2月18日に打ち上げた実証衛星ADRAS-Jで、JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズIとして、全長約11m・直径約4m・重量約3トンの日本のロケット上段に接近し、2024年11月30日に約15mの距離まで到達しました。

一方のHEMERIAが持ち込むのは、YODA計画で培った防衛ミッション向けの機動的な衛星の開発経験です。
YODAは、フランス国立宇宙研究センター(CNES)が主導して開発する、宇宙空間での活動を監視する分野の実証機です。

アストロスケール・フランスのPhilippe Blatt社長は、見えているだけでは十分ではなく、各国政府は重要な宇宙資産の周囲で起きていることを理解し、検査し、特定する能力を必要としていると述べています。
HEMERIAのNicolas Multan会長は、実績のある防衛用プラットフォームとアストロスケールの軌道上実証済みのRPO技術という、補い合う二つの専門分野を結び付ける提携だと説明しています。

宇宙業界にとっての意味

静止軌道は高度約3万6000kmと遠いため、地上からの監視だけでは、そこにある物体が何であり、どのような状態で、どう振る舞っているのかを見極めるのに限界があります。
だからこそ、近づいて確かめる手段に需要があるという構図です。

注目したいのは、アストロスケールがこれまで軌道上で実証してきたRPOが、低軌道にある大型デブリへの接近だった点です。
今回の計画は、同じ技術を静止軌道の防衛・政府用途に向ける内容にあたります。
デブリを取り除くための接近から、稼働中の衛星やその周辺を調べるための接近へと、用途が広がろうとしています。

もうひとつの軸は、両社が掲げる「主権的な能力」です。
フランス国内で開発し、自国や同盟国が自分たちの判断で運用できる静止軌道の能力を築き、国際市場にも売り込むという狙いを示しています。

今後の注目点

今回の発表は、提携を築く計画の段階です。
正式な合意に至るかどうか、そして衛星の仕様や開発スケジュール、最初の顧客がどう定まるかが、次に確かめたい点になります。

もうひとつの焦点は、想定顧客であるフランスや同盟国の防衛機関が、この構想にどう応じるかです。
静止軌道には交換の利かない通信・放送・気象の衛星が並んでいるだけに、そこで何が起きているかを間近で確かめる手段を、各国がどれだけ必要と判断するかが、事業の行方を左右します。

ほしまる

近づいて調べるのと、つかまえて片づけるのは、別々の仕事なんだ。今回の話は前のほうだよ。

出典

ほしまる
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